2020年に発生した新型コロナウイルス感染症のパンデミックにおいては、院内での伝播防止対策や診療支援のほか、検査の拡充や職員を感染から守るためのルール作りなど、感染制御部としてさまざまな対応を行ってきました。また、兵庫医大としては、地域医療における大学病院の役割を果たすため、県や保健所とも協働しながら、地域の重症患者を中心に受け入れてきました。

新型コロナウイルス感染症の位置づけは、2023年5月8日から「5類感染症」に変更になりましたが、ウイルス自体が変化したわけではありません。よって当院としては、今後も基本的な感染対策を継続しながら、感染状況や政府の方針などを注視し、状況に応じた対応を続けていきます。

感染対策には、標準予防策、経路別予防策という2つの方法があります。標準予防策は、すべての患者さんに対して行われる基本的な感染対策。手指衛生もその1つです。経路別予防策は、標準予防策に加えて、空気感染・飛沫感染・接触感染といった感染経路を遮断するために行う感染対策です。どんな感染症に対しても、標準予防策と経路別予防策を適切に組み合わせることが重要になります。

新型コロナウイルス感染症に限らず、今後も10年から20年に一度は、何らかの感染症によるパンデミックが起きるでしょう。ですから私たちは、飽きずに粘り強く基本的な対策を繰り返していくしかありません。普段から基本ができていなければ、パンデミックなどの非常事態になった時にだけ対応することはできないのです。

2022年度から、これまでの「感染防止対策加算」を見直し改組した「感染対策向上加算」が創設されました。地域の先生方、特に内科系のクリニックの先生方は、所定の施設基準を満たして「感染対策向上加算」の届出を行っていることかと思います。もちろん内科に限らず、すべての診療科において、感染症対策は今後ますます重要になっていくでしょう。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、私たちが感染症対策の重要性を再認識し、地域の病院やクリニックといった医療機関が互いに連携し、地域での感染症対策を推進していく意義を共有する機会となりました。今後どんな感染症が流行するにせよ、今回の経験が必ず次に生かされることでしょう。当院はこれからも、地域ネットワークを構築し、地域レベルでの感染症対策に力を注いでいきます。