兵庫医科大学病院
ペインクリニック部

がん性疼痛

疾患概要

「がん性疼痛」はがんの患者さんに起こる痛みのすべてを含んでおり、以下の3つに分けられます。

(1)がん自体が直接の原因となる痛み(腫瘍の浸潤や増大、転移など)
(2)がん治療に伴って生じる痛み(術後痛や化学療法による神経障害に伴う痛みなど)
(3)がんに関連した痛み(長期臥床に伴う腰痛、リンパ浮腫、褥瘡など)

がん性疼痛は、がんと診断された時点で20~50%の患者さんにみられ、進行がん患者さん全体では70~80%に痛みがあるとされています。つまり、がん患者さんの早期から終末期まで、時期を問わず起こるのががん性疼痛であり、どの段階にあっても生活の質(QOL:Quality of Life)の向上のため、速やかに治療が開始されるべき疾患です。「がん自体の治療ができなくなったから」や「治療をあきらめたから」行うものではありません。

原因・症状

(1)がん自体が直接の原因となる痛み:腫瘍が体にできると、周囲の正常な臓器や組織に浸潤し、痛みを発することがあります。特に神経に浸潤した場合は、神経障害性疼痛といって通常の痛みとは異なる、非常に難治性の痛みが出現します。

(2)がん治療に伴って生じる痛み:がんの治療としては手術や化学療法などがありますが、がんの手術後、手術の傷が短期的にだけではなく長期的に痛むなど、治療自体が原因で痛みが出現することがあります。化学療法は臓器への影響もありますが神経にも影響があり、これが神経障害性疼痛という難治性の痛みを引き起こします。

(3)がんに関連した痛み:がん患者さんは、がんによる痛みや倦怠感などで動けなくなることがあります。長く寝たきりの状態が続くと、体を動かさないため血流の低下から腰痛などを引き起こします。また、褥瘡(床ずれ)やリンパ浮腫(むくみ)も痛みの原因となります。

検査

痛みの診察は「どの部位か」「どのような種類の痛みか」などの問診がメインですが、痛みの部位に触れて圧痛が無いか、感覚の検査などを行う身体診察もあります。

画像診断としては、がん自体の治療や診断のためにすでに様々な検査が行われていることが多いため、そのCT・MRI画像を参考にしながら痛みの原因や種類を診断していきます。痛みの種類がわかれば「どのような薬物治療を行えば効果的か」「神経ブロックは適応となるか」などがわかり、より良い治療選択ができます。

治療

がん性疼痛の治療には「薬物治療」「放射線治療」「神経ブロック」があり、薬物治療に関しては、通常の鎮痛薬や医療用麻薬(オキシコドン、モルヒネなど)、その他の特殊な鎮痛薬(鎮痛補助薬)まで幅広く取り扱っています。痛みはとても複雑な仕組みで起こるため、各薬剤の良いところと悪いところを比べ、適切に組み合わせてより良い効果をめざして調整を行っています。 中でも、当ペインクリニック部では神経ブロック治療を積極的に行っています。基本的には薬物治療を行いますが、神経ブロックを行うことで鎮痛薬の量を減らすことができたり、副作用を軽減できたりするからです。また、痛み止めとしての効果も非常に質が良いため、QOLの向上をめざせます。

その他

当ペインクリニックで行っているがん性疼痛に対する神経ブロックは、おもに神経破壊を伴うものです。代表的なものとして「内臓神経ブロック・上下腹神経ブロック」「下腸間膜神経叢ブロック」「肋間神経ブロック(高周波熱凝固療法)」「くも膜下フェノールブロック」といったものがあり、痛みの原因となる部位によって行う神経ブロックは様々です。

高濃度のアルコールを用いたり、高い温度の熱(90℃)を加えたりすることで長期的に高い鎮痛効果を発揮しますが、合併症もある程度重症なものが含まれます(神経障害など)。しかし、より安全性を高めるために超音波画像やリアルタイムのレントゲン、CTを用いて合併症の予防に努めています。

「がんによる痛みの治療は、がんの治療をあきらた時に行うもの」という大きな誤解がまだありますが、決してそのようなことはありません。もしも今痛みで困られているのであれば、その時が痛みの治療のタイミングです。

ペインクリニック部

痛みが生じる仕組みに応じた治療方法を選び、痛みを和らげます

ペインクリニック部では、通常の痛み止めの利かないやっかいな痛みの治療をおこなう診療部です。
治療には、薬物療法、神経ブロック療法、レーザー照射があり、また脊髄の近くに細い電極を挿入する電気刺激療法などもおこなっています。がんの痛みに対する神経破壊術や、血流障害による下肢の痛みなどの治療も可能です。
大学病院であるメリットを生かし、必要に応じて他の診療科の医師と連携もできます。集中的に治療が必要な場合や特殊な治療をおこなう場合は入院での治療も可能です。
当院は日本ペインクリニック学会の指定研修施設にも指定されています。痛みでお困りの場合はどうぞご相談ください。

髙雄 由美子(たかお ゆみこ)診療部長

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〒663-8501 兵庫県西宮市武庫川町1-1

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