兵庫医科大学病院
アレルギー・リウマチ内科

関節リウマチ

疾患概要

関節リウマチは自己免疫的機序によって起こり、慢性に経過する多関節炎を特徴とする疾患です。関節内の滑膜と呼ばれる組織に持続的な炎症(滑膜炎)を呈することが主な病態です。

おおよそ人口の0.5%程度に発症し、好発年齢は30歳~50歳で、男女比は1:3~4と女性に多いとされます。関節内の炎症が長期間続く場合に関節および周囲組織を構成する骨や軟骨、靭帯、腱が障害される関節破壊が起こります。その結果、関節が曲がってしまうなどの変形に至ることがあります(右写真)。

手を使った動作や歩行といった関節を使う日常動作に制限が生じるなど機能障害を生じることがあるため、早期診断と治療が重要とされています。比較的稀ですが、肺や腎臓、皮膚といった全身の臓器に異常をきたすこともあります。

※進行したリウマチ患者さんのレントゲン写真(手と足)。黄色矢印(→):関節の変形。赤矢印(→):関節裂隙狭小化。青矢印(→):強直。

原因・症状

原因は完全には分かっていませんが、免疫システムに異常が起こり、関節が免疫細胞などによって攻撃され炎症を起こすことが知られています。最近の研究では遺伝的な要因を背景に、出産、感染症、喫煙習慣、歯周病、腸内細菌叢の異常など複数の要因が関与することが分かってきています。

主な症状は、手足の関節の腫れや痛み、朝のこわばりなどです。関節炎は左右対称性に複数の関節に起こることが多く、手首、手指、肘、肩、膝、足、足趾など多彩な関節に出現します。手指関節は第一関節に起こることは少なく、第二関節や指の付け根に当たる関節に多いとされ、この点が変形性関節症と異なる特徴です。朝のこわばりは60分以上続くことが多いとされ、起床直後は指が腫れぼったく曲げにくいと感じます。発症してから症状が数週から月単位で継続し、徐々に罹患する関節が増えていく場合に関節リウマチを疑われることが多いです。進行すると関節変形が見られます。

検査

関節炎(腫れたり、おさえると痛いなど)や関節破壊の有無が診断の出発点となるため、まずは専門医による診察(視診、触診)および画像検査(エコー検査、レントゲン検査、MRI検査)が行われます。

レントゲン検査では進行している場合に疾患概要で紹介した写真のような関節破壊が確認されます。関節周囲の骨が薄くなる(骨粗鬆)、関節の隙間が狭くなる、骨の一部が削られたように欠損する(骨びらん)、関節を構成する骨と骨が癒合する(強直)といった所見がないかを確認します。 これらの所見は発症早期には認めないことがあるため、より早期に診断することを目的として関節エコーやMRI(右写真)により滑膜炎や骨髄浮腫といった関節周囲並びに骨組織内の炎症を確認します。

血液検査では、炎症の存在を示す蛋白質であるC反応性蛋白(CRP)や赤沈を確認し、リウマトイド因子や抗CCP抗体といった項目をチェックします。

それぞれの検査の結果を踏まえて総合的に診断が行われます。

※リウマチ患者さんの手の造影MRI画像。
 黄色矢印(→)の部分に滑膜炎の所見を認める。

※リウマチ患者さんの手関節のエコー画像。関節内の赤い信号は炎症を表す。

治療

関節リウマチの治療薬は免疫系をターゲットとした薬剤が使用されます。代表はメトトレキサートで、本邦を含め世界で最も推奨されている薬剤です。そのほか、サラゾスルファピリジン、ブシラミン、イグラチモド、タクロリムスなど飲み薬(経口薬)が使用されます。また、炎症症状の緩和を目的として少量のステロイド剤を併用することもあります。

これらの薬剤による治療を行っても病気の勢いを十分にコントロールできない場合は生物学的製剤やヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬を使用します。生物学的製剤は皮下注射または点滴により投与する薬剤です。皮下注射製剤は患者さんご自身で打つ自己注射が可能であり、病院が遠い場合や仕事などで通院が頻回には難しい場合にはご自身で投薬を行うことが可能です。一方でJAK阻害薬は経口薬であり、注射剤と比べて負担が軽減されます。いずれの治療も免疫を抑制することから専門医による定期的な管理が必要です。

関節エコー検査について

当科では早期に関節炎を検出し、治療介入する取り組みとして、関節エコー検査を積極的に行っております(右写真)。

関節エコー検査はレントゲンやCT、造影MRIといった検査と比べて簡便で且つ費用も安く、放射線被曝や造影剤によるアレルギーなどもなく安全性と利便性が高い検査です。また必要に応じて関節エコーを用いて関節内にステロイド剤を注射する関節注射を行うこともあります。

アレルギー・リウマチ内科

進化は止まらない 「できない」が「できる」に

当科は、リウマチ・膠原病などの全身性自己免疫疾患とアレルギー疾患を専門としています。近年、これらの疾患に対する診断技術の進歩と新規治療薬の開発は目覚ましく、「分からなかったことが分かる」ようになり、「できなかったことができる」ようになって来ています。我々は科学的根拠に基づき、より早期に診断し、病状、合併症、社会的背景などを考慮した個々の患者さんにとって最適の治療方針を提供することを目指しています。

東 直人(あずま なおと)診療部長

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