兵庫医科大学病院
上部消化管外科
消化管内科

食道アカラシア

疾患概要

食道は口、喉と胃の間にある臓器であり、食べ物の通り道となっています。食道は筒のような細長い形をしており、口から入った食べ物や飲み物は重力と「蠕動(ぜんどう)運動」により胃へ運ばれていきます。また、食道と胃のつなぎ目(食道胃接合部)には下部食道括約筋 (LES) が存在しており、普段は胃に入った食物が食道に逆流しないよう閉まっていますが、食べ物や飲み物を飲み込むと蠕動に同調してタイミングよく緩むことで食物は胃へと流れ込みます。

アカラシアはギリシア語で『弛緩することがない』という意味であり、食道アカラシアは胃食道接合部の弛緩がうまくいかなくなる病気です。また、食道の蠕動運動の低下も認められ、食物がうまく胃に入らず食道内に停滞してしまいます。また、アカラシアは食道がん(扁平上皮がん)の危険因子の1つと考えられています。

どの年代にも発症する可能性がありますが、一般的には20~40歳の発症が多いと言われています。頻度は10万人あたりに1人といわれており、まれな病気です。

原因・症状

下部食道括約筋の弛緩および食道の蠕動運動は、食道壁内の神経によって調節されており、食道アカラシアはこの神経が障害されることによって起こります。食道アカラシアでは下部食道括約筋は常に収縮した状態になっており、食物を飲み込んでも弛緩することがありません。そのため、食道内に食物が貯留・停滞してしまい、さまざまな症状が出現します。しかしながら、この神経が障害される原因は現時点では明らかになっていません。

主な症状は、食道胃接合部の通りが悪いことによる食後の胸のつかえ感で、病状が進行すると嘔吐や体重減少を伴うこともあります。その症状は、固形物、流動物のどちらでもみられ、ストレスや早食い、冷たい食物等で増悪することが特徴とされています。また、食道炎を合併すると胸痛や胸やけも伴うようになります。嘔吐により食物が誤って気管に入ってしまうと、それが原因で肺炎をおこすこともあります。

検査

食道アカラシアの診断では、食道がんや食道潰瘍などではないことの確認が必要です。まず、食道造影検査や上部消化管内視鏡検査、コンピューター断層写真 (CT) などを行います。

食道造影検査

食道造影検査ではバリウムを飲んで食道を造影しますが、食道アカラシアでは食道運動の異常や下部食道の辺縁平滑な狭窄、その口側の異常拡張などを確認することが可能です。

上部消化管内視鏡検査

上部消化管内視鏡検査では食道がんなどの他疾患との鑑別を行うことができ、食道胃接合部の通りが悪いことによる食道の拡張や食物残渣の貯留、食道運動の異常、食道胃接合部の弛緩不全が認められます。

食道内圧測定検査

診断を確定するための精密検査として、当科では食道内圧測定検査を行っています。鼻から多数のセンサーがついたカテーテルを挿入し、喉から食道、胃の内圧を連続的に測定し、食道の運動異常を診断します。食道内圧検査前は絶食が必要となりますが、検査は局所麻酔下に行っており、所要時間は10分程度のため外来で検査することが可能です。

治療

食道アカラシアの治療は、大きく分けて「1. 薬物療法」「2. 内視鏡的治療」「3. 外科的治療」があり、症状や程度に併せて選択されます。

1. 薬物療法

下部食道括約筋圧を下げる作用のあるカルシウム拮抗薬、亜硝酸薬などを用い、症状改善を図ります。また、食事摂取後すぐに就寝すると食道内に貯留した食物が逆流してしまい、症状が誘発されるため、生活指導も行っています。

2. 内視鏡的治療

内視鏡下食道バルーン拡張術は、下部食道括約筋部をバルーンで広げて筋肉の一部を裂き、食道括約部の通過をよくする方法です。また、近年新たに開発された治療として、内視鏡的筋層切開術 (Per-oral Endoscopic Myotomy;POEM(ポエム))があり、良好な成績が報告されています。

3. 外科的治療

食道アカラシアに対する手術では、食道胃接合部の筋層を切開し食物の通過を改善するヘラー(Heller)筋層切開術に、逆流を防ぐドール(Dor)噴門形成術を同時に行うヘラードール(Heller-Dor)術が主流となっています。近年では腹腔鏡下で行われるようになっており、従来の開腹手術よりも低侵襲で行うことが可能となっています。

メッセージ

当院では、適切な検査を行い早期に診断し、治療に際しては上部消化管外科とも連携をとり、患者さん各人にとって最適な治療を選択しています。

上部消化管外科

時代に応じた、専門性の高い手術・治療を行います

私たちは、上部消化管(主に食道と胃)疾患の外科治療を中心に、1)治る手術、2)安全な手術、3)負担の少ない手術 をモットーとして診療を行っています。
手術の進歩は日進月歩。今や食道がんも胃がんも、より専門性の高い施設で治療を受ける時代です。
当科では大学病院の使命として最先端の手術をご提供するのはもちろん、いろいろな併存疾患をもったリスクの高い方の手術もお引き受けしています。
また、肥満や糖尿病、社会の高齢化に伴い今後増加が予想される食道胃逆流症など、がん以外の疾患に対する外科治療も行っています。

篠原 尚(しのはら ひさし)診療部長

消化管内科

患者さんに安心して受診いただける、最善かつ最高の医療を

消化管内科は2022年7月に炎症性腸疾患内科と統合し、食道がん・胃がん・大腸がんなどの消化管腫瘍、クローン病・潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患(IBD)、および機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群などの機能性消化管疾患をはじめとして、消化管疾患の全般にわたって診療しています。
当院は、国内でも有数のIBD診療数を誇る施設であるとともに、早期がん内視鏡治療のハイボリュームセンターでもあります。
最善かつ最高の医療を提供するベく日々努力するとともに、患者さんに安心して受診いただけるよう、エビデンスに基づきつつ一人ひとりの病状に応じた丁寧な診療を心がけています。

新﨑 信一郎 (しんざき しんいちろう)主任教授/診療部長

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