兵庫医科大学病院
呼吸器外科

肺がん(外科治療)

疾患概要

肺がんは、日本人のがん死亡原因の1位で、早期発見と早期治療が大事です。早期には症状が無いことが多く、また血液検査(腫瘍マーカー)やレントゲン写真でも異常が見つかりにくいです。早期発見には、たんの細胞検査・胸部コンピューター断層撮影(CT)やPET検査、などが役に立ちます。

早期の肺がんは、手術を中心とした治療によって治癒をめざします。手術も内視鏡(胸腔鏡)やロボットの使用により患者さんの負担も軽減されてきています。一方、手術に耐えられない患者さんへは放射線治療による成績の向上も報告されています。
進行期には、抗がん剤治療や放射線治療によってより長く質を維持した生活が得られることをめざします。ただし、進行期であっても治癒をめざした積極的な治療もあります。

最近の遺伝子レベルの検査の発達により、個々の患者さんに最適な治療(オーダーメード治療)が確立してきました。がんの治療には、良いこと(効果)もわるいこと(副作用、時には治療による死亡)もあります。担当医師とは別の医師の意見(セカンドオピニオン)もきいて、患者さんと家族が十分に理解し、自らが選択した治療を受けることが大切です。

原因・症状

原発性肺癌は、組織学的に腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌、小細胞癌の四つに分類されます。このうち小細胞癌は、早期にリンパ節や血行性転移をすること、また抗がん剤や放射線治療といった内科的治療が良く効くことから、性質が異なり、一般には手術の対象となることはまれです。対してその他の組織型では、早期に発見して完全に切除することが可能であり、一括して“非小細胞肺癌”として治療方針が共通しています。

頻度は、小細胞肺がんは10~15%を占め、残りの85~90%は非小細胞肺癌に分類されます。非小細胞肺がんの中で喫煙率が高かった頃には関連の深い扁平上皮がんが最も多かったのですが、最近は腺がんが著しく増加し、現在では最も多い組織型(肺がん全体の約半数)と変わっています。また、大細胞がんは比較的まれな組織型で肺がんの約10%を占めます。

検査

がんの進行度の評価は、治療方針に直結する大事な検査です。肺に発生した腫瘍がその場所でどの程度広がっているのか(T因子)、リンパ節転移の有無とその程度(N因子)、他臓器への遠隔転移の有無(M因子)の3つの因子を総合的に判断して最終的にIA期からIV期までの7段階に分類します(図:肺癌病期分類)。

胸部レントゲン写真、CT、MRI、FDG-PETや気管支鏡検査などを行って、T/N/Mのそれぞれの因子を決定します。この中でリンパ節転移の有無とその程度は、手術をするかどうかの決定に非常に重要な因子です(N因子)。特に「縦隔領域へがんが転移しているかどうか」が治療法の分かれ目です。CTやFDG-PET検査を参考に、必要時には縦隔リンパ節から直接細胞を採取してきて顕微鏡でがん細胞の有無を厳密に確認する場合があります。この目的では、手術室での縦隔鏡検査から、より負担の少ない超音波気管支鏡下の穿刺吸引細胞診が主流になりました(EBUS-TBNA)。当院でもこの方法を積極的に行っています。

治療

肺がんの治療には大きく分けて、「手術療法」「化学療法(抗がん剤治療)」「放射線治療」の3つがあります。また、肺がんの組織型(小細胞肺癌か非小細胞肺癌か)とがんの進行度を組み合わせ、これに患者さんの年齢や体の状態、様々な背景、ご希望などを考慮して治療を選択していきます。

ここでは特に手術の適応になる非小細胞肺がんに限ってお話をしますが、原則は「早期に発見して早期に手術で切除すること」です。病巣が程度進行して十分に切除できないと判断された場合には手術の対象とはなりません。
病期分類では、早期のIA期からIIB期までは手術の良い適応です。標準的な術式は「肺葉切除+リンパ節郭清」で、呼吸器外科で最も多い手術方法です。極めて早期の肺がんの場合には、放射線治療、特に定位放射線治療や重粒子線治療などの適応になることもあります。手術に耐えられるだけの体力のない患者さんには良い適応です(図:肺がんの手術治療)。

2群リンパ節転移があるIIIA期では、手術の適応になる場合も手術が無理な場合もあります。集学的治療の対象となることが多い時期です。手術前に抗がん剤治療等を行ってから手術を行うこともあります。さらに進行した、IIIB期およびIV期は、特殊な例を除いて手術で治癒が期待できません。抗がん剤治療が治療の中心となり、放射線治療の効果が期待できる場合には放射線治療も併用します。このように手術前に病気の進行度(病期)を評価して手術などの治療を行いますが、病巣を詳しく調べた“病理病期”の方が、がんの進行をより正確に示す“ものさし”になるので、手術の後で“病理病期”に基づいて手術後の治療を考えることになります(手術後の補助療法)。

その他

原発性肺がんの早期では、胸腔鏡手術・ロボット支援手術や区域切除術など体への侵襲の低い手術による治療をめざします。一方、進行期であっても治療適応がある場合には、他科との協力体制のもと周辺臓器合併切除等の拡大手術ができないか、常に考えています。私たち呼吸器外科では、定期的に呼吸器内科・放射線科・病院病理部との検討会を行い、あらゆる治療の可能性を議論します。より質の高い集学的な観点に立った治療方針を心がけ、高い根治度を得るための手術治療を研鑽しています。

呼吸器外科

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呼吸器疾患(悪性・良性)専門の外科を担当する科です。スタッフ全員が「自分や、自分の家族が受けたい医療」を目標として、呼吸器外科診療全般に対し、臨床外科医の立場で、日々全力を尽くしています。

舟木 壮一郎(ふなき そういちろう)診療部長

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