疾患概要
鼻の周りには左右に鼻とつながる副鼻腔という空洞が4つずつあります。このうち頬の内側にあるのが上顎洞(じょうがくどう)です。
副鼻腔にできるがんのうち最も多いのが上顎洞がんです。上顎洞がんの多くは扁平上皮(へんぺいじょうひ)がんです。
原因・症状
慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)や喫煙による長期間の粘膜の炎症の持続が上顎洞がんの発症原因ではないかと推測されています。粉塵や金属(ニッケルやクロムなど)を扱う職業の方もリスクが高くなると考えられます。初期には特徴的な症状が現われにくく、発見された時には進行がんであることが多いです。
長期間続く、鼻閉や鼻出血には注意が必要です。
がんが進行するとがんの広がる方向によって、さまざまな症状が現れます。目の方へ進めば、眼球突出や複視が起こります。口に向かって進めば、歯ぐきが腫れたり歯ぐきの痛みが出たりします。前方に進むと頬部が腫れてきます。後方に進むと開口障害などの症状がでてきます。
上顎洞がんの転移はそれほど多くありません。
検査
上顎洞がんを疑う腫瘍性病変を認めた場合、生検を行い確定診断します。
病変の広がりを評価するためにCTやMRI、PET/CT検査を行います。
治療
上顎洞がんの治療で根治性はもちろん重要ですが、顔(眼球や口内を含む)の形や機能をできるだけ温存した治療を考えることも大切です。進行がんに対して手術を行う場合、眼球摘出が必要になる事もあります。
当院では多くの上顎洞がんの方に対して、まずは放射線治療と抗がん剤を組み合わせた治療を行い、がんの根治をめざす方法を行っています。また、抗がん剤を投与する時にカテーテルを使って腫瘍を栄養する血管を見つけ、そこから抗がん剤をより腫瘍に選択的に投与する方法(超選択的動注化学療法)も積極的に取り入れています。
治療後にがんが残存していたり、再発した場合は手術を行います。手術を行った場合は、形成外科や歯科口腔外科と協力して、皮弁再建やプロテーゼ作成を行い、整容面や機能面への影響をできるだけ少なくする工夫をしています。
その他
副鼻腔のがんはあまり知られていませんが、誰にでも起こりうるがんです。鼻の悩みや不安があれば遠慮なくご相談ください。
上顎洞がんの方に対しては治療後の生活も考えた治療方針を提案させていただきます。
分野ごとに専門的な診療を行っています
聴覚・平衡覚・嗅覚・味覚などの感覚医学、頭頸部腫瘍の診療を行っています。鼓室形成術、人工内耳埋め込み手術、めまいの検査と治療、顔面神経麻痺、内視鏡下副鼻腔手術、手術用ナビゲ-ションシステムの応用、嗅覚・味覚専門外来、幼児難聴、補聴器外来、頭頸部がんに対する集学的治療を行っています。
都築 建三(つづき けんぞう)診療部長