兵庫医科大学病院
上部消化管外科

食道がん(外科治療)

疾患概要

のどから胃に入るまでの通り道を食道といい、ここにできたがんを「食道がん」といいます。

食道壁は内側から粘膜、粘膜下層、筋層、外膜からなっています。食道がんはこのうち最内層の粘膜から発生する扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)というタイプが多く、飲酒と喫煙がリスクとされています。最近は胃や大腸に多い「腺がん」というタイプの食道がんも増えてきています。これには、生活の変化に伴い胃食道逆流症が増えてきたことが関係していると言われています。

食道がんは早期なら胃カメラでの治療も可能ですが、早い段階からリンパ節などに転移を起こすことが知られており、手術が必要になることも多くあります。また、進行したがんでは、手術だけでなく抗がん剤や放射線を組み合わせる必要があり、さらに進行したがんでは手術ができないため抗がん剤と放射線のみで治療します。

原因・症状

1.無症状:病変が粘膜の下の層(粘膜下層)までの場合、60%は無症状です。
2.しみる:飲み込んだ時にチクチクした痛みやしみるような感じがあります。早期がんに多い症状です。
3.つっかえ感や飲み込みにくさ:病気が進行すると通りが悪くなります(狭窄症状、通過障害)。
4.せき・声のかすれ:病気が進行して気管や神経に影響が及ぶと出てきます。
5.その他:食事が食べられないことによる体重減少、がんの拡がりによる痛みなどが出てきます。

検査

1.内視鏡検査:通常の観察に加えて,超音波を使ってがんの深さを調べることもあります。
2.バリウム検査
3.CT検査:転移の状況を調べるために行います。
4.腫瘍マーカー(血液検査):がんの存在により異常値を示す採血項目のことです。食道がんではSCCを測定します。
5.PET・MRI検査:上記の検査に加えて、病気の広がりを調べるためにPET検査やMRI検査を行うことがあります。

治療

食道がんははじめは粘膜内にとどまっていますが、進行するに連れ、次第に深くなっていきます。粘膜下層に入るとがん細胞が血管やリンパ管に入り、リンパ節や他の離れた臓器(肝臓や肺など)に転移する頻度が高くなります。外膜を越えると、気管や肺、心臓、大動脈など、食道を取り囲んでいる重要な臓器に浸潤します。

食道がんの治療はステージによって異なります。実際には単独で行われるよりも、いくつかを組み合わせて総合的に治療を進めることが多くなっています(集学的治療)。

1)内視鏡で剥がしとる

粘膜にとどまる浅いがん(ステージ0)の場合は、病変部分を内視鏡で剥がしとることでがんを治すことができます。

2)手術

ステージI~IIIの食道がんに対しては手術を行います。ただしステージII、IIIの場合は、先に抗がん剤治療(術前補助化学療法)をして手術を行います。抗がん剤は通常、いくつかの種類を組み合わせて使います。個人差もありますが、抗がん剤には食欲不振や吐き気・嘔吐、脱毛、血球減少といった副作用があります。この例のように、食道がんでは術前補助化学療法がよく効くことがしばしばあります。

3)化学(放射線)療法

ステージIVの食道がんに対して行います。ステージI~IIIであっても体力的に手術が難しい場合は化学(放射線)療法をお勧めすることがあります。放射線療法には病気の根治を目指す「根治照射(こんちしょうしゃ)」と症状の緩和のみを目指す「姑息照射(こそくしょうしゃ)」があります。治療は一日数分間で済み,体への負担は少ないですが、治療期間が長くなると副作用が出てきます。副作用は放射線を当てた部位に炎症が起こることで生じます。飲み込み痛(嚥下痛)、吐き気・嘔吐、皮膚炎に加え、放射線による肺炎や心膜炎、脊髄炎などもあります。

4)ステント療法

腫瘍で狭くなった部分に金属製の「筒」を入れて食べ物の通過をよくする治療です。手術ができない進行がんの狭窄症状(つまり)に対して行う治療法です。

当院で行っている食道がん手術の特色

標準的な食道がんの手術は「1.胸で食道と周囲のリンパ節を一緒に切除する操作」「2.お腹で臓器(胃や小腸・大腸など)を持ち上げる準備をする操作」「3.首で持ち上げた胃や腸を残った食道とつなぐ操作」の3部構成となっており、胸・腹・首の3つの領域に及ぶ大がかりな手術です。

当院では、胸とお腹の操作に内視鏡手術を取り入れています。利点として、「1)傷が小さく術後の痛みが軽いので術後早いうちから体を動かせる→肺炎になりにくい」「2)内視鏡で拡大して見えるので操作が正確→出血が少ない。反回神経(発声や嚥下に関係する神経)の損傷を防ぐことができる」といったことが挙げられます。

上部消化管外科

時代に応じた、専門性の高い手術・治療を行います

私たちは、上部消化管(主に食道と胃)疾患の外科治療を中心に、1)治る手術、2)安全な手術、3)負担の少ない手術 をモットーとして診療を行っています。
手術の進歩は日進月歩。今や食道がんも胃がんも、より専門性の高い施設で治療を受ける時代です。
当科では大学病院の使命として最先端の手術をご提供するのはもちろん、いろいろな併存疾患をもったリスクの高い方の手術もお引き受けしています。
また、肥満や糖尿病、社会の高齢化に伴い今後増加が予想される食道胃逆流症など、がん以外の疾患に対する外科治療も行っています。

篠原 尚(しのはら ひさし)診療部長

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