診療科について
ご挨拶
都築 建三 (つづき けんぞう) 診療部長
診療体制
当科では各専門分野ごとにグループ制を取っています。
中内耳(5名)、めまい平衡(2名)、顔面神経(1名)、鼻副鼻腔(3名)、睡眠時無呼吸(2名)、頭頸部がん(4名)、味覚(3名)、嗅覚(3名)、幼児難聴(3名)、補聴器(3名)など、専門外来での診療を行っています。
高度な専門医療
①聴覚改善のために鼓室形成術、人工内耳埋め込み手術
②幼児難聴、補聴器外来
③めまい疾患に対する最新の診療
④顔面神経疾患に対する最新の診療
⑤ナビゲ-ションシステムを用いた安全で低侵襲の内視鏡下副鼻腔手術
⑥QOL向上をめざす嗅覚・味覚障害の診療
⑦頭頸部がんに対する集学的治療
【鼻】
内視鏡下副鼻腔手術Ⅴ型(拡大副鼻腔手術)の施設基準を満たしています。できる限り、鼻内から内視鏡下に手術を行うことで体への負担を少なくし、必要に応じて手術用ナビゲーションシステムを併用することで、より安全で、より確実な手術を行っています。
【耳】
鼓室形成術の聴力改善率は、慢性中耳炎では90%以上、真珠腫性中耳炎では70%以上と、良好な結果を収めております。人工内耳手術も積極的に行い、聾(ろう:聴覚障害者)の方が聴力を取り戻しておられます。
【頭頸部】
経口的咽喉頭部分切除:内視鏡や直達鏡を使って首を切らずに咽頭がん、喉頭がんを切除する手術を行っています。従来の首を切る手術に比べて術後の嚥下機能への影響が少ない手術です。
主な検査・設備
ENoG検査
ENoG検査とは、顔面神経麻痺において神経障害の程度を評価することができる検査です。検査結果により治癒予測および手術の適応判断を行います。
純音聴力検査
ヘッドホンから聞こえる音の大きさで聴力を判定する検査です。気導聴力と骨導聴力を測定します。
語音聴力検査
言葉の聞き取り検査です。
ティンパノメトリ
外耳道に耳栓をして、鼓膜や耳小骨の動きを評価する検査です。
アブミ骨筋反射
外耳道に耳栓をし、反対側にヘッドホンを装着します。耳硬化症や顔面神経麻痺の障害部位診断に役立ちます。
聴覚器CT
慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎、耳小骨離断、骨折など中内耳の病変を調べます。
聴覚器MRI
中耳炎の頭蓋内病変の診断や、聴神経腫瘍の診断、顔面神経鞘腫など中内耳の腫瘍病変の精査に重要な検査です。
聴性脳幹反応
脳波により聴力を測定する検査です。
咽喉頭ファイバースコープ
主に鼻から挿入します。咽喉頭のがんをできるだけ早期に発見できるようにNBI(狭帯域光観察)も導入しています。
超音波検査
超音波でターゲットを確認しながら、針を刺して細胞を採取します。甲状腺腫瘍やリンパ節に悪性疾患がないかの診断に有用です。
味覚機能検査
味覚がどのくらい感じられているか、また判別できるかを検査します。
補聴器適合検査
補聴器の適合性について検査し、最適になるよう調整します。また補聴器が必要がどうかの判断をいたします。
他覚的聴力検査
小児は睡眠下で脳波や蝸牛の反射を測定し、聴力評価をいたします。当科ではASSR(聴性定常反応)、ABR(聴性脳幹反応)、OAE(耳音響反射)を用いて総合的に判断いたします。
基準嗅力検査
5種類のにおいで構成され、濃度別に測定します。嗅覚の機能を詳しく評価することが出来る重要な検査です。
静脈性嗅覚検査
静脈性嗅覚検査は、におい物質を患者に静脈注射を行い、においを感じる時間などを判定する検査です。
鼻副鼻腔内視鏡検査
外来診療にも手術用の内視鏡を用いております。外来にて、詳しい検査、処置、外来手術が可能です。
主な対象疾患と診療内容
めまいグループ
めまい
めまいの原因をカロリック検査、赤外線眼球運動検査、前庭誘発筋電位検査などを用いて診断し、症状の改善に努めております。
末梢性顔面神経麻痺
ステロイド剤の投与を中心とした保存的治療を行っています。また、麻痺の予後診断として、ENoG検査やNET検査などの電気生理学的検査を行い、予後不良例に対しては外科的治療(顔面神経減荷術)を行うこともあります。
耳管開放症
耳管開放症診断基準案に基づいて確実例、疑い例を診断します。また、当科で考案した体位・体位変換耳管機能検査にて、より確実な診断を心がけています。治療は、漢方を中心とした内服や耳管咽頭口処置を行っています。
耳グループ
慢性中耳炎
投薬加療で改善しない場合は手術を行います。
真珠腫性中耳炎
基本的には手術を行います。
耳硬化症
聴力の状態により、手術を行います。
外リンパ瘻
重症度によって、入院加療や、場合によっては手術を行います。
突発性難聴
ステロイドの内服や点滴を行います。入院が必要な場合もあります。
聴神経腫瘍
腫瘍が小さい場合は経過観察します。大きい場合は専門施設に紹介します。
頭頸部グループ
咽頭がん・喉頭がん
根治性と機能温存の両方を重視し手術、放射線治療、薬物療法を選択しています。
口腔がん(舌がんなど)
根治性と機能温存の両方を重視し手術、放射線治療、薬物療法を選択しています。
甲状腺がん
手術を中心に行っています。
鼻・副鼻腔がん
主に超選択的動注化学療法(カテーテルの先端から高濃度の抗がん剤を腫瘍に選択的に投与する方法)と放射線治療を組みわせた治療を行っています。
唾液腺がん
手術が中心となります。術後の顔面神経麻痺に対しては形成外科と連携し対応します。
聴器がん
主に超選択的動注化学療法放射線治療を組みわせた治療を行っています。
その他頸部良性腫瘍
耳下腺腫瘍や顎下腺腫瘍、唾石症、喉頭良性腫瘍や頸部のう胞などに対しても多数手術を行っています。
味覚・難聴・幼児難聴グループ
味覚異常
全国でも珍しい味覚外来を設けております。年々、味覚障害患者は増加し、注目されてきておりますが、未だ有効な治療が少ないのが現状です。当科では味覚機能検査により病態の把握に努め、幅広い治療を行っております。
小児難聴
乳幼児期の難聴は言語発達に非常に影響します。当科では難聴の評価、原因探索、補聴デバイスの適応や調整だけでなく、聴覚をフルに活用させる言語療法を行い、言語機能の向上にも力を入れています。子供たちが聞こえる世界で自分の能力を最大限に生かすことをモットーに診療に励んでおります。
感音難聴(補聴器)
補聴器装用に関する適応、調整、適合性評価などを行い、良好な装用を追及します。
鼻グループ
嗅覚障害
嗅覚専門外来を行っています。嗅覚検査で嗅覚障害を評価し、内視鏡検査や血液検査、CT、MRIにて原因を特定し、治療方針を決定いたします。
慢性副鼻腔炎
保存的加療で改善しない副鼻腔炎は、手術加療の適応となります。当院では、内視鏡下副鼻腔手術を多数行っており、手術によりポリープや膿などを清掃します。また、副鼻腔の必要のない隔壁を除去することにより、最適な鼻腔空間を確保し、鼻腔の通気を良くし、再発を抑制します。手術後も適切な処置が必要で、外来にて治療を行います。
鼻中隔弯曲症
内服や点鼻薬で改善しない鼻づまりの中には、鼻中隔弯曲症が原因となっている場合があります。鼻中隔弯曲症は、手術により改善できます。
アレルギー性鼻炎
当院では、外来での下鼻甲介レーザー焼灼術を行うことが出来ます。レーザー手術を行うことにより、鼻炎症状の改善が期待できます。また、スギやダニのアレルギーに対しては、舌下免疫療法を施行しており、アレルギー反応を抑えることが出来ます。
鼻副鼻腔腫瘍
鼻副鼻腔に腫瘍が見つかった場合、精査の上、治療を行います。良性の腫瘍であれば、できる限り内視鏡下の摘出を行います。摘出後も定期的な診察が必要です。
鼻出血
内視鏡を併用して鼻腔内を観察し、出血点を焼灼止血します。
睡眠時無呼吸症候群
検査結果によって口腔内の装置(口腔外科)やCPAP管理を行います。
診療実績
2022年の診療実績
耳科領域 | 鼓室形成術 | 112 |
---|---|---|
アブミ骨手術 | 10 | |
人工内耳埋め込み術 | 3 | |
顔面神経減荷術 | 6 | |
その他 | 7 | |
鼻科領域 | 内視鏡下鼻副鼻腔手術 | 168 |
鼻中隔矯正術 | 180 | |
下鼻甲介手術 | 147 | |
嗅覚外来初診数(保存的加療症例) | 112 | |
頭頸部外科領域 | 甲状腺 | 31 |
中~下咽頭がん | 29(ロボット手術:11例) | |
口腔がん | 14 | |
喉頭がん | 14 | |
頸部食道がん | 3 | |
唾液腺腫瘍 | 31 | |
鼻・副鼻腔がん | 3 | |
気管切開 | 64 | |
声門閉鎖術 | 4 | |
頸部その他 | 83 |
2021年の診療実績
耳科領域 | 鼓室形成術 | 112 |
---|---|---|
アブミ骨手術 | 11 | |
人工内耳埋め込み術 | 8 | |
顔面神経減荷術 | 15 | |
骨固定型補聴器埋め込み(Baha®)手術 | 2 | |
鼻科領域 | 内視鏡下鼻副鼻腔手術 | 174 |
鼻中隔矯正術 | 139 | |
下鼻甲介手術 | 138 | |
嗅覚外来初診数(保存的加療症例) | 133 | |
頭頸部外科領域 | 甲状腺 | 39 |
中~下咽頭がん | 34(ロボット手術:7例) | |
口腔がん | 14 | |
喉頭がん | 11 | |
唾液腺腫瘍 | 24 | |
鼻・副鼻腔がん | 1 | |
気管切開 | 71 | |
声門閉鎖術 | 4 | |
頸部その他 | 74 |
2020年の診療実績
耳科領域 | 鼓室形成術 | 114 |
---|---|---|
アブミ骨手術 | 12 | |
人工内耳埋め込み術 | 9 | |
顔面神経減荷術 | 11 | |
鼻科領域 | 内視鏡下鼻副鼻腔手術 | 146 |
鼻中隔矯正術 | 95 | |
下鼻甲介手術 | 97 | |
嗅覚外来初診数(保存的加療症例) | 109 | |
頭頸部外科領域 | 甲状腺 | 34 |
中~下咽頭がん | 27 | |
口腔がん | 11 | |
喉頭がん | 15 | |
唾液腺腫瘍 | 31 | |
鼻・副鼻腔がん | 1 | |
頸部その他 | 89 |