クローン病
原因不明の慢性疾患の一つであるクローン病。以前は珍しい病気でしたが、患者さんの増加にともない、病名を耳にすることも多くなってきました。
「クローン病」って、どんな病気?
病名は医師の名にちなんでいる
クローン病は、1932年にクローン医師らによりアメリカで初めて報告されました。
難病に指定されている
原因が明らかになっていないため、根治に至る治療方法が確立していない難病です。
患者数は増え続けている
患者数は増加の一途をたどっており、日本では4万人を超えています。
10代〜20代での発症が多い
若年で発症する人が多く、日本では男性の患者数が女性の2倍以上になります。
もっとも多い症状は腹痛と下痢
腹痛と下痢を訴える患者さんが多く、肛門周辺に膿瘍や痔瘻などの病変ができることも。
腹痛、下痢、血便、発熱、体重減少、肛門付近の痛みや腫れなどの症状が現れます。
先進国で発症率が高い
患者数は先進国で多く、発展途上国で少ないという特徴があり、環境や食生活の影響があると考えられます。
患者さんの人生に寄り添う
「クローン病」の治療
生涯を通じて病気と向き合う患者さんを、内科と外科が連携して支えるクローン病の治療。炎症性腸疾患外科の先生に話を聞きました。
炎症性腸疾患外科 IBDセンター長
主任教授 池内 浩基
腹痛や下痢といった症状が続いたら、早めに受診して原因を突き止めましょう。
当院のIBDセンターはクローン病の手術実績が1,516例もあります。
※2019年12月18日までの累積
クローン病は、消化管に炎症が生じる「炎症性腸疾患」の一つです。原因のわからない炎症性腸疾患の中には潰瘍性大腸炎もありますが、こちらは大腸だけに炎症が起こるのに対し、クローン病では口から肛門まで消化管のどこにでも炎症が起こる可能性があります。病気の原因は明確になっていませんが、遺伝的な要因や環境要因、食事などが関わっているのではないかと考えられています。
治療は、薬物療法や栄養療法などの内科治療が主体となります。薬物療法としては炎症を抑える薬のほか、過剰な免疫反応を抑える免疫調節薬や生物学的製剤である抗体製剤による治療も多く行われるようになってきました。栄養療法では、腸への負担を軽減するため、脂肪が含まれない栄養剤を利用して通常の食事を減らします。
病気が進行すると、腸管の内側が狭くなる(狭窄)、腸管と腸管あるいは腸管とほかの臓器や皮膚がつながる(瘻孔)といった腸管合併症が起こることがあります。その場合は外科手術による治療を行います。
クローン病は、症状が落ち着く寛解と再燃を繰り返す慢性の病気。難病というと、命に関わる、あるいは普通の生活は送れないものと思われる方もいますが、寛解期であれば大きな制限なく日常生活を営むことが可能です。寛解期にも再燃時にも、医師と相談しながらその方に合った適切な治療を継続していくことが大切です。
兵庫医科大学病院は炎症性腸疾患を専門とするIBDセンターを有しており、内科と外科が緊密に連携して治療にあたっています。当センターは、クローン病と潰瘍性大腸炎を合わせて3,500例を超える診療実績があり、治験も多々実施しているので最新の薬物治療を受けていただくこともできます。
生涯付き合う病気であり、医師をはじめ医療スタッフと患者さんとのお付き合いも長いものになります。しっかりとした信頼関係を築きながら、それぞれの患者さんにとってベストな治療を行なっていきたいと考えています。