

不整脈の診断に有用なホルター心電図
不整脈の症状として動悸、倦怠感、めまい、ふらつき、あるいは失神があります。不整脈の診断には心電図検査が必要不可欠で、症状から疑うことはできても診断をつけることはできません。不整脈が常に出ている方もいますが、多くの場合は発作的に出てくるため、そのタイミングで心電図をとることができず診断に困るケースがあります。その際に用いられるのが、24時間記録できるホルター心電図です。シール電極を胸に貼り、小さな機械を腰に装着して心電図を記録します。機械を装着したまま普段通りの生活を送っていただき、1日の不整脈や虚血の有無、心電図の変化を調べることができます。
しかし、週1回や月1回といった頻度で起きる発作の場合、24時間の記録では診断をつけることが難しく、治療ができません。そこで当院では、2週間記録可能なホルター心電図や、5~10日間記録可能で患者さんの自宅への郵送ができるホルター心電図など、さまざまな検査方法を用意しています。
郵送型や植込み型など、多様な選択肢を用意
当院が最近導入した5~10日間記録可能なホルター心電図は、患者さん自身で装着脱が可能です。そのため、検査キットを患者さんの自宅へ郵送し、検査が終わったら返送していただけます。従来のホルター心電図では、診察日、装着日、返却日、結果の説明日など、何度も通院する必要がありましたが、郵送型を使用することで患者さんの負担を大幅に軽減できます。
また、年1回など発作頻度は低いものの、失神などの重篤な症状がある患者さんの場合は、植込み型心電計が有用です。5cm程度、ネクタイピンくらいの大きさの機器を左胸の皮下に植え込み、長期間にわたって検査することができます。ただし、植込み型心電計は、他のホルター心電図と比べて侵襲性が高いため、患者さん一人ひとりの症状の頻度や重症度に応じて、適切な検査方法を選択することが重要だと考えています。
患者の不安を取り除くためにも、適切な検査を
地域の医療機関でも、24時間ホルター心電図に対応している病院は少なくありません。しかし、2週間記録可能なものや郵送可能なものなどさまざまな種類を用意しておくことは、コストの問題などで難しい場合もあるでしょう。24時間ホルター心電図だけでは異常が見つからず、当院にご紹介いただくというケースも多いので、もし診断がつかず困っている患者さんがいらっしゃれば、気軽にご相談いただければと思います。
診断がつくことで治療が始められるのは1番のメリットですし、さらにもう1つのメリットは、これらの検査によって「異常がない」とわかることです。動悸のある患者さんの中には、心電図に全く異常がない方もいらっしゃいます。適切な検査が、患者さんの不安を取り除くことにもつながるため、非常に有用ではないかと思っています。


今後もより密接な病診連携を推進
当院の循環器内科は、虚血・心不全・不整脈の3グループに分かれており、各グループが連携を取りながら最新のエビデンスに基づいた専門性の高い診療を行っています。紹介状を書いていただく際に、紹介先グループを記載していただいても対応できます。
不整脈グループでは診断・治療後は、かかりつけ医の先生のもとで通常診療をしていただき、当院に年1回程度、検査に来ていただくケースが多いです。しばらく当院への来院がなかった場合でも、電子カルテのデータは残っていますので、もし患者さんの調子が悪くなったときはいつでもご連絡いただければと思います。今後も病診連携を大切に、地域の先生方との密接な協力体制を築いていきたいと思いますので、「大学病院はハードルが高い」と心配なさらず気軽にご相談ください。
Doctor's Profile
みね たかなお
峰 隆直
循環器内科
教授
- 専門分野
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- 循環器 特に不整脈治療
- 資格
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- 日本循環器学会 循環器専門医・特別正会員(FJCS)
- 日本心臓病学会 特別正会員(FJCC)
- 日本内科学会 総合内科専門医・指導医
- 米国不整脈学会 特別正会員(FHRS)
- アジア太平洋不整脈学会 特別正会員
- 日本不整脈心電学会 専門医・植え込み型除細動器(ICD)/ペーシングによる心不全治療(CRT)研修修了
- 医学博士(2003年)
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