ラジオ波凝固治療(RFA)の保険適用が拡大
ラジオ波凝固治療(Radiofrequency Ablation:RFA)は、熱でがんを凝固壊死させる治療法です。超音波やCTで腫瘍の位置を確認しながら、皮膚の表面から針を直接挿入し、この針からラジオ波を発生させて腫瘍を焼きます。局所麻酔で施行するため患者さんへの負担が少なく短時間で治療できること、臓器機能を温存できること、繰り返し治療ができることなど、多くの利点があります。
RFAは、これまで肝がんに対する治療として用いられてきましたが、2022年9月から保険適用が拡大され、肺がん、小径腎がん、悪性骨腫瘍、骨盤内悪性腫瘍、四肢・胸腔内及び腹腔内に生じた軟部腫瘍、類骨骨腫(良性腫瘍)に対するRFAが保険診療で受けられるようになりました。これまでは手術で行われていた病変、あるいは手術では難しいような病変でも、RFAでは治療できる場合があり、がん治療の選択肢が大きく広がっています。
保険適用に先駆けて、積み重ねてきた診療実績
RFAは、IVR(Interventional Radiology:画像下治療)と呼ばれる治療の一つです。IVRとは、X線やCT、超音波といった画像診断装置で体の中を見ながら、針やカテーテルを入れて行う治療の総称です。当院の放射線科診療部長の山門亨一郎教授は、日本IVR学会の理事長を務めており、IVRの分野を牽引する第一人者のひとりです。そのため当院では保険適用に先駆けて、自費治療として2015年から肝がん以外の臓器に対するRFAに取り組んできました。また、RFAが保険診療となるような働きかけも、長年にわたって行ってきました。
保険適用前から、肺がんや腎がんに対するRFAを行っていた施設は、全国的に見ても多くはありません。そのため、当院には全国各地から患者さんが集まり、多くの診療実績を積み重ねてきました。これまでのスキルや経験の蓄積は、私たちの強みだと言えるでしょう。
充実した設備やスタッフも当院の強み
RFAに用いる設備が充実していることも、当院の特徴です。RFAには、血管撮影装置とCT装置の2つを組み合わせたIVR-CTという機器を使用します。当院では、2022年12月にこの機器を最先端のものに更新し、今まで以上に低侵襲で安全かつ効果的な治療を目指しています。新しい機器はCTの能力がさらに向上し、一方向だけでなくさまざまな角度からのリアルタイム CT透視によって、より正確で精密な治療を実現できます。また、以前使っていた機器よりもX線量が少なく、リアルタイムに皮膚入射線量をモニタリングする機能も備えているため、患者さんの放射線被ばくを徹底的に管理することが可能です。
もちろん設備面だけでなく、スタッフの面でも非常に優れています。専門性の高い医師をはじめ、看護師、放射線技師、臨床工学士など、RFAの経験が豊富なメディカルスタッフが揃い、チームとして確立しています。また、10年近くRFA治療に取り組んできた実績から、他科の先生方のRFAに対する理解も深く、連携体制も良好です。
患者にやさしく、効果の高い治療を目指して
当院の放射線科では、今回ご紹介したRFAをはじめとする、最先端のIVR治療を取り入れながら、より患者さんの負担が少なく、かつ効果の高い治療を目指して、日々研鑽を重ねています。RFAだけでなく、今後もさまざまなIVR治療に保険適用が拡大していくと予想されますので、新しい治療に対する理解が進むよう、市民向けの情報発信も積極的に行っていきます。これからも地域の医療機関と密に連携しながら、医療の発展に寄与していくことが、私たちの願いです。
地域の先生方には、RFAが多くの疾患で保険適用となっていることを、まずは頭のどこかに留めておいていただければと思います。そして、もし適応があるかどうか知りたい場合があれば、ぜひ気軽にお問合せください。
Doctor's Profile
たかき はるゆき
髙木 治行
放射線科
准教授
- 専門分野
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- IVR(一般)
- 資格
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- 日本医学放射線学会 放射線診断専門医
- 日本IVR学会 専門医
- 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医・暫定教育医
過去に開催された「兵医サタデーモーニングセミナー」のアーカイブ動画は、兵庫医科大学病院の登録医制度「武庫川クラブ」にご登録済みの先生方、 および一部の関連医療機関の先生方のみ視聴可能なコンテンツです。上記のインタビュー記事を読んで「アーカイブ動画を視聴したい」と思った方は、武庫川クラブへのご登録をお願いします。
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