病理学は、病気を診断して治療方針を決定するために欠かせない臨床医学の面と、病気の成り立ちを追究する基礎医学の面があります。これまでの病理学における研究は顕微鏡を用いた形態学を中心に発展してきましたが、現在の病理学は形態学の枠に留まることなく、遺伝子工学、分子生物学、細胞生物学などの知識と技術を取り入れて、自由な発想で病気の本態の解明をめざしています。また、近年のがん医療では、がんが発生した臓器ごとではなく、がんの原因となる遺伝子変異に基づいて臓器の枠を超えて横断的に診断・治療が行われるようになり、分子病理学が重要視されています。当教室では、大学生時代に抱いていた疑問や臨床研修を通して湧き出た疑問を、自らが研究に取り組むことで解決できるように取り組みます。

我が国では、悪性中皮腫の発症が、これまでに使用した大量のアスベスト（石綿）の影響を受けて増加のー途を辿っています。そのため、悪性中皮腫の早期診断法および有効な治療法の開発が急務となっています。当教室では、①悪性中皮腫の発生メカニズムの解明、②悪性中皮腫の早期診断法の開発、③悪性中皮腫の生物学的特性の解明および治療法の開発などを主な研究テーマとして、悪性中皮腫のゲノム異常と臨床病理学的特性との包括的理解に取り組んでいます。