

内視鏡の進歩に伴い、治療できる領域が拡大
近年、消化管内視鏡の機器、技術の進歩に伴い、さまざまな疾患に対して内視鏡治療を行うことが可能となってきました。今までは外科的切除しか選択肢がなかった領域でも内視鏡治療が行われているほか、外科との内科とのコラボレーションによる治療も増加しています。
上部消化管疾患では、胃・十二指腸の腫瘍に対して、外科と内科が連携して治療を行うケースが増えています。例えば十二指腸の腫瘍は、内視鏡のみで治療すると、治療後の出血や穿孔といった偶発症が起こりやすいため、内科の医師が粘膜下層剥離術(ESD)という手技で腫瘍を切除した後、外科の医師が外側から縫合して補強することによって、偶発症のリスク軽減を図っています。このような連携によって、より低侵襲かつ安全な治療を行うことができるのです。他にも、消化管内科と耳鼻咽喉科の医師が協力して、早期の口腔内の咽頭がんを特殊な気管挿管の機器を用いながら内視鏡で切除するなど、さまざまな形でのコラボレーションを行っています。
より良い医療を提供するため、外科・内科が密に連携
外科と内科の協力体制が整っていることは、兵庫医大の強みの一つです。例えば消化管内科では、上部消化管外科とは隔週、下部消化管外科とは月1回の合同カンファレンスを実施しています。定期的なカンファレンスだけでなく、電話などでの個別のやり取りも密に行い、一つひとつの症例に対して丁寧に検討を行っています。地域の先生方が、内科と外科のどちらに紹介していいのか迷われるケースもあるかもしれませんが、いずれにつないでいただいたとしても、両科で相談しながら適応を検討し、患者さんにとってより良い治療を提供しますので、安心してご紹介いただければと思います。
小児の内視鏡検査のニーズも増加傾向に
最近は、小児に対する内視鏡検査も非常に増えています。小児の炎症性腸疾患(IBD)や、好酸球性消化管疾患などのアレルギー性消化管疾患が増加傾向にあり、これらの疾患の診断には内視鏡検査が必須であるため、ニーズが増えているのではないかと考えられます。小児の内視鏡検査は、全身麻酔で行う施設が多いのですが、当院では5~6歳以上であれば大人と同じ静脈麻酔で行うケースが多いため、それも小児の検査のご紹介が増えている要因かもしれません。当科では小児科や麻酔科との協力により、万全の体制で検査にあたっています。


早期発見・治療のために、定期的なスクリーニング検査を
兵庫医大では、より快適に内視鏡検査が受けられる環境を整え、ほとんどの患者さんに鎮静化で内視鏡検査を受けていただいています。また、AIによる内視鏡診断支援システムなども含め、最先端の機器を積極的に取り入れ、常に精度の高い診断・治療を目指して取り組んでいます。
胃がんや十二指腸がん、大腸がんなど、早期であれば内視鏡治療のみで完治できる症例も増えています。ただし内視鏡で完治を目指すには、症状が出る前の早期発見が必須ですので、地域の先生方はぜひ患者さんに定期的なスクリーニング検査をおすすめしていただければと思います。通常は、患者さんに一度当院を受診していただいてから内視鏡検査の予約を取っていますが、当院の医療支援センターに申し込みをして、内視鏡検査の予約を直接取ることができるシステムもありますので、必要に応じてご活用ください。
Doctor's Profile
おくがわ たくや
奥川 卓也
消化管内科
講師
- 専門分野
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- 消化器内科一般
- 資格
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- 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医・指導医
- 日本消化器病学会 専門医・指導医
- 日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医
- 日本消化管学会 胃腸科認定医・専門医・指導医
- 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
- 日本ヘリコバクター学会 H.pylori感染症認定医
- 日本カプセル内視鏡学会 認定医・指導医
- JMECCインストラクター
- ICLSインストラクター
- 医学博士(2012年)
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