患者さんの数が年々増加し、今では日本人女性の9人に1人がかかるといわれている乳がん。
その早期発見につながる重要なキーワードが「乳房の石灰化」と「しこり(腫瘤)」です。

「乳房の石灰化」って、どんなもの?

カルシウムの沈着

母乳を作る組織である乳腺内には、さまざまな理由からカルシウムが沈着することがあり、これを「石灰化」といいます。

乳がんが原因であることも

石灰化の多くは良性ですが、がんに伴って生じることもあるため、注意が必要です。

発見できるのはマンモグラフィーだけ

石灰化は「しこり」とは違い、自分では気づけません。マンモグラフィー検査でのみ見つけられます。

石灰化で見つかる乳がん

乳がんの場合、石灰化が見られるのは「しこり」ができる前。ごく早期のがんの発見につながります。

早期の乳がんを見逃さないために

微小ながんの可能性がある乳房の石灰化を見つけることはとても重要。石灰化病変について、また、乳がんと診断された際の治療について、乳腺・内分泌外科の先生に聞きました。

乳腺・内分泌外科 准教授 永橋 昌幸

2年に1度の検診を必ず受けましょう

お話をしっかりと伺って患者さんをサポートしたい

乳房の石灰化が生じる原因はさまざまで、良性のものであれば基本的には放置してもかまいませんが、中には乳がんに伴って生じる石灰化もあります。多くは良性ですが、「要精密検査」とされる石灰化のうち、2〜3割が乳がんと診断されます。

石灰化から見つかるがんの多くは、まだ周りの血管やリンパ管に広がっていない非浸潤がんです。これは、しこりができる前の非常に早期の段階であり、自己触診では見つけることができません。石灰化の発見には、マンモグラフィー検査が有効です。

がんの疑いがある石灰化が見つかった場合には、ステレオマンモトームという、マンモグラフィー撮影ができる装置を使い、針で組織を採取して、がんであるかどうかを診断します。非浸潤がんであれば転移はなく、その部分さえ切除すれば完治し、再発もありません。しかし、放置すれば、いずれは浸潤がんへと進行してしまいます。

近年、乳がんの治療は、従来の手術や抗がん剤などによる治療に加え、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬といった新たな薬が登場するなど、目覚ましく進歩しています。当科は、臨床試験や治験にも積極的に参加して、患者さんに新しい治療を提供し、より良い治療法の開発にも尽力しています。また、乳がんには遺伝が原因のものがあることもわかっているため、遺伝子医療部と協力して遺伝子診断などにも取り組んでいます。

兵庫医科大学病院では、当科と切除した乳房の再建手術を担当する形成外科、放射線科、産科婦人科、病院病理部、化学療法室などが連携してチーム医療を実践しており、最先端の治療を患者さんに安心して受けていただける体制が整っています。

日頃から自分の乳房の状態に気を配ることを「ブレスト・アウェアネス」といいます。女性はぜひブレスト・アウェアネス、乳房に変化がないかを常に意識して、40歳からはマンモグラフィー検査も必ず受けてください。