疾患概要
サルコイドーシスとは、多臓器で肉芽種という結節が出現する原因不明の疾患であり、若年者から高齢者まで男女問わずに発病します。発病時の症状や、その後の経過も多彩であることが特徴の1つです。肺門縦隔リンパ節、肺、眼、皮膚での出現頻度が高いですが、神経、筋、心臓、腎臓、骨、消化器など全身のほとんどの臓器で病変が出現します。
以前は検診で発見される無症状の方が多く、自然改善例も多かったのですが、近年では自覚症状で発見される方も増加して、経過も長引く例が増えてきています。肺、心臓、眼、神経、腎臓など生命予後・機能予後を左右する臓器・組織では、十分な治療と管理が必要となり、重症度によっては難病に指定されているため、重症度Ⅲ、Ⅳの場合には公費から医療費補助を受けることができます。
原因・症状
明確な原因は不明とされていますが、何らかの物質(アクネ菌という皮膚に住み着いている常在菌のひとつが最も有力といわれています)が体内のリンパ球(特にT細胞)を活性化し、そのリンパ球が作り出すサイトカインによりマクロファージが刺激され、全身の様々な臓器に肉芽種を形成するIV型アレルギー反応であると考えられています。
検診発見の肺サルコイドーシスなど無症状のものもありますが、近年は有症状のものが増えており、その症状は発病する臓器によって異なり、極めて多彩です。
発病する部位として肺、眼、皮膚、リンパ節が多いといわれていますが、肺の異常陰影やリンパ節腫大では症状が出現することはまれであり、眼ではぶどう膜炎による眼のかすみや飛蚊症、羞明(まぶしさ)などを自覚したり、皮膚症状として紅斑や結節などを認めたりことがあります。その他、心臓であれば不整脈、神経であればしびれや麻痺などを認めますが、特定の臓器に限らない症状として、倦怠感や発熱、息切れなどを認めることもあります。
検査
病変の組織を採取して、乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫の証明ができれば組織診断群となりますが、組織による診断が得られない場合には臨床診断群、又は疑診群となります。サルコイドーシスを疑う特徴的な検査所見として、胸部画像検査での両側肺門縦隔リンパ節腫脹(BHL)や、採血での血清アンジオテンシン変換酵素(ACE)活性または血清リゾチーム値の上昇、血清可溶性インターロイキン-2受容体(sIL-2R)の上昇や、ガリウムシンチグラフィまたは18F-FDG/PETにおける著明な集積所見、気管支内視鏡検査での気管支肺胞洗浄液のリンパ球比率上昇またはCD4/CD8 比の上昇などが有名で、また、肺、眼、心臓の病変の有無は必ず確認しなければなりません。
治療
現状では原因不明であり、治癒させるといえる治療法はなく、肉芽腫性炎症を抑える治療法が行われます。症状が軽く自然改善が期待される場合には、投薬は行わずに、経過観察を行います。積極的な治療の対象となるのは、臓器障害のために日常生活が障害されている場合や、現在の症状が乏しくても将来の生命予後・機能予後の悪化のおそれがある場合です。全身的治療薬としては、副腎皮質ステロイド薬が第一選択となります。しかし、再発症例、難治症例も多く、二次治療薬としてメトトレキサートやアザチオプリンなどの免疫抑制薬を併用することもあります。局所的治療として、眼病変に対する点眼薬、皮膚病変に対する塗布薬、心臓不整脈についてはペースメーカー留置を行うこともあります。
その他
予後は一般的に自覚症状の強さと病変の拡がりが関与するといわれています。経過は極めて多様であり、短期改善型(ほぼ2年以内に改善)、遷延型(2年から5年の経過)、慢性型(5年以上の経過)、難治化型に分類されます。
無症状の検診発見例などでは自然改善も期待され、短期に改善することも多いのですが、自覚症状があり病変が多蔵器にわたる場合には、慢性型となり数十年の経過になることもまれではありません。
患者さんに安心し信頼していただける質の高い医療の提供を心がけて
呼吸器内科で診療を行う病気は、腫瘍、感染症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息、間質性肺炎など多岐にわたります。
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木島 貴志(きじま たかし)診療部長/主任教授