診療科について
ご挨拶
当科は、まず患者さんに心のこもった温かい医療を行えるよう心掛けています。
また、消化器病学会などの指導医や専門医を多数擁しており、関連する外科や放射線科との緊密な連携を取ることによって、高度な医療レベルの提供を可能にしています。
さらに、日常の診療では保険適用となっていない検査や新薬の治験なども取り入れ、医療の質の向上を図っています。
榎本 平之 (えのもと ひらゆき) 診療部長
診療体制
日本内科学会、日本消化器病学会、日本肝臓学会、日本消化器内視鏡学会、日本超音波学会などの評議員・指導医・専門医を含む、約20名の医師で入院・外来患者さんに対応しています。
高度な専門医療
・「C型慢性肝炎」
ウイルスと患者さんの臨床背景を最先端の研究に基づく手法で評価し、完全排除をめざしています。またインターフェロン注射を用いない内服のみでの治療(インターフェロンフリー治療)の不成功例であった場合、再治療の医療費補助申請の診断書は、兵庫県では唯一の肝疾患拠点病院である当院のみで記載が可能となっています。
・「B型慢性肝炎」
核酸アナログ製剤による治療だけでなく、内服中止をめざしたインターフェロン治療も積極的に取り組んでいます。
・「肝硬変」
筋肉量や体脂肪量などの科学的データに基づいて個別の指導と治療を行い、予後の延長とQOLの改善を図っています。
・「食道胃静脈瘤」
内視鏡治療を中心に、放射線科と共同してカテーテル治療などを行い、出血への予防から実際の止血処置にも対応しています。
・「肝がん」
造影超音波や造影CT、MRIなど最新の画像診断法を併用して用い、肝がんの早期発見と確実な治療をめざしています。
また、肝・胆・膵外科、放射線科と連携して、患者さんの状況に応じて切除術、ラジオ波焼灼療法、肝動脈塞栓療法、分子標的薬治療などから最適な治療を選択しています。
・「胆嚢や胆管、膵臓の疾患」
診断のみならず、感染症に対するドレナージ術や結石除去等も行い、最善の治療をめざしています。特に、胃切除後のような他院で処置が治療が困難とされた例であっても、可能な限りダブルバルーン内視鏡などの特殊処置で対応しています。
主な検査・設備
肝生検
腹部に生検針を刺し、肝臓の組織の一部を採取する検査です。さまざまな肝臓疾患(肝炎・肝腫瘍など)の原因や病態を把握し、診断や治療方法を決定するために必要な検査です。
腹部超音波
腹部にゼリーを塗って体の表面から器械を当ててお腹のなかの臓器を観察する検査です。安全で多くの情報が得られることから、最初に行われることが多い検査です。造影剤を用いた超音波は、副作用が非常に少なく、かつ精密な情報が得られる利点があります。
腹部CT
レントゲンで身体の断層写真を作成し、各種臓器を観察する検査です。若干のX線の被爆はありますが、多くの情報を得ることができ、診断において大きな力を発揮します。
腹部MRI
CT同様に身体の断層写真を作成し、各種臓器を観察する検査です。磁力の発生によって得られる画像のため、X線の被爆はありません。特に造影剤を用いたMRI検査は、肝腫瘍の診断で重要です。
腹部血管造影
カテーテルという細い管を主に足の付け根の血管から入れて各臓器の血流を評価します。また同時にCT撮影も行うことで、各種疾患特に肝がんの診断に有用です。診断に引き続き薬剤などを注入して治療に進むこともしばしばあります。
上部消化管内視鏡検査
いわゆる胃カメラです。慢性肝疾患の食道・胃静脈瘤の検査の意味もありますが、食道から十二指腸までの通常の観察も行います。
下部消化管内視鏡検査
いわゆる大腸カメラです。慢性肝疾患の直腸静脈瘤(肛門の近くの血管が腫れる)の検査の意味もありますが、通常の大腸全般の観察も行います。
ERCP
ERCPとは胃カメラを用いて胆汁・膵液の出口の十二指腸乳頭から造影剤を入れて行う検査です。レントゲン写真の撮影以外に細胞を調べる検査なども行います。ERCPでは、側視鏡という通常とは異なるタイプの内視鏡を用い、入院で行います。
EUS/EUS-FNA
先端に超音波装置を装着した胃カメラ検査です。胃の空気の影響を受けにくく、当科では主に胆道疾患や膵臓疾患の精密検査として行っています。入院して超音波で見ながら病変部の細胞を採取し、良性・悪性などの診断を行うこともあります。
In body、間接カロリー計
肝疾患が進むと体の代謝機能が落ちますが、代謝を簡易的に測る検査です。
主な対象疾患と診療内容
C型慢性肝炎
ウイルスと患者さんの両方の臨床背景を最先端の手法で評価し、完全排除をめざしています。インターフェロンフリーの再治療については、上記のように兵庫県で唯一医療費助成に対応しています。
B型慢性肝炎
一般的な核酸アナログ製剤による治療以外に、内服中止をめざしたインターフェロン治療も積極的に取り組んでいます。
自己免疫性肝疾患
肝生検による診断と治療を行います。比較的頻度の低い疾患ですが、多数の症例の診療を行っています。
脂肪肝/NASH
肝生検や各種画像検査による診断を行い、栄養状態の評価とそれに基づく指導含めて治療を行います。
肝硬変
食道静脈瘤・腹水・肝性脳症などの合併症について対処します。
また栄養指導や抗ウイルス療法のような原因疾患へのアプローチも行い、予後の改善をめざしています。
食道・胃静脈瘤
内視鏡による硬化療法や結紮術を予防的に行い、放射線科と合同でB-RTOやTIPSも行っています。
閉塞性黄疸
内視鏡や経皮穿刺で排液を行い(ドレナージ)、胆汁の流れを良して黄疸を改善させます。その後原因の除去に進みますが、除去が困難な場合にも、チューブを留置するなどの工夫で黄疸の持続的な改善を図ります。
急性胆管炎
閉塞性黄疸に細菌感染を合併した状態です。抗菌薬治療に加えて内視鏡や経皮穿刺で排液を行います。
急性膵炎
絶食や点滴といった通常治療と全身管理で対処します。上記のように仮性嚢胞と呼ばれる液体貯留が著しく改善が乏しい場合には、下に述べるような排液(ドレナージ)などの対処も行います。
膵嚢胞
腹部超音波やCT, MRIといった画像検査に加えて、上記ERCP, EUS/EUS-FNAなどで正確な診断を行い、治療方針を決定します。膵炎後の仮性嚢胞が縮小しない場合、必要に応じての排液や壊死性物質の除去でコントロールを図ります。
原発性肝がん
造影超音波や造影CT、MRIなど最新の画像診断法を併用して用い、早期発見と治療を行います。外科・放射線科とも連携しており、ラジオ波焼灼術以外に、手術やカテーテルでの治療も行われます。
膵がん
腹部超音波やCT, MRIといった画像検査に加えて、上記ERCP, EUS/EUS-FNAなどで正確な診断を行い、外科・放射線とも共同して最適な治療を行います。
胆管がん
膵がん同様に各種画像検査やERCPなどで正確な診断を行い、最適な治療を行います。
診療実績
2022年の診療実績
肝生検 | 90 |
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肝がんラジオ波・マイクロ波 | 64 |
肝がん薬物療法 | 20 |
C 型肝炎抗ウイルス治療(DAA) | 14 |
B 型肝炎核酸アナログ治療 | 250 |
内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP) | 500 |
内視鏡的静脈瘤治療(EIS・EVL) | 52 |
胆膵超音波内視鏡(EUS) | 531 |
EUS-FNA | 171 |
Interventional EUS | 36 |
ダブルバルーン内視鏡下ERCP | 11 |
2021年の診療実績
肝生検 | 92 |
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肝がんラジオ波・マイクロ波 | 37 |
肝がん薬物療法 | 21 |
C 型肝炎抗ウイルス治療(DAA) | 15 |
B 型肝炎核酸アナログ治療 | 242 |
内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP) | 522 |
内視鏡的静脈瘤治療(EIS・EVL) | 30 |
胆膵超音波内視鏡(EUS) | 406 |
EUS-FNA | 118 |
Interventional EUS | 40 |
ダブルバルーン内視鏡下ERCP | 15 |
2020年の診療実績
肝生検 |
100 |
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肝がんラジオ波 | 63 |
肝がん分子標的薬治療 | 19 |
C型肝炎抗ウイルス治療 | 23 |
B型肝炎核酸アナログ治療 | 266 |
内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP) | 544 |
内視鏡的静脈瘤治療(EIS・EVL) | 69 |
胆膵超音波内視鏡(EUS) | 247 |
EUS-FNA | 59 |
Interventional EUS | 8 |
ダブルバルーン内視鏡下ERCP | 26 |