疾患概要
咽頭は上から上咽頭、中咽頭、下咽頭に分かれています。中咽頭はその真ん中に位置し、口蓋扁桃、軟口蓋、舌根、後壁などの部位が存在します。中咽頭は、嚥下(飲み込むこと)や構音(発音)に重要な役割を果たしています。
中咽頭がんは、「飲酒や喫煙が発生に関連しているがん」と「ヒトパピローマウィルス(HPV)が発生に関与しているがん」の2種類が存在します。これらのがんは同じ中咽頭がんでも、治療効果や予後などが異なるため、臨床的には別のがんとして扱われます。
原因・症状
初発症状は、無症状または咽頭違和感など軽微のことが多く、進行すると咽頭痛、構音障害、嚥下障害、開口障害などの症状が出現します。
中咽頭がんは初期から頸部リンパ節に転移を起こしやすく、転移したリンパ節が大きくなり目立つことで、中咽頭のがんが発見されることも少なくありません。
検査
視診や内視鏡を用いて中咽頭の腫瘍をよく観察します。
がんが疑わしい場合は、組織検査(生検)を行い確定診断を行います。また生検組織のp16免疫染色を行い、ヒトパピローマウィルス陽性のがんか否かを検査します。がんの診断が付いたら、頸部造影CTや咽頭MRI検査、PET-CT検査などを行い、原発巣の進行状況、頸部リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無などの評価を行い、病期(ステージ)を調べます。
治療
上記の検査で病期(ステージ)が確定したら、病期にあった治療が選択されます。前述の通り、中咽頭は嚥下や構音に重要な役割を果たしている部位のため、がん根治性を求めながら同時に治療による機能障害が最小になるように治療方法を選択します。
具体的には、手術や放射線化学療法が行われます。当科は2021年4月現在、早期のがんに対する手術支援ロボット(ダヴィンチxiサージカルシステム®)を用いた手術を近畿圏で唯一導入しており、従来の経口的切除術に比べより安全で低侵襲な手術を提供しています。
メッセージ
2021年4月現在、経口的ロボット支援手術を行っている施設は近畿圏で当院のみです。早期の中咽頭がんと診断され、最先端の低侵襲手術に興味のある方は、是非当科を受診してください。
分野ごとに専門的な診療を行っています
聴覚・平衡覚・嗅覚・味覚などの感覚医学、頭頸部腫瘍の診療を行っています。鼓室形成術、人工内耳埋め込み手術、めまいの検査と治療、顔面神経麻痺、内視鏡下副鼻腔手術、手術用ナビゲ-ションシステムの応用、嗅覚・味覚専門外来、幼児難聴、補聴器外来、頭頸部がんに対する集学的治療を行っています。
都築 建三(つづき けんぞう)診療部長