診療科について
ご挨拶
当院は、国内でも有数のIBD診療数を誇る施設であるとともに、早期がん内視鏡治療のハイボリュームセンターでもあります。
最善かつ最高の医療を提供するベく日々努力するとともに、患者さんに安心して受診いただけるよう、エビデンスに基づきつつ一人ひとりの病状に応じた丁寧な診療を心がけています。
新﨑 信一郎 (しんざき しんいちろう) 主任教授/診療部長
診療体制
32名の医師で入院・外来患者さんに対応しています。診療の大きな4つの柱は「内視鏡を用いた消化管疾患の診断・治療」「炎症性腸疾患(IBD)の診断・治療」「機能性消化管疾患の診断・治療」「がん化学療法」です。
「消化管内科外来」と「IBDセンター」で毎日専門診療を行っています。また、上部消化管外科、下部消化管外科、炎症性腸疾患(IBD)外科、病院病理部と合同カンファレンスを行うなど密接に連携して治療方針を検討しています。
当施設での専門的な入院治療対応が必要と判断される患者さんについては他院からもできるだけ迅速に受け入れています。
高度な専門医療
高度な内視鏡治療手技を駆使して早期食道がん・胃がん・大腸がんの治療を行っています。特に近隣の病院で治療できない難しい症例などに対しても良好な成績を残しており、阪神地区における早期がん内視鏡治療のハイボリュームセンターとして認知されています。
炎症性腸疾患(IBD)に対する近年の新規薬剤の開発は目覚ましく、当科はIBD治療について年間2,000例を上回る治療経験を有し、IBD外科と協力した診療体制で、国内において注目されています。
新規治療薬をいち早く導入し、有効性や安全性を検証しています。
チオプリン製剤や生物学的製剤を安全に使用するために、薬剤血中濃度や抗薬物抗体、遺伝子多型などの有無を調べています。
IBDや切除不能・再発進行胃がんでは、先進医療や新薬の臨床治験に積極的に参加しています。
IBDや機能性消化管疾患の研究では日本をリードしている施設の一つです。日本だけでなくアジアやアメリカ、ヨーロッパにも名前が知れ渡り、私たちの研究活動は国際的であると自負しています。
主な検査・設備
上部消化管内視鏡検査
食道・胃・十二指腸までの上部消化管を観察する検査です。NBIや拡大内視鏡を使用することで微小な癌の診断・病変範囲の診断を行う事ができます。
下部消化管内視鏡検査
肛門より内視鏡を挿入し、全大腸を観察する検査です。これにより癌・ポリープ・炎症性腸疾患等の診断が可能です。拡大内視鏡検査や色素染色法などを用いて、腫瘍の質的診断を行う事ができます。
超音波内視鏡検査
内視鏡の先端に超音波装置がついており、消化管腫瘍の進達度診断や粘膜下腫瘍の質的診断をする事ができます。
カプセル内視鏡検査
従来、内視鏡では観察が不可能であった小腸の観察が可能となりました。 口から飲み込み、消化管の撮影を行う検査です。
ダブルバルーン内視鏡検査
患者様への負担という点ではカプセル内視鏡には及びませんが、従来の検査では発見が困難とされてきた小腸の病変をカメラで詳しく検査することができます。
その場で組織の採取が可能ですので、判別の難しいクローン病と腸結核の鑑別や、腫瘍の診断が確実につきます。さらに、止血、ポリープの切除、閉塞部分の拡張などの治療も可能です。
食道内圧測定検査
つかえ感や胸の痛み、胸焼けやげっぷといった症状があり、食道運動の異常が疑われる患者さんの食道の圧(内圧)を調べるために行います。カテーテルに1cm間隔で36個のセンターが取り付けられており、食道内圧を測定する事ができる検査です。これにより、アカラシアなど食道運動異常症を診断する事ができます。
血球成分除去療法
本学発祥の治療であり、専用の処置室があります。
主な対象疾患と診療内容
食道がん
食道にできる悪性腫瘍です。進行すると、嚥下困難などの症状がでますが、内視鏡治療で完治が望めるような、早期のがんでは症状はありません。内視鏡検査での検診が重要です。
当科では内視鏡治療や抗がん剤による治療、放射線による治療を行っております。また、上部消化管外科とも定期的なカンファレンスを行い、連携をとりあって治療にあたっています。
他施設との臨床研究に参加し、新しい治療法にも取り組んでいます。
食道アカラシア
下部食道の筋肉の動きの異常のため、食べ物が胃にうまく運ばれず、詰まってしまう病気です。
内視鏡、消化管造影検査、食道内圧測定検査で診断を行います。内科的な治療としては内視鏡を用いたバルーン拡張を行っております。また、上部消化管外科とも定期的なカンファレンスを行い、連携をとりあって治療にあたっています。
胃食道逆流症
胃酸が逆流して、胸焼け、咳、のどが詰まる感じなどの症状をおこす病気です。このなかに、逆流性食道炎も含まれますが、内視鏡検査で食道炎がなくも症状がおこる(NERD)ことがあります。いずれも、まずは胃酸分泌を抑える薬で治療します。
好酸球性食道炎
食物などのアレルギー反応により、食道が炎症を起こし、飲み込みにくさなどの症状を起こす病気です。原因となる食物を除いたり、胃酸分泌抑制剤の内服や、吸入ステロイドを内服して治療を行うことがあります。
好酸球性胃腸症
食物などのアレルギー反応により、胃や腸が炎症をおこし、腹痛、嘔吐、下痢などの症状がおきる病気です。原因となる食物を除いた食事をとるようにして症状がなくなることもありますが、長期間のステロイドや免疫調節薬による治療を必要となる場合もあります。診断にはCT検査や、内視鏡での組織検査が必要です。
胃潰瘍
胃が荒れ、粘膜の一部が欠損した状態のことです。腹痛や吐血、下血などの症状がおこることがあります。深い潰瘍の場合、穴があいて緊急手術が必要になることもあります。鎮痛薬やヘリコバクター・ピロリ菌が原因でおこることがほとんどです。胃酸分泌抑制薬を8週間内服すると治りますが、ピロリ菌が原因の場合は除菌を行うことで、潰瘍の再発を防ぐことができます。
ヘリコバクター・ピロリ感染症
ヘリコバクター・ピロリ菌は胃の中に住む細菌で、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、慢性胃炎、胃がんなどの原因になります。除菌治療を行うことで、潰瘍になるのを防いだり、胃がんになるリスクを下げることができると言われています。
胃がん
胃にできる悪性腫瘍です。ほとんどはヘリコバクター・ピロリ菌が原因でおこると言われています。除菌治療を行った後も、発がんのリスクがあるため、定期的な内視鏡検査を行う必要があります。内視鏡治療で完治できる早期のがんでは、症状がないため、内視鏡の検診を行うことが大事です。
当科では内視鏡治療や抗がん剤による治療を行っております。また、上部消化管外科とも定期的なカンファレンスを行い、連携をとりあって治療にあたっています。他施設との臨床研究に参加し、新しい治療法にも取り組んでいます。
胃MALTリンパ腫
胃に発生する低悪性度のリンパ腫で、治療法としてはピロリ菌陽性の場合は除菌療法が行われます。除菌療法の効果がなかった場合やピロリ菌が陰性の場合は放射線治療を行い、さらに効果がなければ化学療法を行います。
十二指腸潰瘍
胃酸が食道に逆流することにより、食道の粘膜があれる病気です。
症状がないこともありますが、胸焼け、咳、のどがつまる感じなどの症状がでることがあります。内視鏡で診断することができますが、当科では24時間pHモニターという特殊な検査も行うことができます。治療としては、胃酸分泌を抑える薬を飲んでいただきます。
十二指腸腺腫
十二指腸にできる良性の腫瘍です。定期的な内視鏡検査を行い、経過観察を行う場合もありますが、内視鏡で切除を行うこともあります。当科では他施設との臨床研究に参加して、新たな治療に取り組んでおります。
十二指腸がん
十二指腸にできる悪性腫瘍です。まれながんですが、進行すると嘔吐、嚥下困難などの症状が見られます。
早期のがんであれば、内視鏡治療で完治することができます。進行したがんでは、外科的手術や、大腸癌に準じた抗がん剤治療が行われます。
また、上部消化管外科とも定期的なカンファレンスを行い、連携をとりあって治療にあたっています。
大腸ポリープ
粘膜の一部がイボのように隆起したものです。大腸ポリープの種類として、主に腺腫と過形成性ポリープがあります。腺腫は大きくなると癌化する可能性があるため、内視鏡で切除します。
大腸LST(側方発育型腫瘍)
大腸の1cm以上の平坦に隆起した大きな大腸ポリープのことを指します。内視鏡で詳しく調べた上で、治療方針を決めます。内視鏡で切除可能と判断できれば、ESDや EMRという方法で切除を行います。
家族性大腸腺腫症
大腸にたくさんポリープができる病気です。遺伝することがわかっており、この病気が疑われた場合は、遺伝子医療部とも協力して検査をおこなっております。
また、大腸だけでなく、胃・十二指腸・小腸などにもポリープができるため、定期的な内視鏡などでの検査が必要となります。
この病気では、大腸ポリープがいずれがん化してしまうため、大腸を全て摘出する必要がありましたが、当科では他施設共同研究に参加し、ポリープを定期的に内視鏡で切除することで、大腸の摘出手術を避ける研究に参加しております。
大腸がん
大腸にできる悪性腫瘍です。進行して腸閉塞となり見つかることもあります。
早期のがんは内視鏡で完治できます。早期のがんでは症状はありませんので、まず内視鏡検査をすることが重要です。下部消化管外科と定期的にカンファレンスを行い、連携をとりあい治療を行っております。当科では内視鏡治療、抗がん剤治療を行っております。
潰瘍性大腸炎
主に大腸に炎症を起こして、びらんや潰瘍を形成する病気です。直腸から始まり、大腸全体にまで広がることがあります。症状としては粘液便、血便、下痢や腹痛などがあります。
クローン病
口腔から肛門までの消化管に炎症を起こして、びらんや潰瘍を形成する病気です。病変部位は口腔から肛門までの消化管のあらゆる部位ですが、小腸や大腸に病変ができることが多いです。症状として腹痛、下痢、血便、発熱、肛門病変などがありますが、その他にも消化管以外に合併症を伴うこともあります。
腸管ベーチェット病
難病であるベーチェット病のうちの1種で、消化管に炎症が起きて、くりかえし潰瘍ができる病気です。腹痛や腹部不快感、下痢や血便などが起こります。腸に穴があいたり、 血便のために入院や手術が必要になることもあります。
大腸憩室出血
憩室とは腸の外に膨らんだ小さな袋のようなものです。憩室はめずらしくありませんが、その近くには血管が通っており、まれに出血することがあります。血便の原因としては多い疾患で、7-8割は自然止血します。基本的には内視鏡を行い、止血しますが、止血困難の場合、IVR(カテーテルを用いて出血部位の血管を詰める)で止血を行ったり、緊急手術や輸血が必要となることもあります。
大腸憩室炎
憩室の入り口に便が詰まり、菌が繁殖することにより、炎症を起こす病気です。そのため腹痛や熱が出ます。CTや採血を行うことにより診断します。
治療としては、絶食、抗生剤投与を行います。ほとんどは1週間程度で良くなりますが、まれに、憩室が破れて腹膜炎という強い炎症を起こすことがあり、緊急手術が必要となることがあります。
放射線性直腸炎
前立腺癌や膀胱癌などの治療で、下腹部に放射線治療をしたことのある方におこる病気です。直腸の表面に異常な血管が出現し、出血するため、血便が出ます。内視鏡を行い、アルゴンプラズマレーザーで異常な血管を焼き、治療を行います。
消化管粘膜下腫瘍
ポリープやがんは粘膜にできますが、粘膜下腫瘍は文字通り、粘膜の下にできます。そのため、通常の生検での組織検査が難しく、EUS-FNAや切開生検などを行い組織検査を行うことがあります。経過観察で良いものや、切除が必要となるものがあります。
GIST(消化管間質腫瘍)
主に胃や小腸にできる粘膜下腫瘍で、悪性腫瘍の一種です。切除可能の場合は切除を行い、切除不能の場合は抗がん剤治療を行います。
腸閉塞
排便や排ガスがなくなり、お腹が張って、腹痛や嘔気・嘔吐がおこります。
器質的腸閉塞(大腸癌や腹部手術後の癒着などにより、内容物の流れが妨げられておこる)と麻痺性腸閉塞(内容物の流れを妨げるものは無いが、腸の動きが悪くなりおこる)があり、後者のことはイレウスとも呼ばれます。絶食だけで改善することもありますが、イレウスチューブと言われる長いチューブを、鼻から小腸まで入れて、溜まっている内容物を体外に排液することにより、治療を行います。ただし腸閉塞の中には緊急手術が必要となるものもあります。
便秘
近年、新しい治療薬も次々開発され、使用が可能となっております。ただし、大腸がんなどで便が腸管を通過しにくくなっておこる便秘もありますので、まず内視鏡検査をおこなうことが大事です。
下痢
細菌やウイルス感染による胃腸炎によるものが頻度としては一番多いですが、過敏性腸症候群や、薬剤性の腸炎、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)などの疾患でも下痢を起こします。症状が続く時は、一度受診することをおすすめします。
機能性胃腸障害
おなかのあたりに不快な症状があるにもかかわらず、内視鏡検査などを行っても、症状の原因となる異常を発見できない病気です。機能性胃腸障害には、機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群などがあります。
機能性ディスペプシア
胃カメラで原因となるような胃炎や潰瘍などがないのに、胃が痛い、胃がもたれるなどの症状がある病気です。胃薬、漢方薬、抗不安薬、抗うつ薬などの薬や、ピロリ菌除菌が有効な方もおられます。
過敏性腸症候群
腹痛や腹部不快感をともなう下痢や便秘などの便通異常が慢性的にくり返される病気です。男性よりも女性にやや多いといわれています。ストレスと大きく関係しているとされており、急性胃腸炎にかかった後に過敏性腸症候群へ移行することもあります。食事指導や生活習慣の改善、内服薬で治療を行います。
診療実績
2022年の診療実績
総内視鏡件数(内視鏡センター含む) | 13549 | |
---|---|---|
上部消化管内視鏡 | 6619 | |
下部消化管内視鏡 | 5354 | |
小腸カプセル内視鏡 | 262 | |
大腸カプセル内視鏡 | 1 | |
ダブルバルーン小腸内視鏡 | 94 | |
消化管止血術 | 217 | |
上下部EMR及びポリペクトミー | 909 | |
上部 | 36 | |
下部 | 873 | |
上下部内視鏡的粘膜下層剥離術 | 201 | |
上部 | 108 | |
下部 | 93 | |
消化管バルーン拡張術 | 63 | |
消化管ステント留置術 | 20 | |
上部 | 9 | |
下部 | 11 | |
胃瘻造設 | 63 | |
EUS | 685 | |
上部 | 654 | |
下部 | 31 | |
EUS-FNA | 140 | |
新規化学療法 | 151 | |
食道癌 | 58 | |
胃癌 | 74 | |
大腸癌 | 15 | |
その他 | 4 |
(旧 炎症性腸疾患内科 診療実績)
<新規> | 潰瘍性大腸炎 | 約280 |
クローン病 | 約140 | |
<継続> | 潰瘍性大腸炎 | 約1300 |
クローン病 | 約1000 |
2021年の診療実績
総内視鏡件数(内視鏡センター含む) | 13901 | |
---|---|---|
上部消化管内視鏡 | 6843 | |
下部消化管内視鏡 | 5497 | |
小腸カプセル内視鏡 | 198 | |
大腸カプセル内視鏡 | 1 | |
ダブルバルーン小腸内視鏡 | 99 | |
消化管止血術 | 170 | |
上下部EMR及びポリペクトミー | 894 | |
上部 | 28 | |
下部 | 866 | |
上下部内視鏡的粘膜下層剥離術 | 272 | |
上部 | 153 | |
下部 | 119 | |
消化管バルーン拡張術 | 157 | |
消化管ステント留置術 | 27 | |
上部 | 18 | |
下部 | 9 | |
胃瘻造設 | 63 | |
EUS | 601 | |
上部 | 568 | |
下部 | 33 | |
EUS-FNA | 102 | |
新規化学療法 | 144 | |
食道癌 | 55 | |
胃癌 | 64 | |
大腸癌 | 22 | |
その他 | 3 |
(旧 炎症性腸疾患内科 診療実績)
<新規> | 潰瘍性大腸炎 | 約230 |
クローン病 | 約160 | |
<継続> | 潰瘍性大腸炎 | 約1200 |
クローン病 | 約900 |
2020年の診療実績
総内視鏡件数(内視鏡センター含む) | 13,229 | |
---|---|---|
上部消化管内視鏡 | 6,825 | |
下部消化管内視鏡 | 5,027 | |
小腸カプセル内視鏡 | 220 | |
大腸カプセル内視鏡 | 4 | |
ダブルバルーン小腸内視鏡 | 90 | |
消化管止血術 | 175 | |
上下部EMR及びポリペクトミー | 834 | |
上部 | 24 | |
下部 | 810 | |
上下部内視鏡的粘膜下層剥離術 | 213 | |
上部 | 123 | |
下部 | 90 | |
消化管バルーン拡張術 | 26 | |
消化管ステント留置術 | 30 | |
上部 | 23 | |
下部 | 7 | |
胃瘻造設 | 43 | |
EUS | 491 | |
上部 | 460 | |
下部 | 31 | |
EUS-FNA | 59 | |
新規化学療法 | 103 | |
食道がん | 43 | |
胃がん | 46 | |
大腸がん | 14 |
(旧 炎症性腸疾患内科 診療実績)
<新規> | 潰瘍性大腸炎 | 約200 |
クローン病 | 約130 | |
<継続> | 潰瘍性大腸炎 | 約1300 |
クローン病 | 約800 |