兵庫医科大学病院
脳神経内科

ギラン・バレー症候群

疾患概要

神経は、脳や脊髄といった「中枢神経」と、中枢神経から分かれて全身に広がっていく「末梢神経」の大きく2つに分類されます。ギラン・バレー症候群とは、末梢神経の障害によって、力が入らない、感覚がわかりにくい、しびれるなどの症状を起こす病気です。
多くの場合、発症前1ヶ月以内に風邪症状や下痢といった感染症の症状(先行感染)がみられます。わが国での発症率は年間10万人あたり1-2人で、やや男性に多い傾向があります。小児から高齢者まで、あらゆる年齢層で発症する可能性があります。神経症状発症から4週間以内に症状はピークになり、その後回復が始まり元の状態に戻っていきます(図1)。ただ、重症例では呼吸筋の麻痺、自律神経障害(重度の血圧変動、不整脈など)により生命にかかわる場合もあり、死亡率は約1%、約20%の方は発症から1年後にもなんらかの障害が残存しています。再発は2-5%の方にみられます。

原因・症状

ウィルスや細菌などによる感染症を引き金として免疫機構が活発になった結果、自分自身の末梢神経を攻撃してしまうことが原因として考えられています(図2)。症状としては、手足の力が入りにくくなり、数日にわたって悪化することが典型的です。他に、手足の感覚の異常、痛み、顔の筋肉の麻痺、目を動かす筋肉の麻痺、のみこみに関係する筋肉の麻痺、さらに重症の方の場合は、呼吸に関係する筋肉の麻痺や自律神経の障害(重度の血圧変動、不整脈、発汗の異常、排尿障害など)などが起こることもあります。

検査

症状や診察の結果、ギラン・バレー症候群が疑われた場合、次のような検査を行います。

①血液検査

末梢神経障害を引き起こす他の疾患を鑑別することに加え、末梢神経の構成成分に対する抗体(抗ガングリオシド抗体)の有無を調べるために行います。ギラン・バレー症候群の方の約60%に抗ガングリオシド抗体がみられます。

②髄液検査

脳や脊髄の周りには、脳脊髄液という透明な液体があります。ギラン・バレー症候群では脳脊髄液内の蛋白(たんぱく)が増加し、細胞数(白血球数)は正常、という変化がみられることが多く、診断の根拠になります。脳脊髄液は横向きに寝ていただいた姿勢で腰に針を刺して採取します(図3)。

③神経伝導検査

皮膚の上から末梢神経を電気刺激して、末梢神経が正常に機能しているかを判断する検査です。ギラン・バレー症候群では、電気刺激が伝わる速度が遅くなるなどの異常がしばしばみられます。

治療

ギラン・バレー症候群の原因となっている免疫反応を調整する目的で、①免疫グロブリン大量静注療法(免疫グロブリンという血液製剤を5日間連続で点滴する治療)や②血液浄化療法(血液中の病気に関係する物質を取り除いてから体内に再度戻す治療、多くは1-2日おきに5回前後行う治療)が行われます。
①と②の治療効果は、ほぼ同じと考えられており、特殊な機械が不要という点から①が選択されることが多いです。さらに、呼吸する筋肉が麻痺した場合は人工呼吸器を装着したり、飲み込みの筋肉が麻痺して口から食べられなくなった際は、チューブを用いた経管栄養などを行ったりすることもありますが、症状の回復に伴って終了できることが多いです。また、手足を中心とした弱った筋肉に対するリハビリテーションも重要です。

脳神経内科

正確な診断を行うため、詳しく診察を行います

当科では、脳、脊髄、末梢神経、筋肉などの病気を診療しています。
血液検査などに異常がみられないケースもあり、詳細な診察を行っていく必要があります。兵庫県神経難病医療ネットワーク支援協議会の協力病院でもあります。

木村 卓(きむら たかし)診療部長

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