年間700件以上の硝子体手術を行う
当院での硝子体手術の件数は、年間700件を超えています。疾患別で見ると1番多いのは網膜剥離で、2024年度の手術件数は250件でした。網膜剝離の発症率は1万人に1人程度です。兵庫県の人口は約500万人ですから、発症率から考えると患者数は500人程度と推測されます。当院は阪神間に位置するため大阪からの患者さんもいらっしゃいますが、それを鑑みても手術件数が多いことがわかります。 硝子体手術の中で2番目に多い疾患は黄斑上膜です。黄斑上膜は網膜疾患の中では比較的多く見られる病気で、40歳以上の約20人に1人が発症すると言われています。近年はOCT(光干渉断層計)が広く普及したため、早期の診断が可能となりました。
年齢や病状に合わせて、網膜剥離の術式を選択
網膜剥離の中で最も多く見られる裂孔原性網膜剝離は、さまざまな原因で生じた網膜の裂孔や円孔から液化した硝子体が網膜下へ流入することで、感覚網膜層と網膜色素上皮層との間が剥離した状態です。基本的に当院では受診日に入院していただき、当日もしくは翌日に手術を行います。主な手術方法は、強膜内陥術と硝子体手術の2種類があり、患者さんの年齢や病状に合わせて、適した手術方法を選択しています。 強膜内陥術は、若年者の患者さんに行うことが多いです。強膜側から裂孔周囲の網膜を凍らせ、網膜と色素上皮との間に癒着を発生させ、スポンジを縫い付けることで、網膜と色素上皮との距離を短縮します。硝子体手術は、強膜に数ヶ所の小さな穴を開けて、その穴から眼の中に器具を挿入し、眼内の硝子体を除去して、裂孔の周囲に網膜光凝固術を行い、硝子体の代わりに眼内にガスを入れて網膜を復位させます。ガスは自然に吸収されて房水に置き換わり、約2週間で消失します。
早期の手術が増えている黄斑上膜
黄斑上膜は、黄斑の網膜表面に薄い膜が形成される疾患で、網膜上膜、網膜前膜、黄斑前膜などとも呼ばれます。早期には自覚症状はありませんが、進行すると膜が縮んで網膜にしわができるため、ものが歪んで見える変視症や、視野の中心部が見えない中心暗点、視力低下などが生じます。 黄斑上膜には点眼や内服薬で有効なものはなく、治療は硝子体手術を行います。眼球内の硝子体を取り除いた上で、網膜表面に存在する膜を小さなピンセットで除去します。黄斑は非常にデリケートな場所であるため、高度な技術を要する専門性の高い手術です。手術による改善効果は限定的であり、最終的に視力障害や変視を残す方も多くいらっしゃいます。症状が進行して黄斑の状態が悪いほど、視力が戻りにくい傾向があるため、最近では早期に手術を行うケースが増えています。
地域の医療機関と連携し、より良い医療を提供したい
先述したように黄斑上膜は術前の視力が良好であるほど改善が見られやすいため、早期の手術が望ましいのですが、まだ自覚症状のない患者さんに手術を勧めるのは難しい面があります。しかし症状が軽い場合でも、アムスラーチャートやMチャートといった歪みの程度を評価する検査を行うことで、患者さん自身が変視症の症状を自覚するきっかけにつながります。大がかりな機器が必要な検査ではありませんので、黄斑上膜が疑われる場合は、地域の医療機関でもぜひ積極的に検査を行っていただければと思います。 今回取り上げた黄斑・網膜のほかにも、当科では斜視・神経眼科、角膜、緑内障、白内障といった専門領域において、患者さんに寄り添った医療を提供しています。今後もセミナーなどを通して、当院と地域の先生方との連携を深め、地域の皆さまの目の健康に寄与していきたいと思います。
Doctor's Profile
さとう たかき
佐藤 孝樹
眼科
講師
- 専門分野
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- 網膜硝子体
- 黄斑疾患
- 白内障
- 資格
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- 日本眼科学会 眼科専門医・指導医
- 眼科PDT研究会 眼科PDT認定医
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