兵庫医科大学病院
アレルギー・リウマチ内科

全身性エリテマトーデス(SLE)

疾患概要

全身性エリテマトーデスは英語でsystemic lupus erythematosus、略してSLEと呼ばれます。systemicとは「全身の」という意味で、病気が全身の臓器に多彩な症状を引き起こすことを示しています。lupus erythematosusとは症状として認める皮疹が狼にかまれたような紅斑であることから名づけられています(lupus :ラテン語で狼の意味)。

SLEは、外敵(バイ菌など)から自分を守る免疫システムが自分自身を攻撃してしまう病気です。自己抗体(特に抗DNA抗体)が過剰に産生され、それが自分の細胞の中の核の成分(DNAなど)と結合して免疫複合体を作り、それが組織に沈着して炎症が引き起こされることで、皮膚、関節、肺、腎臓、中枢神経など多臓器にさまざまな症状が起こると考えられています。

原因・症状

世界で多くの研究が行われているものの原因は定かになっていませんが、何らかのきっかけ(風邪などのウイルス感染、紫外線、けが、外科手術、妊娠・出産、薬剤など)により発症したり、悪化することが知られています。男女比は1:9と圧倒的に女性に多く、どの年齢でも発症する可能性がありますが、特に妊娠・出産が可能な20~40歳の女性に多いとされます。

症状は、発熱・倦怠感・易疲労感、関節症状(肘や膝などの大きい関節に多いとされますが、手や指などにも起こります)、皮膚症状(頬にできる蝶が羽を広げたような発疹[蝶型紅斑]が特徴的)、口内炎(口の奥、上顎に見られ、痛みはないことが多い)、日光過敏、脱毛、臓器障害として腎臓(蛋白尿、血尿、腎機能低下)や中枢神経(精神症状、頭痛、けいれん、脳血管障害など)、心臓・肺(心膜炎・胸膜炎、間質性肺炎など)、血液(貧血、白血球・血小板減少)の異常があります。臓器障害は生命や長期予後に関わることもあり、きちんとした診断と治療が重要です。

検査

一般的な血液検査に加え、血液検査で血液中の自己抗体(抗核抗体、抗DNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体など)や免疫グロブリン、補体といった免疫系の異常の有無を確認するための検査が重要です。全身の臓器への影響を評価するため、尿検査、画像検査(X線検査、CT検査、超音波検査、必要時にMRI検査)などを施行します。皮膚や腎臓の病変が疑われる場合は病理検査(生検:体の一部の組織を採取し、顕微鏡で見る検査)を施行し、診断します。

SLEの診断は診断のための基準に基づいて行いますが、症状や身体所見、検査所見などから総合的に判断します。

治療

治療の中心は、自分に対する免疫の異常とそれによる炎症を抑えることです。

1. ヒドロキシクロロキン

海外では以前よりSLEの標準治療薬ですが、本邦では2015年に承認されました。皮膚症状や倦怠感、関節症状の改善効果が認められています。本邦の最新のガイドラインでは病状にかかわらず全員で投与を考慮することとされています。

2.ステロイド薬

SLEの治療になくてはならない薬で、病気の重症度により使用量が異なります。治療開始時の量を2~4週続け、病状が良くなれば再発しないよう徐々に減量し、1日に5~10mg内服を継続することが多いです。重症度の高い方では点滴で大量に投与するステロイドパルス療法を行います。高い効果が早く現れます。3日間行い、内服のステロイドに切り替えます。ステロイド薬は副作用が多く、予防のための薬も大切です(感染症、骨粗鬆症など)。

3. 免疫抑制剤

ステロイド薬治療で効果不十分な場合や、副作用などでステロイド薬を減量したい場合にステロイド薬に併用して使用します。最近はより早期から使用する傾向にあります。アザチオプリン、シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス、シクロスポリンA、ミゾリビン、ベリムマブなどです。

4. 抗血小板療法、抗凝固療法

抗リン脂質抗体症候群(血栓を作りやすくなる)を合併した際に血栓予防として使用されます。

アレルギー・リウマチ内科

進化は止まらない 「できない」が「できる」に

当科は、リウマチ・膠原病などの全身性自己免疫疾患とアレルギー疾患を専門としています。近年、これらの疾患に対する診断技術の進歩と新規治療薬の開発は目覚ましく、「分からなかったことが分かる」ようになり、「できなかったことができる」ようになって来ています。我々は科学的根拠に基づき、より早期に診断し、病状、合併症、社会的背景などを考慮した個々の患者さんにとって最適の治療方針を提供することを目指しています。

東 直人(あずま なおと)診療部長

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