兵庫医科大学病院
消化管内科

慢性便秘症

疾患概要

便秘症は日常診療において遭遇することが多い疾患です。厚生労働省の行っている国民生活基礎調査の結果では、便秘は若い女性に多く発症が見られますが、男女とも加齢に伴って患者さんが増加し、高齢では男女差が消失するとされています。

日本人の高齢化や生活習慣病の広がりにより、患者さんの数は確実に増えてきており、便秘症診療の重要性は高くなってきております。2017年10月に本邦初(※)の慢性便秘症のガイドラインが発刊となりました。(※編集:日本消化器病学会関連研究会、慢性便秘の診断・治療研究会)

その中で便秘症とは、本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出出来ない状態と定義づけされています。「たかが便秘、されど便秘」と言いますが、便秘も重症化すれば腸閉塞症状が出たりさらには腸穿孔といった深刻な合併症が生じたりすることもあります。

他にもさまざまな疾患と便秘は関連があることがわかってきています。例えば便秘の方は大腸がんや心疾患、脳卒中を起こしやすく、予後にも影響を及ぼし快便の人の方が長生きするということも言われています。
これらのことからも便秘治療の重要性がお分かりいただけると思います。

原因・症状

女性に便秘が多い原因としては、大きく三つの原因があると言われています。

一つ目は筋力の低下です。男性に比べ、排便に必要な括約筋、腹筋の力が弱いため、腹筋が低下すると腸が重力で下方にさがり便秘になりやすくなリます。特に女性は骨盤が広いので、垂れ下がりやすいです。
二つ目はダイエットです。食事量が少なくなると、腸が収縮したり広がったりするぜんどう運動がおろそかになるためです。
そして三つ目はホルモンです。ここでのホルモンは黄体ホルモン(プロゲステロン)のことで、月経・妊娠などの時に多く分泌されます。この働きにより腸のぜんどう運動が抑制され、水分・塩分の吸収が促進されることにより、便秘になりやすくなると言われております。

一般的に便秘を引き起こすのは食習慣、睡眠など生活習慣の乱れやストレスと言われていますが、便秘症を引き起こす薬剤や病気も存在します。便秘症の主な症状としては三大愁訴(しゅうそ)として「排便回数の減少」「排便困難感」「残便感」があります。

検査

便秘症を引き起こす最も重要な病気は大腸がんです。よって、大腸カメラを受けたことがない方にはまず大腸カメラを行い、がんや大きなポリープが無いかなどを確認します。

当院では大腸カメラを受けていただく際、しんどくなく検査を受けていただくように鎮静剤を使用して眠っていただいたり、お腹の手術後などの影響で検査中に痛みが伴ってしまう場合には鎮痛剤を使用し痛みを軽減するといった工夫をしておりますので、安心して検査を受けてください。

また、大腸のどこに便が貯まっているかで便秘のタイプが分かれ、治療方針もタイプごとに異なりますので、腹部レントゲンを撮影し、大腸のどこに便が貯留しているかを見極めるのも大事な検査方法であります。
診察時に内服薬を確認して薬の副作用による便秘の除外とともに、他にかかっている疾患の便秘への影響を評価することも重要です。

治療

慢性便秘症診療ガイドラインには、治療法として大きく二つ挙げられています。「保存的治療」と「外科的治療」がありますが、当科では「保存的治療」を行っています。具体的には生活習慣や食習慣の改善、適便などの理学的療法、薬物療法などです。

ここ数年で便秘の新しい薬が販売され、さまざまな機序で便秘治療が行われています。市販薬でも便秘の薬は手に入りますが、刺激性下剤という種類が多く連用することにより薬剤の耐性が出てきてしまいます。それにより効果が減弱し十分な効果が得られなくなるケースも少なくありません。このような場合には各々の便秘の病態を解析して、個々に適した治療を選択し直すことが必要です。

便秘で苦しんでおられる方の多くは、便回数の減少もさることながらお腹の張りや排便後の残便感を訴えられています。外来で症状の改善をしっかり聞きながら、薬の量の調節や薬の追加、変更をこまめにするよう診療させていただきます。

医師からのメッセージ

当科では便秘に関わるさまざまな臨床研究を行っています。2021年3月現在までに、本便秘の実態やQOL、労働生産性に関する影響を調査し、若い女性ほど便秘であること個人の便秘の認識と診断基準が乖離していることがわかりました。

また治療の効果に関しても研究を行っております。日本で古くから用いられている酸化マグネシウムの有用性についても大腸通過時間を有意に短縮し、便回数や便形状等を有意に改善させ、有用な便秘治療薬であると考えられました。刺激性下剤としてよく使用されるセンナに関しては長期内服で耐性が生じる問題や腹痛、下痢などの副作用も見られますが適切に使用することで効果があることも当科の研究で明らかとなりました。このような研究結果を今後の診療に活かしたいと考えています。

消化管内科

患者さんに安心して受診いただける、最善かつ最高の医療を

消化管内科は2022年7月に炎症性腸疾患内科と統合し、食道がん・胃がん・大腸がんなどの消化管腫瘍、クローン病・潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患(IBD)、および機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群などの機能性消化管疾患をはじめとして、消化管疾患の全般にわたって診療しています。
当院は、国内でも有数のIBD診療数を誇る施設であるとともに、早期がん内視鏡治療のハイボリュームセンターでもあります。
最善かつ最高の医療を提供するベく日々努力するとともに、患者さんに安心して受診いただけるよう、エビデンスに基づきつつ一人ひとりの病状に応じた丁寧な診療を心がけています。

新﨑 信一郎 (しんざき しんいちろう)主任教授/診療部長

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〒663-8501 兵庫県西宮市武庫川町1-1

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