診療科について
ご挨拶
当院は、国内でも有数の肝胆膵領域の手術数を誇る施設であり、肝胆膵外科学会の高度技能医修練A施設に認定されています。
肝胆膵外科高度技能指導医や専門医、その他外科学会指導医や消化器外科学会指導医、日本内視鏡外科学会技術認定医など、多くの専門スタッフが手術・診療にあたっています。
廣野 誠子 (ひろの せいこ) 診療部長
診療体制
主任教授1名、特別招聘教授1名、准教授1名、講師3名、助教5名、病院助手3名の計14名で外科診療に対応しています。
高度な専門医療
・日本肝胆膵外科学会高度技能医修練A施設(高度技能指導医 2名、同専門医 3名)
・日本外科学会(指導医 6名、専門医 14名)
・日本消化器外科学会(指導医 7名、専門医 11名)
・日本肝臓学会(指導医 3名、専門医 8名)
・日本移植学会(認定医 4名)
・日本膵臓学会(指導医 1名)
・日本消化器病学会(指導医 3名、専門医 6名) など
※2022年1月4日現在
主な検査・設備
ICG蛍光法によるナビゲーション手術(開腹手術も腹腔鏡手術も対応)
ICGという緑色の色素薬は血管から肝臓を介して胆汁に排泄されますが、時間あたりのICG排泄率が高いほど肝機能が良いと判定できます。このICGは一定の時間腫瘍に残存する性質があり、特殊な蛍光カメラで観察すると緑色の蛍光発色が確認されます。従来、手術中に肝腫瘍を同定するには肉眼か超音波検査しか無く、腫瘍の確認に難渋するケースもありました。最新のICG蛍光カメラは非常に鮮明に腫瘍を捉えることで、腫瘍の完全切除をナビゲーションすることが可能となり手術の安全性が増しました。
肝切除3D術前シミュレーション検査
術前に撮影した造影CTのデータを解析することで、腫瘍の位置・体積・重要血管との位置関係、切除を必要とする肝臓の体積、切除後に残る肝臓体積を正確に知ることができます。これにより安全な肝切除を行うための精密な設計図を得ることができます。
本検査法は本学で開発され、先進医療を経て現在は保険診療となっております。
ハイビジョン腹腔鏡
当院で施行する腹腔鏡手術に使用するカメラはすべて最新のハイビジョンカメラに更新されており、高解像度カメラによる拡大視効果により血管損傷が少なく、神経温存手術などにも有効です。また3D腹腔鏡も整備されています。
主な対象疾患と診療内容
肝細胞がん
肝切除などの外科的治療が第一選択ですが、ほかに腫瘍焼灼治療や肝動脈化学塞栓療法、分子標的薬治療、肝移植などがあります。
当科では積極的に腹腔鏡下手術を行っています。
また、手術が困難な場合も分子標的薬の投与後に手術を行う治療に取り組んでいます。
転移性肝がん
大腸がんや胃がんからの転移で発症します。
切除が可能であれば、転移であっても治癒する可能性がありますので、積極的な切除を行っています。
切除が困難と判断された場合でも、抗がん剤治療やカテーテル治療、手術方法の工夫などを組み合わせることで切除可能となることがあり、当科ではこの集学的治療を積極的に行っています。
膵臓がん(通常型)
膵臓の頭側で発生するか尾側で発生するかにより手術方式が異なります。
尾側に発生した場合には、当科では腹腔鏡下膵切除を第一選択としています。
また、画像検査で直ちに手術が難しい場合には、術前に抗がん剤治療を行ってから手術を行う治療に取り組んでいます。
膵嚢胞性腫瘍
腫瘍性膵嚢胞には膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)と粘液性嚢胞腫瘍(MCN)、漿液性嚢胞腫瘍(SCN)などがあり、頻度はIPMNが最も多いです。
通常型膵臓がんに比べて低悪性度腫瘍と言われていますが、腫瘍の大きさなどによっては手術が必要となります。
膵臓の尾側に発生した嚢胞性腫瘍には、当科では腹腔鏡下膵切除を第一選択としています。
膵神経内分泌腫瘍(p-NET)
膵臓には消化酵素を作る細胞(外分泌細胞)とホルモンを作る細胞(内分泌細胞)があり、p-NETは内分泌細胞から発生する腫瘍です。
通常型の膵がんに比べると進行はゆっくりですが、遠隔転移を起こすこともあり低悪性度腫瘍としての治療が必要です。
胆道がん
腫瘍発生場所により、肝門部領域胆管がん、胆嚢がん、遠位胆管がん、十二指腸乳頭部がんに分類されます。いずれも手術が第一選択です。
腫瘍の部位により、肝切除、肝外胆管切除、膵頭十二指腸切除など手術法が変わります。
大きな肝切除が必要な場合には、あらかじめカテーテルで切除する側の肝臓の血管を詰めておき、残る方の肝臓を肥大させる処置を行うことがあります。
肝内胆管がん
肝がんの中でも発生率は低いものの、リンパ節転移を起こすことがあります。
肝切除が第一選択で、進行具合によりリンパ節の切除も行います。
当科ではリンパ節の切除を行わない場合は、積極的に腹腔鏡下手術を行っています。
肝嚢胞性疾患
肝臓内に液体の貯留した袋ができる疾患です。
無症状であれば通常は治療は不要ですが、腹部圧迫症状や嚢胞内感染、出血が発生した場合は治療が必要となります。
手術は腹腔鏡下に袋の壁を切除する腹腔鏡下嚢胞開窓術(天蓋切除術)を行います。
良性胆道疾患(胆石症)
胆汁の流れが悪くなり胆道内に結石ができ、腹痛や発熱、肝機能障害や黄疸をきたす場合もあります。
手術が必要な胆嚢結石は外科で腹腔鏡下胆嚢摘出術を行います。
総胆管結石は主に内科で内視鏡治療を行った後に、外科で腹腔鏡下胆嚢摘出術を行います。
鼠径ヘルニア(成人)
足の付け根の鼠径部の組織にゆるみが生じて、膨れた状態をきたす疾患で、自然に治癒することは無く、手術が必要です。
手術は腹腔鏡下におなかの緩んだ部分にメッシュを当てて補強する、腹腔鏡下ヘルニア根治術を第一選択としています。
診療実績
2023年の診療実績
肝臓疾患 | 91(腹腔鏡下手術 52) |
胆道疾患 | 112(腹腔鏡下手術 78) |
膵臓疾患 | 82(腹腔鏡下手術 20) |
鼠径ヘルニア手術 | 11(腹腔鏡下手術 5) |
2022年の診療実績
肝臓疾患 | 80(腹腔鏡下手術 50) |
胆道疾患 | 111(腹腔鏡下手術 73) |
膵臓疾患 | 92(腹腔鏡下手術 24) |
鼠径ヘルニア手術 | 22(腹腔鏡下手術 16) |
2021年の診療実績
肝臓疾患 | 115(腹腔鏡下手術 41) |
胆道疾患 |
91(腹腔鏡下手術 74) |
膵臓疾患 | 44(腹腔鏡下手術 5) |
鼠径ヘルニア手術 | 18(腹腔鏡下手術 12) |