早期に発見することが難しいなどの理由から、難治性のがんといわれる膵臓がん。
がん死亡数では、肺、大腸、胃に次ぐ第4位となっています。

「膵臓がん」って、どんな病気?

患者さんは年々増加しています

膵臓がんの患者さんの多くは60歳以上。高齢化や食事の欧米化に伴って、患者さんの数は著しく増えています。
長さ約15cmの膵臓では「膵液」という消化液や、血糖をコントロールするインスリンなどのホルモンがつくられます。

肥満もリスク因子の一つ

大量に飲酒する人に多く見られる慢性膵炎、喫煙、肥満などが、膵臓がんのリスクを高めるといわれています。

症状が出にくい

腹痛、背中や腰の痛み、食欲不振、黄疸などの症状が出てきたときには、すでに進行していることが多いです。

各科とも連携してあきらめない治療を実践

難治性といわれる膵臓がんですが、有効な治療法の開発も進んでいます。精度の高い検査や治療について、2022年1月に肝・胆・膵外科の主任教授に着任した廣野先生に聞きました。

肝・胆・膵外科 主任教授 廣野 誠子 

いつでも患者さん目線、患者さんファーストです

各科が連携してベストを尽くします

膵臓の周りには肝臓や十二指腸などの臓器、複雑に入り組んだ血管、さらには多くのリンパ管があります。膵臓がんが、発見されにくい上に進行が早く転移しやすいのはこのためです。

検査では、超音波(エコー)装置が付いた超音波内視鏡を使って、胃の中から胃の背側にある膵臓を詳しく調べたり、組織を採取したりします。また当科では、造影CT検査のデータから3D画像を構築することで、がんの位置や形、血管との位置関係などを把握し、手術前にしっかりとシミュレーションを行います。転移の有無を調べるには、造影剤を使ったMRI検査や超音波検査、PET検査が有効で、当院ではこれらすべての検査を院内で実施することが可能です。

治療においては、がんの切除が可能なら手術を行います。膵臓の左側(膵体部・膵尾部)のがんでは、膵体尾部切除術という術式となり、当院では腹腔鏡を用いて行っています。右側(膵頭部)のがんでは、膵頭十二指腸切除術という術式となり、膵頭部のほか、十二指腸と胆管を切除し、その後膵臓と腸、胆管と腸、胃と腸をつなぐ(吻合)非常に大きな手術が必要です。当院では、できる限り手術時間を短くし、出血量を少なくするために、現在は開腹手術で行っていますが、将来的にはロボット手術を導入する予定です。進行した膵臓がんは、血管に進展すること(浸潤)がしばしばあり、その場合、血管を一緒に切除し、つなぐ(再建)というさらに難しい手術手技を行います。

ほかの臓器やリンパ節への転移があるときは、化学療法や放射線療法を行います。近年は抗がん剤の種類が増え、一度は手術できないと判断しても、化学療法が奏効して手術が可能になることも多く、そのような患者さんには積極的に手術を行っています。

私たちは、患者さんの年齢などを理由に治療をあきらめることはしません。例えば、まず運動療法や栄養療法で体力がつけば、治療の選択の幅は広がります。膵臓がんに限らず、どんな疾患もすべて、当院では、肝・胆・膵を専門とする外科医、内科医、放射線科医が毎週集まり、患者さん一人ひとりの状態・生活などを考慮しつつ治療方針を決めています(キャンサーボード)。ベストな医療を提供して患者さんやご家族と一緒に闘う、それが私たちの信念です。