疾患概要
食道胃接合部がんとは、食道と胃の境目付近に発生するがんのことをいいます。
原因・症状
ピロリ菌感染者の減少や除菌の普及によって、日本人の胃がんは減少傾向にありますが、最近、食道と胃の境目に発生する食道胃接合部がんが増えてきました。
原因の一つとして、「逆流性食道炎」を背景とした遺伝子異常の蓄積が考えられています。
<「逆流性食道炎」が発生しやすい主な要因>
①肥満による腹圧の上昇
②夜遅く食事して胃が満杯のままで横になるような食習慣
③高齢に伴う食道裂孔(横隔膜を食道が通るところの筋肉)の緩み
④ピロリ菌がいないことによって酸度の強い胃液が分泌されること
特徴
食道と胃は異なる粘膜細胞からなっています。食道の粘膜は皮膚と同じ扁平上皮細胞、胃の粘膜は胃酸や粘液を分泌する腺細胞です。
食道胃接合部がんには、食道がんの性質に近い「扁平上皮がん(写真A)」と、胃がんの性質に近い「腺がん(写真B)」があります。
※図の2つの症例はいずれも食道胃接合部がん
治療
症状が浅く、早期の状態で発見ができた場合は、内視鏡(胃カメラ)で切除することができます。標準治療は手術になります。
手術
食道胃接合部は、腹部と胸部を分ける横隔膜に囲まれた「手術しにくい奥まった場所」にあります。当科では、腹腔鏡と胸腔鏡を使った双方向からの操作、あるいはロボット(ダヴィンチ)を使った手術によって、「正確で安全な摘出操作」と「確実な再建(つなぎ直し)」を行うことにより、この問題を克服しています。
時代に応じた、専門性の高い手術・治療を行います
私たちは、上部消化管(主に食道と胃)疾患の外科治療を中心に、1)治る手術、2)安全な手術、3)負担の少ない手術 をモットーとして診療を行っています。
手術の進歩は日進月歩。今や食道がんも胃がんも、より専門性の高い施設で治療を受ける時代です。
当科では大学病院の使命として最先端の手術をご提供するのはもちろん、いろいろな併存疾患をもったリスクの高い方の手術もお引き受けしています。
また、肥満や糖尿病、社会の高齢化に伴い今後増加が予想される食道胃逆流症など、がん以外の疾患に対する外科治療も行っています。
篠原 尚(しのはら ひさし)診療部長