ストレスの多い現代の社会において、うつ病の患者さんは年々増加しています。
「うつ病になる」というのは決して特別なことではなく、誰の身にも起こる可能性があります。

「うつ病」って、どんな病気?

およそ1割の人が経験

日本では、12〜13人に1人はうつ病を経験すると言われています。女性の患者さんのほうが多く、男性の約2倍にもなります。

発病のきっかけは?

人間関係のトラブルや病気、大切な人との別れといったストレスのほか、昇進や結婚など一見うれしい出来事がきっかけになることも。

気持ちの面だけでなく、
体にもさまざまな症状が現れます
<こころの症状>

・気分が落ち込む(特に朝)
・希望が持てない
・集中力、注意力が落ちる
・興味や意欲がわかない
・不安や焦りから落ち着かない

<体の症状>

・睡眠の異常
・食欲・体重の減少
  (時に増加)
・疲労感や倦怠感
・頭痛
・肩や背中の痛み
・便秘や下痢

普通の気分の落ち込みとは違い、体に現れるものも含め複数の症状が2週間以上にわたって続きます。

※ここに挙げた以外の症状が出ることもあります。

一人ひとりの患者さんに
専門性の高い治療を届けたい

「病気」ととらえずに未治療のままでいる人も多いうつ病。しかし、ほかの病気と同様、放置すると悪化してしまいます。うつ病とその治療について、精神科神経科の先生に聞きました。

精神科神経科 主任教授 松永 寿人 

周りの方が変化に気づいたら、受診をすすめてください。

気になることがあれば早めに医師に相談を。

うつ病の患者さんには協調的で責任感が強い方が多く、ご自身のことより仕事や組織を重んじる傾向が見られます。家族や組織に迷惑をかけることに大きな罪悪感を覚えるため、「疲れているのに眠れない」などの不調をきたしていても無理をしてしまいます。うつ病は、例えて言えば〝ガス欠〟のようなもの。アクセルを踏んでも動けないのに、それでもアクセルを踏み続け、思うようにできないことに不安や焦りを感じ、場合によっては絶望までしてしまうのです。

人の気分や意欲といった感情に関わる情報は、脳の中では、セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質によって伝えられており、発病にはこれらの物質の機能の低下が関係しているとされています。

治療にまず必要なのは休養です。自宅療養ではなかなか休めないという方には入院をすすめることもあります。必要に応じて神経伝達物質を補充し、バランスを調整する抗うつ薬や睡眠薬なども使用します。また、再発を防ぐためにも、患者さんが発想を変えストレスへの抵抗力をつけることも必要です。そのために、認知行動療法等の精神療法も行います。

ご家族や職場など周りの理解や適切な対応も重要です。私たちは、不安を感じているご家族をサポートしつつ治療方針等を話し合い共有していきます。職場の方に、働く環境やリハビリ時の対応についてアドバイスすることもあります。

うつ病は、がんなど身体疾患のある患者さんが併発する可能性も高い病気です。兵庫医科大学病院では、一般病棟に入院中の患者さんの精神状態を把握し、必要があれば早期にケアできるよう、専門看護師を配した精神科リエゾンチームを設けるなど、精神科神経科が他科と連携して身体疾患の治療を応援しています。うつ病には身体症状が伴うために、精神科ではなく内科などを受診する方も多いので、クリニック等の先生方にも情報提供をし、より早期の治療を促していくのも私たちの使命と考えています。