兵庫医科大学病院
消化管内科

十二指腸腫瘍

疾患概要

十二指腸は消化管の一つで胃の奥にある臓器で、壁の薄さは約2~3mmと薄く、長さは約25cmで、球部、下行部、水平部、上行部に分けられます。下行部には膵液、胆汁の出口であるファーター乳頭があり、それらの消化液は、食物の消化や吸収に役立ちます。

十二指腸の腫瘍は、全消化管腫瘍の約1~2%といわれており、比較的まれな腫瘍です。腫瘍には、治療の必要のない良性のものと、治療を必要とする悪性のものがあります。リンパ管腫、脂肪腫、異所性膵などの良性の腫瘍は治療の必要はありません。治療が必要な腫瘍としては、腺腫、がん、神経内分泌腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、悪性リンパ腫などがあります。

原因・症状

早期の腫瘍では症状がないことが多いですが、進行して大きくなり、十二指腸を塞いでしまうと、消化液や食べたものが詰まってしまい、腹部膨満感、腹痛や吐き気、嘔吐などの症状が出てきます。また、腫瘍からじわじわと出血することがあるため、貧血をおこすことがあります。
ファーター乳頭は胆汁や膵液の出口なので、腫瘍ができて出口を塞ぐと、胆汁が鬱滞して黄疸(眼や皮膚が黄色くなる)が出たり、膵液が鬱滞して膵炎(上腹部痛や背部痛、発熱)を起こすこともあります。

検査

上部消化管内視鏡検査

上部消化管内視鏡検査とは、いわゆる胃カメラのことです。
腫瘍の観察および生検(病変の一部を採取)し、病理検査を行います。通常の内視鏡では観察困難な場合やファーター乳頭の観察をする場合には、側視鏡と呼ばれる内視鏡を使用することがあります。狭帯域光観察(NBI)などの画像強調や拡大観察、必要があれば超音波内視鏡(EUS)、腔内超音波検査(IDUS:胆管内を超音波で調べる検査)などで病変を詳しく調べて治療方針を決めていきます。

造影CT検査、MRI検査、PET検査

腫瘍の部位、周囲臓器との関係などがわかります。がんなどの転移の有無を調べるのに有用です。
ファーター乳頭部がんに対しては、MRI検査の中でもMR胆管膵管撮影(MRCP:胆管や膵管を詳しく見る検査)や、拡散強調画像(DWI)が有用です。

十二指腸造影検査

胃カメラから造影剤を流したり、鼻からチューブを十二指腸まで挿入したりして、レントゲンを撮って検査します。腫瘍の部位などを詳しく調べるのに役立ちます。

治療

内視鏡的切除

切除が必要な腫瘍の場合は、まずは負担の少ない内視鏡手術が行われます。ファーター乳頭にできた早期のがんや腺腫に対しては、内視鏡的乳頭切除術が行われます。乳頭以外の部位にできた早期のがんや腺腫に対しては、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)や内視鏡的粘膜切除術(EMR)が行われます。
十二指腸の粘膜は非常に薄く、また胆汁や膵液などの消化液に暴露されるので、内視鏡で切除した部分が後で穴が開いてしまうリスクが高い(ESDで約9%)部位です。そのため、切除後の粘膜欠損部分をクリップなどで塞いだり、創傷被覆材で覆ったりする方法が試みられています。

腹腔鏡内視鏡合同手術(D-LECS)

内科医(内視鏡)と外科医(腹腔鏡)がコラボレーションする手術です。なるべく最小限の切除範囲で十二指腸の一部をくり抜くことができ、その穴もしっかりと塞ぐことができるというメリットがあります。転移のない早期がんやGISTなどに行われます。

外科的切除

内視鏡で切除できない腫瘍に対して行われます。
開腹(お腹に大きな切開をする)手術や、腹腔鏡(お腹に小さな穴をいくつか開けて、内視鏡や鉗子を入れて行う)手術があります。十二指腸の周りには、膵臓や胆管など色々な臓器があるため、大きな手術になることがあります。
膵頭十二指腸切除、十二指腸局所切除術など様々な術式があり、腫瘍種類や進行度、部位により選択されます。

化学療法

切除できないほど進行(遠くまで転移がある)しているがんやGIST、悪性リンパ腫の場合は、抗がん剤による治療が行われます。

腫瘍別の治療について

腺腫

良性腫瘍なので、小さなものでは経過観察されることもありますが、大きなものは一部がん化している可能性があるため、内視鏡的切除を行います。

十二指腸がん

消化管悪性腫瘍の中でも0.3~0.4%とまれな病気です。進行度によって手術(内視鏡、外科的切除)や抗がん剤治療が行われます。

神経内分泌腫瘍(NET)

悪性度の低い順に、NET G1, NET G2, NEC(内分泌細胞がん)と分類されます。原則は外科的切除ですが、10mm以下のNET G1には内視鏡的治療が行われることもあります。NECは切除不能で発見されることも多く、その場合は抗がん剤治療が行われます。

消化管間質腫瘍(GIST)

粘膜の下にできる腫瘍の1つで、転移がなければ切除を行います。内視鏡だけでの切除は困難であり、腹腔鏡での切除や、内視鏡と腹腔鏡の合同手術を行います。転移があり切除困難な場合は、抗がん剤治療を行います。

悪性リンパ腫

濾胞性(ろほうせい)リンパ腫やMALTリンパ腫といった悪性度の低いものや、 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma)や皮膚T細胞性リンパ腫(T cell lymphoma)のような悪性度の高いものがあります。悪性度の低いものでは経過観察が行われることもありますが、基本的には抗がん剤治療や放射線治療が行われます。

消化管内科

患者さんに安心して受診いただける、最善かつ最高の医療を

消化管内科は2022年7月に炎症性腸疾患内科と統合し、食道がん・胃がん・大腸がんなどの消化管腫瘍、クローン病・潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患(IBD)、および機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群などの機能性消化管疾患をはじめとして、消化管疾患の全般にわたって診療しています。
当院は、国内でも有数のIBD診療数を誇る施設であるとともに、早期がん内視鏡治療のハイボリュームセンターでもあります。
最善かつ最高の医療を提供するベく日々努力するとともに、患者さんに安心して受診いただけるよう、エビデンスに基づきつつ一人ひとりの病状に応じた丁寧な診療を心がけています。

新﨑 信一郎 (しんざき しんいちろう)主任教授/診療部長

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