病理学 分子病理部門
本研究室は、がん組織の形態観察から得られる洞察をもとに、がんの転移・浸潤メカニズムの解明に取り組んでいます。特に、腫瘍代謝、シグナル伝達経路、エピジェネティクスの相互作用の観点から、がんの進行メカニズムを解明する研究に取り組んでいます。そして、新たな治療法や診断法を創出し、臨床へ還元することを目指しています。
主な研究分野
本研究室では現在、以下の研究に取り組んでいます。
1. 大腸がんの肝臓・肺転移メカニズムの解明と治療応用
本研究では、原発巣とは環境が全く異なる肝臓・肺への転移を促進する大腸がん細胞の代謝動態の変化を明らかにし、大腸がんの転移を抑制、根治する治療法を開発することを目指しています。
2. がん細胞の代謝の可塑性を標的とした治療法の開発
メタボローム解析などの代謝物測定技術の発達によりがん細胞特異的な代謝が近年次々と明らかにされ、それらを標的とした治療が試みられていますが、臨床応用されているものは少ないのが現状です。この理由の一つとして、がん細胞の代謝の可塑性が挙げられます。本研究ではまず、がん細胞の増殖に重要なグルタミノリシスに焦点をあて、グルタミン代謝酵素やグルタミントランスポーターを阻害した時に代償性に活性化する代謝経路やシグナル伝達経路を明らかにし、それらの阻害剤を併用したがん治療法の開発を行っています。