疾患概要
潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis:UC)は大腸の粘膜(最も内側の層)にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患です。
病変は直腸から連続的に認めるのが特徴です。病変の拡がりにより、全大腸炎、左側大腸炎、直腸炎と定義されます。時に目や皮膚、関節等に消化管合併症を併発することもあります。現在日本では指定難病対象疾病となっており、約20万人の患者さんがいらっしゃいます。
原因・症状
炎症性腸疾患(IBD)の原因としては、なんらかの遺伝的な素因を背景として、食事や腸内細菌に対して腸に潜んでいるリンパ球などの免疫を担当する細胞が過剰に反応して病気の発症、増悪にいたると考えられています。
遺伝的な素因と環境因子、免疫学的な異常等多因子が関与していると考えられています。諸説ありますが、現段階ではっきりと証明されたものはありません。UCの症状としては下痢や血便、腹痛が認められます。重症になると、発熱、体重減少、貧血などの全身の症状が起こります。また、腸管以外の合併症として、皮膚の症状、関節や眼の症状が出現することもあります。
検査
消化管精査、全身の状態把握として、上部内視鏡、下部内視鏡、CT、MRI、超音波検査、消化管造影検査(大腸注腸造影)等を行います。行う検査は患者さんの病態に応じて検討しています。
治療
食事に関しては、一般的には低脂肪・ 低残渣 の食事が奨められています。内科治療としては、主に5-アミノサリチル酸製薬、副腎皮質ステロイドといった内服薬が用いられます。難治症例に対してはチオプリン製剤、タクロリムスといった免疫調整/抑制剤やJAK阻害剤といった内服薬を用いる事もあります。
またほかに抗TNFα受容体拮抗薬、抗IL-12/23抗体製剤、抗α4β7インテグリン抗体製剤と言った生物学的製剤が使用される場合があります。薬物治療ではありませんが、血球成分除去療法が行われることもあります。残念ながら現段階において完治する治療法はありません。

患者さんに安心して受診いただける、最善かつ最高の医療を
消化管内科は2022年7月に炎症性腸疾患内科と統合し、食道がん・胃がん・大腸がんなどの消化管腫瘍、クローン病・潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患(IBD)、および機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群などの機能性消化管疾患をはじめとして、消化管疾患の全般にわたって診療しています。
当院は、国内でも有数のIBD診療数を誇る施設であるとともに、早期がん内視鏡治療のハイボリュームセンターでもあります。
最善かつ最高の医療を提供するベく日々努力するとともに、患者さんに安心して受診いただけるよう、エビデンスに基づきつつ一人ひとりの病状に応じた丁寧な診療を心がけています。
新﨑 信一郎 (しんざき しんいちろう)主任教授/診療部長

炎症性腸疾患(IBD)患者さんのQOLの向上を求めて
難病指定を受けている潰瘍性大腸炎とクローン病を中心として、少しでも患者さんのQuality of Life(QOL)が向上するように、内科医と外科医、メディカルスタッフが緊密に連携しながら治療を行っているのが当センターの特徴です。当センターで治療を受けている患者数は、本邦では最も多く、最新の内科的治療だけでなく、内科的治療が奏功しない症例に対しては、直ちに緊急手術を行うことができる体制が整っています。他院からのご紹介や緊急転院も積極的に受け入れています。
新﨑 信一郎(しんざき しんいちろう)センター長