兵庫医科大学病院
脳神経内科

球脊髄性筋萎縮症

疾患概要

私たちが手や足を動かすとき、脳からの指令は脊髄から末梢神経を通り、筋肉に伝えられることで筋肉が収縮します。「球脊髄性筋萎縮症(きゅうせきずいせいきんいしゅくしょう)」は、脳や脊髄にある運動神経細胞が減少し、顔(顔面、のど、舌)、手足の筋肉に力がはいらず、萎縮してしまう病気です。遺伝性があり、男性にしか起こりません。人口10万人あたり1~2人くらいの患者さんがいると推定されています。(※参考:日本神経学会WEBサイトより)

原因・症状

性染色体の一つであるX染色体上にあるアンドロゲン受容体遺伝子の繰り返し配列が延長することが原因です。男性のみが発症し、女性がこの遺伝子を持っていても発症せずに保因者となります。この繰り返し配列が長いほど、発症年齢は早くなり、重症化する傾向があります。
患者さんの子が男の子であった場合は発症せず、異常な遺伝子も引き継がれません。患者さんの子が女の子であった場合、100%の割合で保因者となります。保因者の子が男の子であった場合は50%の割合で発症し、女の子であった場合は50%の割合で保因者となります(※図1)。血縁者に発症者がいない患者さんも比較的多くいます。

症状としては、「舌が萎縮する(※図2)」「飲み込みにくくなる」「手足の力が入らなくなる」「手が震える」「顔がぴくつく」「乳房が女性のように膨らむ」などがあげられます。症状は10年以上かけてゆっくりと進行します。

検査

以下のような検査があります。

1)血液検査

血清クレアチニンキナーゼ(CK)値の上昇がみられます。一般的に肝機能の指標とされるAST、ALT値も上昇します。症状が出る前から、これらの異常が検診で指摘されている場合もあります。

2)針筋電図

筋肉に針を刺して、筋収縮から得られる電気活動を記録する検査です。運動神経障害を示す特徴的な波形が得られます。

3)遺伝子検査

血液検査で行います。血液中の白血球から遺伝子を取り出し、本疾患で特徴的な繰り返し配列の延長を調べます。

治療

根本的な治療法はなく、筋力維持目的のリハビリテーションを行ったり、歩行障害に対して装具、歩行器、車椅子を使用したりします。
男性ホルモンを減少させる働きのあるリュープロレリン塩酸塩は、もともと前立腺がんなどの治療薬として使用されてきました。この薬剤が、本疾患において血清CK値及び嚥下(えんげ)障害を改善させることが示され、2017年に保険収載されました。12週間に1回、皮下注射します。

メッセージ

本疾患は緩徐に進行するため、その兆候(「検診で血清CK値が高い」「階段が少し上りにくくなった」など)があっても、しばらく病院を受診されないケースがあります。治療薬もある病気ですので、気になる症状がありましたら、かかりつけ医の先生から当院に紹介してもらってください。

脳神経内科

正確な診断を行うため、詳しく診察を行います

当科では、脳、脊髄、末梢神経、筋肉などの病気を診療しています。
血液検査などに異常がみられないケースもあり、詳細な診察を行っていく必要があります。兵庫県神経難病医療ネットワーク支援協議会の協力病院でもあります。

木村 卓(きむら たかし)診療部長

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