疾患概要
CM関節とは親指の付け根の関節で、物をつまんだり握ったりするときにその部位に痛みを感じることがります。 例えばドアノブを回す、ホチキスを使うといった動作で手首に近い親指の付け根に違和感が生じ、徐々に痛みは強くなるという症状です。
これは、母指CM関節の軟骨がすり減り、関節の滑膜に炎症が起きることで生じており、進行すると、骨と骨が軟骨を介さず直接当たってしまい、痛みが強くなります。
原因・症状
手の使い過ぎや加齢が主な原因とされていますが、女性の場合、最近ではホルモンバランスの変化も関係すると考えられています。
関節の軟骨がすり減ると、関節を包む袋(関節包)の内側にある滑膜(かつまく)にはがれた軟骨のかけらが散り、滑膜の炎症や腫れを起こし痛みの原因となります。
女性ホルモンのエストロゲンは滑膜の炎症や腫れを抑えると言われ、更年期にエストロゲンが急激に減少することで手指のさまざまな痛みを発症すると言われています。このため更年期が過ぎると症状が落ち着く人もいます。
男性では力仕事やけがが原因となることが多いと考えられています。
検査
患部のレントゲン検査を行うと母指CM関節の軟骨がすり減って関節が狭くなっていることが分かります。
つまり骨と骨の隙間が狭くなり、直接骨同志が当たっているのです。
すり減った軟骨を補うように周囲の骨が膨らみ、骨のとげが生じている場合もあります。
最終的には骨と骨の適合が悪くなり、亜脱臼(あだっきゅう)を生じることもあります。
治療
まずは安静にすることが一番です。
母指CM関節は普段の生活でよく使うためテーピングや固定装具(サポーター)などを使い、なるべく負担をかけないようにします。休ませることで炎症が治まり、痛みが落ち着きます。
痛みが強い場合は消炎鎮痛剤の湿布、塗り薬、内服を使用します。こうした処置を続けても痛みは治まらない場合は関節内のステロイド注射を行います。数回を目処に3か月から半年程度の間隔をあけて行います。
これらの方法でも良くならない場合は手術を検討します。手術は「関節固定術」と「関節形成術」があり生活スタイルにあわせ選択します。関節形成術は大菱形骨という親指の付け根にある骨を切除して、腱を使って関節を作り直します。力は入りにくくなりますが関節の動きは維持されます。関節固定術は傷んだ軟骨を削った後、関節自体をワイヤーやネジで固定します。手の力は入り易くなりますが手の動きは悪くなります。
整形外科は運動器、全身の自分で動かせる部位の頭部以外の首から下の背骨や四肢を専門としております
整形外科は全身の自分で動かせる部位の頭部以外の首から下の背骨や四肢を専門としております。 背骨や四肢の障害、疾患は外傷、怪我による骨折や脊椎脊髄損傷、特発性側弯症などの小児の疾患、加齢性の変性に伴う腰椎椎間板ヘルニアや成人脊柱変形、変形性関節症、関節リウマチなどの炎症性疾患、化膿性脊椎炎や結核などの感染症、骨肉腫などの骨腫瘍や軟部腫瘍など背骨から四肢の関節、骨、靭帯、筋肉、神経に到るまでたくさんあります。運動器の障害は患者さんの活動性、生活の質に直結します。我々はそれらの疾患を理解し薬物治療や運動療法などの保存治療から手術まで専門的な治療を行います。当科では脊椎班、上肢班、関節班(股、膝スポーツ、膝人工関節、足、骨粗鬆症)、腫瘍班が整形外科の全ての専門分野を網羅し、それぞれのスタッフが先進の医療を目指して努力しております。
橘 俊哉(たちばな としや)主任教授/診療部長