疾患概要
消化管(口から食道、胃、小腸、大腸を経て肛門まで)は食物の消化、吸収、排泄に重要な臓器です。
消化管がんは、この消化管にある粘膜の細胞が何らかの原因でがん細胞となる病気で、浸潤(周囲にしみだす)や転移(体のあちこちに飛び火する)、悪液質(正常組織が摂取しようとする栄養を癌細胞が搾取して体を衰弱させる)といった悪影響を人体におよぼすと死につながります。
消化管がんには主に、食道がん、胃がん、大腸がんなどがあります。大腸がんと胃がんの死亡者数はがん疾患の中でそれぞれ第2位、第3位(※)を占め、食道・胃・大腸がんを合わせるとがん全体の死亡者数の約1/3を占めます。(※国立がん研究センター 「2019年 がん登録」より)しかしながら、それらは発見・治療が早期であればあるほど予後が良くなります。
原因・症状
食道がんの原因
飲酒・喫煙が大きな危険因子で、食習慣(熱いもの辛いものをよく食べる、野菜や果物の摂取不足)も発症リスクを高めます。
胃がんの原因
ピロリ菌感染が最大の原因で、生活習慣(塩分の多い食事、喫煙、野菜や果物の摂取不足)は発症リスクを高めます。
大腸がんの原因
食生活の欧米化(動物性タンパク質や脂肪分摂取の増加)、運動不足、肥満、喫煙などが発症リスクを高めます。また、遺伝子異常が原因となる大腸癌(家族性大腸腺腫症やリンチ症候群など)があります。
消化管がん(食道がん・胃がん・大腸がん)の症状
いずれも早期の段階では自覚症状はほとんどありません。ある程度進行してくると、食道がんであれば飲み込みにくさや胸の違和感が出現し、胃がんであれば胃の痛み、吐き気、貧血、黒色便などが出現し、大腸がんでは便に血が混じる、便が細くなるなどの症状が出現します。
検査
消化管がんが疑われた場合は、内視鏡検査(胃カメラ、大腸カメラ)を行って組織の一部を採取し(生検)、顕微鏡で癌細胞の有無や細胞の種類を調べます(病理検査)。
さらに血液検査や画像検査(CT、MRI、PET 検査など)を行い、がんの深さや広がりをを調べ、最終的にがんの進行度を判定します。
治療
内視鏡検査(胃カメラ、大腸カメラ)を含めた医療技術の進歩により、多くの消化管がんは早期発見できれば内視鏡的切除が可能です。当科では他施設で内視鏡的切除が困難とされた患者さんもセカンドオピニオンでご紹介いただき、内視鏡的治療をさせていただくことがあります。
進行した消化管がんには外科的切除または抗がん剤治療が選択されますが、我々は外科と常に連携を取りながら個々の患者さんに応じた治療を行っております。
また、当科は JCOG (日本臨床腫瘍研究グループ) の関連施設として、我が国のガイドライン(治療指針)に従った標準化学療法に加え、臨床試験段階の化学療法も行っております。
メッセージ
消化管がんの内科的治療(内視鏡、薬物治療)は当科にお任せください。
お困りの際は、ぜひご相談いただければと思います。
患者さんに安心して受診いただける、最善かつ最高の医療を
消化管内科は2022年7月に炎症性腸疾患内科と統合し、食道がん・胃がん・大腸がんなどの消化管腫瘍、クローン病・潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患(IBD)、および機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群などの機能性消化管疾患をはじめとして、消化管疾患の全般にわたって診療しています。
当院は、国内でも有数のIBD診療数を誇る施設であるとともに、早期がん内視鏡治療のハイボリュームセンターでもあります。
最善かつ最高の医療を提供するベく日々努力するとともに、患者さんに安心して受診いただけるよう、エビデンスに基づきつつ一人ひとりの病状に応じた丁寧な診療を心がけています。
新﨑 信一郎 (しんざき しんいちろう)主任教授/診療部長