疾患概要
機能性ディスペプシア(functional dyspepsia: FD)は、消化性潰瘍やがんなどの器質的疾患がないにも関わらず、胃の痛みやもたれ感等の心窩部(しんかぶ)を中心とした症状を呈する疾患です。機能性ディスペプシアは、患者さんの生活の質(quality of life:QOL)に与える影響が大きいため、正しく理解して治療していくことが重要となります。
原因
原因については、下の表に示すように様々な要因があり、実際は多因子が複雑に影響していると考えられています。
検査
機能性ディスペプシアの診断において、胃がんなどの悪性疾患を含む器質的疾患を否定することが重要となります。器質的疾患を除外するために、詳細な問診や身体診察、血液検査やCT検査、内視鏡検査等の画像検査が必要になります。
また、機能性ディスペプシアの診断基準には2014年に作成された「Rome(ローマ) IV基準」が用いられています。
治療
一般的な機能性ディスペプシアの治療薬としては、「酸分泌抑制薬」「消化管運動機能改善薬」「漢方薬」「抗うつ薬」「抗不安薬」などがあげられます。さらに、ヘリコバクター・ピロリ除菌療法や心理療法なども有効であることが示されています。実際には、症状が多様であり、複数の薬剤を用いて治療方針を考える必要があります。また、症状が生活のリズムと関連していたり、特定の食事(高脂肪食や香辛料)で症状が悪化したりする場合もあり、詳細な問診が重要となります。
機能性ディスペプシアの治療目標として、病態そのものの改善をめざすことはもちろんですが、「自覚症状の改善」や「QOLの向上」も重要です。
メッセージ
機能性ディスペプシアは、基本的には良性の疾患で生命予後は良好であると考えられています。しかし、QOLを大きく損なうために治療法や予後について悩まれている方や、色々な病院を受診しても「気のせい」「精神的な問題」と言われ、お困りの方も多いと思います。
当科は豊富な治療実績のもと、様々なことを念頭に置いて治療にあたるようにしています。
お困りの方は、一度当院を受診してみてください。
患者さんに安心して受診いただける、最善かつ最高の医療を
消化管内科は2022年7月に炎症性腸疾患内科と統合し、食道がん・胃がん・大腸がんなどの消化管腫瘍、クローン病・潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患(IBD)、および機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群などの機能性消化管疾患をはじめとして、消化管疾患の全般にわたって診療しています。
当院は、国内でも有数のIBD診療数を誇る施設であるとともに、早期がん内視鏡治療のハイボリュームセンターでもあります。
最善かつ最高の医療を提供するベく日々努力するとともに、患者さんに安心して受診いただけるよう、エビデンスに基づきつつ一人ひとりの病状に応じた丁寧な診療を心がけています。
新﨑 信一郎 (しんざき しんいちろう)主任教授/診療部長