近年大きな進歩を遂げた白血病診療
白血病について、皆さまはどのような印象をお持ちでしょうか。治療の進歩によって「治る病気」になってきた一方で、依然として厳しい経過をたどる例もあることはご承知のとおりです。また、治癒のためには移植治療が必要であり、しかもそれは若い患者さんにしか行えない、というイメージをお持ちの先生も多いのではないかと思います。 しかし近年、白血病診療は大きく変わってきました。まず診断面では、詳細な遺伝子解析によって、より正確な診断や予後予測が可能になっています。さらに治療面でも、白血病のタイプや遺伝子異常に応じて免疫療法を早期に組み込むことで、移植というリスクの高い治療を行わなくても、治癒が期待できる患者さんが増えてきました。 一方で、移植治療そのものも進歩しています。合併症のリスクが以前より低下してきたことから、70歳を少し超える患者さんであっても、メリットがあると判断され、かつご本人が希望される場合には、移植を選択肢として検討する時代になっています。 ただし重要なのは、こうした最新の検査や治療を実施できる施設は限られているということです。地域の先生方の中には、「大学病院は敷居が高い」と感じて、白血病が疑われてもまずは近隣病院への紹介を考えられることがあるかもしれません。しかし、とくに移植の適応となり得る年齢の患者さんでは、診断時にどのような検査を行い、初回治療として何を選ぶかが、長期予後に影響することがあります。この点は、ぜひ知っておいていただきたいと思います。
血液がんの遺伝子パネル検査が保険適用に
治療抵抗性となった固形がんの患者さんに対する遺伝子パネル検査については、お聞きになったことのある先生が多いと思います。主な目的は分子標的薬の適応を調べることですが、実際に治療につながる割合は必ずしも高くないとされています。 これに対して、2025年3月に保険適用となった血液がん、すなわち造血器腫瘍に対する遺伝子パネル検査は、位置づけがかなり異なります。目的は、分子標的薬の適応検索だけではありません。正確な診断、予後予測、そして最適な治療の選択のために行う検査です。そのため、多くの疾患で初発時から実施する意義があります。 正確な診断は、より効果の高い治療を選ぶためだけではありません。移植を行わなくてもよい患者さんを見極めることにもつながり、結果として患者さんの負担やリスクを減らすことにもなります。 この検査を行える病院は阪神間でも極めて限られており、さらに、エキスパートパネルまで自施設で完結できる施設は兵庫医科大学のみです。兵庫医大血液内科では全国に先駆けてこの検査を導入しており、豊富な経験を有しています。
分子標的療法や免疫療法により、治療成績が向上
がん治療において分子標的薬が重要であることは、皆さまもよくご存じと思います。その原点の一つが、慢性骨髄性白血病に対するチロシンキナーゼ阻害薬です。かつては移植治療が行われていた疾患ですが、現在ではほぼすべての患者さんにおいて移植を行うことなく長期生存が得られ、予後は健常人とほとんど変わらないところまで改善しています。 さらに、急性白血病の一種であるB細胞性急性リンパ性白血病では、免疫療法を組み込むことによって治療成績が急速に向上しています。当院も参加している多施設共同臨床試験では、2年の無白血病生存率が約90%に達しています。ただし、このような最新の治療は、臨床試験を実施している病院でしか受けることができません。 一方で、こうした新規免疫療法の対象とならないタイプの白血病や、免疫療法を行ってもなお難治である患者さんに対しては、現在でも移植が最後の砦です。兵庫医大は、移植症例数においても全国有数の実績を有しています。 また、これらの最新治療や移植療法を行うには、無菌室を含めた十分な体制が必要です。これまで当院の無菌室は20床に限られていたため、本来であれば大学病院で診療した方がよいと考えられる患者さんであっても、受け入れをお断りせざるを得ないことがありました。新病院では無菌室が32床となり、受け入れ体制が大きく強化されます。とくに移植の対象となり得るご年齢の患者さんについては、ぜひ積極的に大学病院へご紹介いただければと思います。
血液疾患の疑いがあれば、早めに専門医へ
白血球の増加あるいは減少を認め、白血病の疑いがある場合、どの程度まで様子を見てよいのか迷われることもあると思います。血液疾患の診断と治療には高い専門性が必要です。判断に迷われた時点で、ぜひ当院にご相談ください。 とくに、白血球、赤血球、血小板の3系統すべてに著しい異常がみられる場合には、早急なご紹介をお願いしたいと思います。また、「肺炎などの感染症を繰り返す」といった所見が白血病のサインであることもあります。そのような場合にも、ぜひ気軽にご相談ください。 当院では、遺伝子パネル検査、分子標的治療、免疫療法、造血幹細胞移植を含め、常に最先端の治療を積極的に取り入れています。今後も地域の先生方との連携を一層深め、地域医療に貢献してまいりたいと考えています。
Doctor's Profile
よしはら きょうこ
吉原 享子
血液内科
臨床講師
- 専門分野
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- 造血器腫瘍
- 血液疾患全般
- 造血幹細胞移植
- 輸血医学
- 細胞治療
- 資格
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- 日本内科学会 総合内科専門医・認定医・指導医
- 日本血液学会 専門医・指導医
- 日本造血・免疫細胞療法学会 認定医
- 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
- 日本輸血・細胞治療学会 認定医
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