疾患概要
「手術後に生じる痛みのこと」です。実は、とてもたくさんの方が困っていらっしゃいます。手術が終わってからの時期によって、大きく分けて「急性痛」と「慢性痛」に分けることができます。手術を受けた直後から生じる痛みが急性痛、3カ月以上続くものが慢性痛と定義されています。
手術後の急性痛は手術による傷の痛みなので、傷が治癒するとともに軽快しますが、傷は治っても痛みだけが続く場合があって厄介です(慢性痛)。手術の種類によっても異なりますが、ある一定の割合で慢性痛が残ることがありますので、手術中や手術の直後から鎮痛対策を行うことが大切です。ペインクリニック科では、術後の痛みに対して少しでも痛みが改善するように、積極的に診療を行っています。お気軽にご相談ください。
原因・症状
手術部位によっても異なりますが、手術の傷の痛みと異なった部位に痛みが生じることもあります。
例えば、腰の手術をした後に下肢の痛みが出現するような場合です。原因は「傷の痛みが長引いてしまっている」「手術のより細かな神経が切断されてしまった」「手術以前から傷んでいた神経による痛みが続いている」「痛みがある不安により痛みが長引いている」など様々です。代表的なものとしては、「脊椎の手術後の痛み」「開胸手術後の痛み」「乳房切除後の痛み」「足の手術後の痛み」などがあります。
検査
痛みを評価するための決まった検査はありませんので、痛みの部位などにより、適宜必要な検査を行っています。
ペインクリニック科では、初診時に問診や触診(疼痛部位の感覚低下などを調べます)を行い、また質問用紙で評価を行っています。この質問用紙では、痛みの強さや、痛みによる気持ちの落ち込み、手術による神経のダメージ(神経障害性疼痛かどうか)などを判別します。
治療
(1)薬物療法:症状に合わせて鎮痛薬の処方を行っています。(医療用麻薬や漢方薬を使用することもあります)
(2)神経ブロック:手術によって過敏になってしまった神経を鎮めてあげたり、バランスが崩れてしまった自律神経系を元に戻してあげるブロック注射などを行っています。
(3)心理・社会的アプローチ:人間は不安な状態であればあるほど強く痛みを感じてしまいますので、当院では心理カウンセラーによる治療を積極的に行っています。
(4)脊髄刺激療法:薬剤による治療が困難な痛みや、脊椎の手術後の痛みなどが続いている方に対して行っています。近年は刺激のパターンなどが発展しており、これまで効果のなかった痛みに対しても効果を認めるようになってきています。
痛みが生じる仕組みに応じた治療方法を選び、痛みを和らげます
ペインクリニック部では、通常の痛み止めの利かないやっかいな痛みの治療をおこなう診療部です。
治療には、薬物療法、神経ブロック療法、レーザー照射があり、また脊髄の近くに細い電極を挿入する電気刺激療法などもおこなっています。がんの痛みに対する神経破壊術や、血流障害による下肢の痛みなどの治療も可能です。
大学病院であるメリットを生かし、必要に応じて他の診療科の医師と連携もできます。集中的に治療が必要な場合や特殊な治療をおこなう場合は入院での治療も可能です。
当院は日本ペインクリニック学会の指定研修施設にも指定されています。痛みでお困りの場合はどうぞご相談ください。
髙雄 由美子(たかお ゆみこ)診療部長