血液のがん(造血器腫瘍)の一つである悪性リンパ腫。あまり聞かない病名かもしれませんが、血液がんの中では最も多く、患者さんの数も増加の一途をたどっています。

「悪性リンパ腫」って、どんな病気?

リンパ球ががん化

白血球の一つであるリンパ球は、血管やリンパ管を通って全身を巡っています。そのリンパ球から発生するがんです。

自覚症状がないことも多い

首、脇の下、脚の付け根などのリンパ節に腫れやしこりができることがある一方、自覚症状がない場合も多くあります。

70以上のタイプがある

がん化するリンパ球の種類などにより70以上に分類されており、進行の速さや治療法もそれぞれ異なります。

タイプによっては治ることも

一番頻度の高いリンパ腫では、しっかりと治療を受ければ6〜7割の確率で治癒をめざすことができます。

一人ひとりの患者さんにベストな治療を

病名から受ける印象とは異なり、しっかりと治療すれば完治も期待できる悪性リンパ腫。その検査や治療、そして、兵庫医科大学病院での取り組みについて、血液内科の先生に聞きました。

血液内科 教授 吉原 哲

正確な診断と適切な治療が何より重要

他科などともしっかりと連携しています

悪性リンパ腫では、皮膚のすぐ下にあるリンパ節(首、脇の下、脚の付け根など)が腫れるほか、微熱が続く、大量の寝汗をかくという症状が出ることもありますが、自覚症状がなく検診で見つかる場合も多くあります。

悪性リンパ腫は70以上のタイプに分類されており、タイプによって治療法も異なるので、正確な診断をつけることが重要です。検査では、病変のある組織を採取して調べる生検が重要で、部位によって放射線科や耳鼻咽喉科・頭頸部外科、形成外科と連携して行います。以前は検査のために開腹手術が必要となることも多くありましたが、兵庫医科大学病院では、CT画像を確認しながら針を刺して組織を採取するCTガイド下生検を積極的に行っており、手術が不要なことから患者さんの負担も少なくなっています。

タイプが細かく分類される悪性リンパ腫の病理診断は非常に専門的になるため、当院では、血液病理を専門とする医師が担当しています。

治療は、抗がん剤や抗体製剤を使った薬物療法が中心で、放射線療法を併用することもあります。治療開始当初は入院していただきますが、その後は通院になる場合がほとんどです。当院は外来化学療法室を設置しており、仕事など普段の生活を続けながら治療を受けていただくことが可能です。

大半の悪性リンパ腫には薬物療法が有効ですが、中には再発したり、治りにくかったりする場合があります。そういった悪性リンパ腫に対し、最近導入され始めた治療法の一つがCAR-T細胞療法です。これは、患者さんの血液から免疫細胞(Tリンパ球)を採取し、遺伝子医療の技術によって改変を加え、数を増やしてから点滴で体の中に戻すというもの。当科は、この治療法を国内でもいち早く導入しました。患者さんにベストな治療を届けたい。そのために、さまざまな診療科、看護師・薬剤師など多職種でしっかりと連携し、先進的な治療にも積極的に取り組んでいます。