

手術法の進歩により、成人脊柱変形の治療が可能に
成人脊柱変形(腰曲がり)は、年齢と共に脊柱の変形が進み、日常生活に支障をきたす疾患です。超高齢社会の現在、治療を必要とする患者さんが増えています。特に中年以上の女性に多く、骨粗鬆症に起因して生じる脊椎椎体骨折をきっかけに、変形が進行する場合もあります。10年ほど前までは「年齢のせい」と言われ治療対象ではなかった成人脊柱変形ですが、近年は病態の解明が進み、手術法も進歩したことで治療が可能になっています。当院では、最新技術である腰椎側方椎体間固定術(XLIF)を取り入れた手術を行っています。
より安全かつ低侵襲なXLIF手術が普及
後方椎体間固定術(TLIF/PLIF)と呼ばれる従来の手術では、後方から骨を削って神経の圧迫を取り、神経をよけて椎間板にケージを挿入する必要がありました。しかしXLIFでは骨を削る必要がなく、側腹部の3~4cm程度の小さな切開で済むため、より安全かつ低侵襲の手術を行えるようになりました。また、従来よりもはるかに大きなケージを挿入できるため、骨との接触面積が大きく、矯正力が大きいことも特徴です。
XLIFでは、まず側臥位で側腹部を切開し、椎間板にケージを挿入します。その後、腹臥位となり後方からスクリューを挿入し、椎体を固定します。当院では、4月より術中CT撮影が可能な3D-Cアームが導入されたため、より安全性の高い脊椎手術が可能となりました。
高齢患者のADLやQOLを向上
成人脊柱変形における後弯症はADL(日常生活動作)に悪影響を及ぼすことが明らかになっています。ADLの低下によって活動量が減少すると、筋力や心肺機能、免疫力の低下を引き起こします。また、後弯変形によって嚥下障害を引き起こしたり、腹圧が上がることで胃食道逆流症(GERD)の原因となる場合もあります。当院では、患者さんのADLやQOL(生活の質)の向上を目指して、一人ひとりに向き合って治療しています。
当院でXLIF手術を受ける人は、70代から80代の高齢の患者さんが多く、骨がもろくなっている方がほとんどです。そのため、外来の段階で最低でも3ヶ月は骨形成促進剤を投与し、骨密度を上げてから手術を行っています。高齢の方も「年齢のせいだから仕方がない」と諦めず、治療の選択肢があることをぜひ知っていただければと思います。


地域の医療機関と連携し、健康寿命の延伸に貢献
今回ご紹介した成人脊柱変形の治療だけでなく、再生医療や最小侵襲手術、ナビゲーション技術など、整形外科の手術や治療は急速な進歩を遂げています。当科には、膝関節・股関節・上肢・脊椎・骨軟部腫瘍のスペシャリストが揃っており、先進の医療を届けられるよう日々努力を重ねています。また、各診療科やICU(集中治療室)、HCU(高度治療室)と連携し、併存疾患のある患者さんの周術期にもしっかりと対応できるのは、大学病院ならではの強みです。
当科では、地域の病院の整形外科からのご紹介はもちろん、かかりつけの内科の先生からご紹介いただくケースも多くあります。今後も地域の先生方と協力して、地域の皆さまの健康寿命の延伸に貢献していきたいと思いますので、どんな小さなことでもぜひ気軽にご相談ください。
Doctor's Profile
ありずみ ふみひろ
有住 文博
整形外科
講師
- 専門分野
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- 脊椎外科
- 資格
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- 日本整形外科学会 専門医・脊椎脊髄病医
- 日本脊椎脊髄病学会 脊椎脊髄外科指導医
- 日本骨粗鬆症学会認定医
過去に開催された「兵医サタデーモーニングセミナー」のアーカイブ動画は、兵庫医科大学病院の登録医制度「武庫川クラブ」にご登録済みの先生方、 および一部の関連医療機関の先生方のみ視聴可能なコンテンツです。上記のインタビュー記事を読んで「アーカイブ動画を視聴したい」と思った方は、武庫川クラブへのご登録をお願いします。
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