

形成外科の
多岐にわたる守備範囲
形成外科が扱う疾患は、まさに「頭のてっぺんから足の先まで」多岐にわたりますが、中心となるのは顔面と体表の疾患です。顔面の疾患だけで半数以上、顔面と体表を合わせると9割以上になります。
顔面においては、先天的な頭の変形、瘢痕による脱毛、眼瞼下垂、口唇口蓋裂、鼻や耳介の変形、顔面骨折、顔面神経麻痺、アザといった患者さんの顔貌に関わるさまざまな疾患に、手術やレーザー治療などで対処しています。また、顔面以外の体表の疾患としては、胸腹部の手術痕に発生したケロイドの治療、乳房再建、臍ヘルニア、多指症や合指症など、身体各部の変形や欠損も形成外科の守備範囲です。
微細な血管や神経を縫合する技術
手術用ルーペや手術用顕微鏡を用いて微細な血管や神経を縫合する、マイクロサージャリーと呼ばれる技術も、形成外科の大きな特徴の一つです。この技術を活かして、他科との共同手術を行う機会もたくさんあります。中でも最も多いのが、耳鼻咽喉科との共同手術です。例えば頭頸部がんを切除した後に、組織を移植するのですが、その際には微細な血管をつなぐ必要がありますので、形成外科医が担当します。他にも、肝臓や腎臓の移植の際に、形成外科医が血管縫合を担当する場合があります。実は、世界で最初にアメリカで行われた腎臓移植の手術で、ノーベル賞を受賞したのも形成外科医なんですよ。
患者のQOL改善に
寄与する診療を目指して
当科では、患者さんのQOLの改善に寄与する診療を常に心がけています。形成外科の場合は、「こういうところを治したい」という患者さんの要望がスタートであり、患者さんが満足した時点がゴールになります。つまり、スタートとゴールが必ずしも決まっておらず、患者さん一人ひとりによって違ってくるのです。
高血圧や高血糖、がんなどの治療であれば、スタート地点が決まっていますし、「血圧が下がった」「がんを切除できた」という明確なゴールがあります。でも、例えば乳房再建ですと、希望する方と希望しない方がおられますし、顔のアザにおいても、かなり目立つような大きなアザでも治療しない方もいれば、小さなアザでも治療したいと当科に来られる方もいます。あくまでも、患者さんの要望がスタートラインになるんです。
治療の結果の捉え方も、人それぞれ違います。明らかに良くなっていても、患者さんご自身が満足できず、治療を続けたいとおっしゃる場合もあります。そんなふうに何度も手術を繰り返す患者さんをポリサージャリーと言いまして、形成外科や美容外科で一つの問題になっています。患者さんが心理的な問題を抱えているケースですね。
ですから、私たち形成外科医は、心のケアをするという側面もあります。私の尊敬する先生は、「メスで心を癒す」という表現をされていましたね。他の診療科とは異なる一面かもしれません。


どの科に行けばいいか、
迷った時は形成外科へ
教育を受けた世代にもよりますが、おそらく今50代以上の先生方は、大学で形成外科の講座がなかった方がほとんどではないでしょうか。私自身の学生時代もなかったですね。ですから、形成外科が扱う疾患について、あまりご存じでない先生もたくさんいらっしゃると思います。ぜひ当科の幅広い守備範囲を知っていただいて、どこの科に頼めばいいか迷った時はご相談いただければと思います。実際、あちこちで「うちの科の担当ではない」と言われて、最後に形成外科に来られるケースも多いんですよ。ある意味、何でも屋と言えば何でも屋ですので、迷った時は一度ご相談ください。
Doctor's Profile
かきぶち まさお
垣淵 正男
形成外科
主任教授/診療部長
- 専門分野
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- 形成外科一般
- 眼形成(眼瞼・眼窩疾患)
- 顔面神経麻痺
- 頭頚部再建
- 顔面骨骨折
- 美容外科
- リンパ浮腫
- 資格
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- 日本形成外科学会 形成外科専門医・指導医・認定皮膚腫瘍外科指導専門医・認定再建・マイクロサージェリー指導指導医
- 日本頭蓋顎顔面外科学会 専門医
- 日本手外科学会 認定手外科指導医
- 日本形成外科手術手技学会 役員
- 医学博士(2002年)
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