昨年1月、
スマートウォッチの心電図機能が
家庭用医療機器に承認
最近、患者さん自身がスマートウォッチの心電図を持ってくることが増えました。スマートウォッチからのデータをスマートフォンで受けてPDFをプリントアウトしたりしたものを持ってこられるんですね。
スマートウォッチ、つまりApple Watchなんですが、日本でこの心電図の機能が使えるようになったのは2021年の1月です。家庭用医療機器として承認が下りて、使えるようになったんですね。ただ、承認されたのはスマートウォッチというデバイスではなく、スマートウォッチと連係してデータを取り込んで解析、表示する「アプリケーション」が機器として承認されたんですが。
それで、使えるようになってまもなく、その月のうちにはもう何件かこのアプリで作ったデータを持った患者さんがいらっしゃいました。
国のガイドラインも出ましたが
最近、開業医の方からも「患者さんがこういう心電図を持ってきたらどうしたらいいのか」という質問を受けるようになってきたんですね。それで今回、サタデーモーニングセミナーでこのテーマを取り上げようと思ったんです。
実際のところ、スマートウォッチの心房細動の診断精度はかなり高いです。かなりきれいな心電図が取れて、見ると「あ、これは信憑性が高そうだな」と感じます。スマートウォッチに心房細動と診断されて来院されると、ほぼ心房細動です。
ただ、国のガイドラインでも出たことなんですが、我々の立場としては、もし患者さんが自分で作ったPDFとかのデータを持ってきても、それをそのまま使用して診断するのではなくて、あくまで「不整脈の疑い」として対応して、改めて病院の機器を使ってデータを取って診断をするように、ということになっています。
患者さんが勝手に診断して服薬するとか、そういうのももちろん良くないわけですしね。
家庭用医療機器というと、たとえばマッサージ器とか、ああいうのも含まれてくるわけで、病院の医療機器とはやはり違う扱いなんですね。精度が高いとか低いとかそういうことでもなく、まだまだ機器としての実績とか情報が少ないので、どれだけデータに信憑性があるかというようなことをこれから検証を進めて、ということのようです。
実際の医療現場では
悩ましい問題も
心電図でいうと、発作の時しか異常が出ない人も居ます。病院で発作が出てない時に測定すると「異常なし」と出るので、患者さんも困るわけです。そういう場合にこういうスマートウォッチみたいに、発作に対応していつでもデータが取れる機器が力を発揮するような、そういう時代が来たんだなあと感じます。
ただ、困るのはスマートウォッチで異常の診断が出てるのに、病院で何度検査しても異常が出ない場合。これは悩ましいです。「異常なし」としてしまってはやはり良くないですし。ガイドラインでは医療機器での検査結果を基に、ってなってても出ないんですから、治療としてはスマートウォッチのデータを使わないと仕方ないということもあります。その心電図を見て異常があるのに「大丈夫」とは言えないじゃないですか。
こういったことも、ケースが多く集まる専門医として感じることで、開業されてるお医者さんだとなかなか触れる機会が多くないでしょう。なかなかそれをどう扱うかということで困られると思うので、それで今回のセミナーでその辺りのことをお話しさせていただいて、大きな流れ、ガイドラインではこうなってるけど実情はこうだ、というようなことを共有して、その運用について一緒に考えていけたらなあと思っています。
Doctor's Profile
みね たかなお
峰 隆直
循環器内科
准教授
- 専門分野
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- 循環器 特に不整脈治療
- 資格
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- 日本循環器学会 循環器専門医・特別正会員(FJCS)
- 日本内科学会 総合内科専門医・指導医
- 米国不整脈学会 特別正会員(FHRS)
- アジア太平洋不整脈学会 特別正会員
- 日本不整脈心電学会 専門医・植え込み型除細動器(ICD)/ペーシングによる心不全治療(CRT)研修修了
- 医学博士(2003年)
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