成人人口の2割以上が抱える慢性疼痛
痛みにはさまざまな分類があり、その1つに急性疼痛と慢性疼痛があります。3ヶ月以上続く痛みを慢性疼痛と呼びますが、慢性疼痛を抱える人は日本の成人人口の22.5%と推計されています。慢性の痛みは患者のQOLを低下させ、就労困難を招くなど、社会的損失が非常に大きいのです。
痛みはメカニズムの違いによって、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、痛覚変調性疼痛の3つに分類されます。侵害受容性疼痛は、組織の損傷がある場合に生じます。神経障害性疼痛は、体性感覚神経系の病変や疾患によって生じます。すなわち疼痛経路の一部が損傷されて起こる痛みです。痛覚変調性疼痛は、明らかな組織損傷や原因となる体性感覚系の病変などがないにも関わらず、痛みを感じる病態で、線維筋痛症などがこれにあたります。慢性疼痛の多くは、これらのうち1つのみが当てはまるわけではなく、それぞれの要素が重複して存在していることが少なくありません。
中枢性感作や破局的思考によって、痛みの悪循環に
近年は、痛みが難治化するメカニズムが明らかになってきました。その1つとして注目されているのが中枢性感作です。中枢性感作とは、身体から脊髄、脳幹部、視床、大脳に至る痛みの伝達経路の異常により、通常では痛くないはずの軽い刺激が疼痛として認識され、強い痛みを感じたり、痛みが広範囲に広がったりする状態です。
この中枢性感作と密接に関連しているのが破局的思考です。破局的思考とは、反芻(痛みに囚われ、痛みのことばかり考える)、無力感(痛みのために何もできない)、拡大視(症状を実際よりもひどく感じる)といったネガティブな考えに陥ってしまう思考パターンです。中枢性感作によって痛みが増幅されると、その痛みを過大評価する破局的思考を引き起こし、それがさらに痛みを悪化させるという悪循環が生じてしまうのです。
慢性疼痛には、多職種による集学的治療が重要
痛みは慢性化するに伴って、心理社会的要因が複雑に絡み合います。また、中枢性感作や破局的思考によって悪循環を起こし、遷延化します。そのため、医師だけで対応するのではなく、複数の職種が協力して介入する集学的治療が必要です。当院では、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、公認心理師、管理栄養士による慢性疼痛集学的治療チームを発足し、慢性疼痛を抱える患者さんに対し、痛み自体の治療に加えて、心理療法やリハビリテーション療法などを行っています。
薬物療法や神経ブロック療法、レーザー照射といった治療を行っても痛みが改善されないときに、集学的治療チームが介入するケースもあれば、地域の医療機関から集学的治療を希望する患者さんをご紹介いただくケースも増えています。どちらの場合も、治療を開始するにあたり、まずは心理的背景や中枢性感作がどれくらい関与しているのかを知る必要があるため、自己記入式問診票によって得られた情報をチーム内で共有し、治療方針を立案しています。
困ったときは、痛み治療に特化した医師に相談を
冒頭でもお伝えした通り、慢性疼痛を抱える患者さんは非常に多いため、地域の先生方の中にも治療に難渋している方がいらっしゃるのではないでしょうか。当院では、慢性疼痛集学的治療チームを立ち上げ、多職種で痛みに取り組んでいるだけでなく、ペインクリニック部では脊髄刺激療法、透視下神経ブロック療法、エコーガイド下神経ブロック療法、高周波熱凝固療法といった高度な専門医療も扱っています。痛み治療に特化した医師が治療にあたっていますので、何かお困りのことがございましたらぜひ気軽にご相談ください。
Doctor's Profile
たかお ゆみこ
髙雄 由美子
ペインクリニック部
診療部長
- 専門分野
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- ペインクリニック
- 疼痛治療全般
- 資格
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- 日本ペインクリニック学会 ペインクリニック専門医
- 日本麻酔科学会 麻酔科専門医・指導医
- 医学博士(1987年)
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