兵庫医科大学が炎症性腸疾患の専門病院となったのは、消化器内科初代教授の下山孝先生、第二外科教授の宇都宮譲二先生のお二人が、炎症性腸疾患をご専門とされていたことがきっかけです。それに従って患者数が増えていったため、2009年には内科・外科・ストーマ外来を合わせたIBDセンターを開設することになりました。当センターでは、内科2診、外科1診体制で、IBD専門の内科医・外科医が外来を毎日行っています。近年、IBDセンターを設ける病院は全国的に増えていますが、内科・外科ともに専門医が毎日外来診療を行うIBDセンターは当院しかありません。また、潰瘍性大腸炎の手術は、大腸を全摘しても人工肛門を作らないという特殊な手術で、近畿・四国・山陰では対応している病院がほとんどないため、当センターには兵庫県内だけでなく全国から患者さんが集まってきています。

潰瘍性大腸炎とクローン病の内科的治療は、近年著しい進歩を遂げています。それに伴い、手術の症例の傾向も変化しつつあります。潰瘍性大腸炎の場合は、内科的治療が非常に進んだために、難治で手術になる症例は少なくなっています。一方、難治の症例に代わって、がんや異形上皮によって手術が必要になるケースが急激に増えています。クローン病の場合は、内科的治療の進歩により、症例数に対する相対的な手術数は減少傾向にあります。しかし、患者数自体が増えているため、外科が扱う絶対的な手術数は今も昔も変わらない状況です。

両疾患ともに、内科的治療が進んでいるとはいえ、薬が効かない患者さんも一定数いるため、その場合は手術が必要になります。特に潰瘍性大腸炎の領域では、最近は高齢者が増えてきており、合併症で亡くなってしまうリスクもあるため、高齢者の場合は長期にわたる内科的治療はせず、早い段階で手術という選択肢を勧めるケースが少なくありません。

炎症性腸疾患における患者さんのQOL向上を考える上で、内科と外科の連携、さらに地域の病院との病診・病病連携が欠かせません。当院では毎週月曜に内科・外科の合同カンファレンスを行い、各症例に対して手術の要不要や時期について検討しています。地域の病院の先生方とは、年1回の連携ミーティングを実施し、症例報告や最新の情報提供などを行っています。また、常日頃から連携を密に行っており、手術が必要な患者さんがいる際はすぐに当院に連絡していただき、その日のうちに転院することも可能な体制になっています。

特にクローン病に関しては、一生付き合っていく病気であり、次の手術までの期間をできるだけ延ばすことが一つの目的になりますので、地域の先生方と協力しながら診療にあたることが不可欠です。また、最近では新しく開業されるIBDクリニックも増えつつありますので、病診連携の輪をさらに広げていけたらと考えています。クリニックでは対応しきれない症例がある際は、当院にご相談いただければと思います。