診療科について

ご挨拶
なかでも、WHOの2020年度全世界での死亡原因予想で上位となることが予測されるCOPD・肺癌・肺炎(結核含む)など頻度の高い疾患や、地域特性の高い悪性胸膜中皮腫について最新のエビデンスに基づいた治療を行うことができるよう取り組んでいます。
先端分野の臨床と研究の実践、医師をはじめとする医療人の臨床教育、受診される患者さんにとって安心できる呼吸器領域の医療の提供を心がけています。
木島 貴志 (きじま たかし) 診療部長/主任教授
診療体制
肺がん、悪性胸膜中皮腫、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患 (COPD)、間質性肺炎、呼吸器感染症など、呼吸器疾患全般の診療を行っています。禁煙治療も可能です。
適切に呼吸器外科や放射線科、緩和ケアチームとも連携し、診療にあたっています。
臨床試験を計画・実施し、新しい診療の研究と発信にも取り組んでいます。
高度な専門医療
悪性中皮腫や肺がんなど、最善の治療に努めます
当院が所在する阪神間は、石綿関連疾患である悪性胸膜中皮腫の発症が多い地域です。当院は、全国的にもその基幹病院として重要な役割を果たしています。その特長を活かし、標準治療に加えて臨床試験も組み合わせながら疾患の治癒率・生存率の向上に努めてまいりたいと思っております。
また肺がんに関しては、近年分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害剤の出現等により、治療の進歩が進んでおります。遺伝子検査等を実施しながら根拠に基づいた最善の治療を行う事を心がけています。
主な検査・設備
気管支鏡検査
気管支鏡とは、直径6mm程度のファイバーを鼻あるいは口から挿入し、先端のカメラで気管支の内部を観察したり、肺の組織を採取したりする検査です。
さまざまな肺疾患の原因や病態を把握し、診断や治療方法を決定するために必要な検査になります。
呼吸機能検査
気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺疾患をはじめとする、呼吸器の病気が疑われるときや、その状態をみるときに行う検査です。息を吸ったり吐いたりして、息を吸う力、吐く力、酸素を取り込む能力などを調べます。
スパイロメータという機械を用いることが多いですが、詳しく呼吸障害の程度をみる時は、精密肺機能検査用の機械を用いて行います。
鼻から空気が漏れないようにクリップでつまみ、マウスピースという筒をくわえて、検査技師の指示に従って息を吸ったり吐いたりします。
主な対象疾患と診療内容
肺がん
人口の高齢化に伴って急増し、がん死亡の第一位となっています。診断検査、治療方針決定のための遺伝子検査などを実施し、科学的根拠に基づく治療(標準治療)の提供を行っており、多数の臨床試験も実施しています。
当院 呼吸器外科・放射線科とも連携し、複数の治療方法の組み合わせ(集学的治療)についても提示するよう努めています。
悪性中皮腫(胸膜・腹膜)
中皮腫はクロシドライトなどの繊維状鉱物の吸入を原因として発生する特殊な悪性腫瘍であり、近年、我が国を含む先進諸国では急増傾向が見られます。中皮腫は診断の難しい悪性腫瘍であり、特殊光を用いた画像の鮮明化を実現した局麻下胸腔鏡検査、VATS生検、CTガイド下針生検などで得られた胸膜腫瘍組織を病理学的に専門的に検討し、診断した上で治療を実施しています。
気管支喘息・慢性閉塞性肺疾患
基本的には、日本呼吸器学会のガイドラインに準拠した管理・治療を行います。気管支喘息に対する気管支温熱療法(サーモプラスティ)も実施しています。病診連携が重要であり、当科で適切な治療方針をたて、お近くの医療機関等で治療を継続いただく方針にしています。
間質性肺炎
間質性肺炎は、原因不明あるいは膠原病などの全身疾患に伴って起こる、非感染性の肺炎の一種です。
難治性のものが多く、慢性的な呼吸困難をきたしうる代表的な疾患ですが、当科では専門的見地からステロイドや免疫抑制剤、抗線維化薬などによる治療を実施しています。
呼吸器感染症
肺炎は、日本の高齢化とともに患者数も増えています。また、免疫抑制剤の使用やHIVなど免疫状態が低下した方の増加により、日和見(ひよりみ)感染症が問題となっています。
一般の抗菌薬では効果の乏しい特殊な肺炎(レジオネラ肺炎やニューモシスチス肺炎など)や難治症例には、気管支内視鏡による精密検査が有用です。
当科では、院内発症の難治性肺炎も含めて、積極的に気管支内視鏡検査を実施して診断と治療にあたっています。
禁煙外来
2006年4月から禁煙治療が保険適用されています。これは、喫煙を単なる習慣や嗜好と考えるのではなく「ニコチン依存症」という病気としてとらえ、必要な治療を行うという考え方です。
治療は一定の条件を満たした喫煙者なら、どなたでも受けることができます。
禁煙外来では、禁煙によっておこる離脱症状を軽減するために禁煙補助薬(ニコチンパッチ、バレニクリン)を活用しながらできるだけ無理なく禁煙できるように医師や看護師がカウンセリングやサポートを行っています。
診療実績
2020年の診療実績
肺がん | 187 |
悪性中皮腫 | 52 |
胸膜 | 51 |
腹膜 | 1 |
2019年の診療実績
肺がん | 203 |
悪性中皮腫 | 63 |
胸膜 | 62 |
腹膜 | 1 |
2018年の診療実績
悪性中皮腫 | 68(胸膜66腹膜2) |
肺がん | 207 |
気管支喘息・慢性閉塞性肺疾患 | |
間質性肺炎 | |
呼吸器感染症 | |
禁煙外来 |
倫理指針に基づく研究情報の公開
以下の研究について、当科で実施しておりますのでお知らせ致します。研究に関する問い合わせ等がございましたら、各研究詳細ページに記載している連絡先にご連絡ください。
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EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対する初回治療Osimertinibの多施設実態調査に付随する薬剤性肺障害の検討
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実臨床下における既治療進行悪性胸膜中皮腫に対するニボルマブの有効性と安全性の後方視的検討(HCMR1901-2)
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悪性中皮腫のプロファイリングによる新規分子標的の同定
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PD-L1発現≧50%の進行期非小細胞肺癌に対する初回治療としてのペムブロリズマブ単剤および免疫チェックポイント阻害薬/プラチナ併用化学療法の有効性および背景因子に関する多施設後ろ向き観察研究
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胸部悪性腫瘍におけるHippoシグナル伝達系と腫瘍微小環境の免疫学的特性についての関係解析
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進展型小細胞肺癌患者に対する初回治療カルボプラチン/エトポシド/アテゾリズマブ併用療法の実地診療における有効性、安全性を検討する多施設前向き観察研究に付随するバイオマーカー研究
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肺肉種様癌に対する抗PD-1抗体の効果予測因子の探索研究 「既治療進行・再発肺多形癌など肺肉腫様癌に対するニボルマブの単群検証的試験(NCCH1603試験)」と「未治療進行・再発肺多形癌など肺肉腫様癌に対するペムブロリズマブの単群検証的試験(NCCH1703試験)」の付随研究
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免疫チェックポイント阻害療法を受けた非小細胞肺癌患者の観察研究
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未治療進行または再発非小細胞肺がんを対象としたニボルマブ+イピリムマブ±化学療法併用療法の日本における治療実態および有効性と安全性に関する観察研究(LIGHT-NING)
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気管支拡張症合併難治性喘息の実態調査
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日本人EGFR遺伝子変異陽性の進行肺腺癌患者を対象とした一次治療としてのアファチニブ(ジオトリフ®)投与及び後続治療に関するリアルワールド研究 【J-REGISTER】
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切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC)または進展型小細胞肺癌(ED-SCLC)患者に対するアテゾリズマブ併用療法の多施設共同前向き観察研究:(J-TAIL-2)におけるバイオマーカー探索研究
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進展型小細胞肺癌の2次治療薬としてのアムルビシンの効果と安全性に関する後ろ向き観察研究
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EGFR 遺伝子変異陽性非小細胞肺癌におけるアファニチブからオシメルチニブ への逐次投与の有効性を評価する多施設共同前向き観察研究(Gio-Tag Japan) におけるCell free DNA を用いたバイオマーカー探索研究
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肺癌における化学療法の治療効果に関わる臨床的因子の固定を目指した後方視的研究
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EGFR 遺伝子変異陽性非小細胞肺癌におけるアファニチブからオシメルチニブへの逐次投与の有効性を評価する多施設共同前向き観察研究(Gio-Tag Japan) における附随研究
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肺癌に対する免疫チェックポイント阻害剤による 免疫学的有害事象を検討する多施設後ろ向き観察研究
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EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対する初回治療Osimertinibの多施設実態調査
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免疫チェックポイント阻害療法を受けた非小細胞肺癌患者の観察研究
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EGFR変異陽性肺癌患者における組織転化の実態調査
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Stage3非小細胞肺癌に対する根治的化学放射線治療とイミフィンジ治療の後ろ向き施設実態調査
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切除不能な非小細胞肺癌患者における治療パターン、治療アウトカム及び医療資源利用状況に関する多施設共同観察研究: 日本における免疫療法導入後のリアルワールド研究(JEWEL-IN)