兵庫医科大学病院
耳鼻咽喉科・頭頸部外科

真珠性中耳炎(中耳真珠腫)

疾患概要

「真珠腫性中耳炎(中耳真珠腫)」とは、鼓膜表面の皮膚の成分が鼓膜の裏側(中耳)に入り込んで、真珠腫という固まりを形成する病気です。その固まりの内容物である上皮成分が層状に蓄積する姿が、時に“真珠”のように白く光沢のある球状を呈するため、真珠腫と呼ばれています。真珠腫には骨を溶かす性質があり、非常にやっかいな中耳炎と考えられています。

鼓膜の一部が凹んで中耳に入り込んでできる後天性真珠腫が多くを占めますが、稀に、生まれつき中耳に真珠腫が存在する先天性真珠腫の方もいらっしゃいます。後天性真珠腫の多くは学童期以降になってから発見されますが、先天性真珠腫の場合はほとんどの方が小児期に発見されます。

原因・症状

真珠腫ができる原因は未だ不明ですが、放置すると鼓膜の裏側の空間(中耳)で徐々に大きくなり、周囲の骨を溶かしていく性質があります。「中耳」には音を伝えるための耳小骨や、顔の筋肉を動かす顔面神経などがあり、さらにその奥の「内耳」には平衡感覚を制御する三半規管や音を聴神経に伝える蝸牛(かぎゅう)などといった重要な器官があります。真珠腫が大きくなると中耳の骨を破壊して聞こえが悪くなることがあり、さらに病気が進行すると、めまいや顔面神経麻痺を起こす方もいらっしゃいます。

検査

中耳真珠腫を診断するためには、耳鼻科で鼓膜の観察や聴力検査を行う必要があります。顕微鏡や内視鏡を使って鼓膜を確認し、真珠腫を疑うような鼓膜の凹みや白色の固まりがある場合は、CTスキャンで進展範囲をさらに詳しく調べる必要があります。ある程度の大きさの真珠腫が存在する場合、MRIの特殊な描出方法(拡散強調画像)によって、真珠腫の存在や大きさが判断できる場合があります。

治療

真珠腫性中耳炎に対しては、手術以外の治療方法は存在しません。基本的には、内視鏡もしくは顕微鏡下手術で真珠腫の摘出と、真珠腫で破壊された耳小骨の連鎖再建を行う「鼓室形成術」という手術を行いますが、患者さんの聴力や進展状況、生活背景に応じた手術方法を選択する必要があります。

初期の真珠腫では耳小骨を温存し、1回の手術で真珠腫を完全に摘出できる場合があります。真珠腫が進行している場合、大事な器官を温存しつつ再発の可能性を下げるために、手術を2回に分ける「段階的鼓室形成術」という方法を行う場合があります。1回目で真珠腫の摘出を行い、約1年後に行う2回目の手術で再発の確認と耳小骨連鎖再建を行います。それぞれの手術後は、ほとんどの例で1か月以内に耳の中は乾きます。

どうしても手術を頻回に受けられない持病がある高齢者や、進展範囲があまりに広い場合は、なるべく1回で手術を終えられる方法を選択します。その場合、再発を少なくするために耳の穴を大きく広く形成しなおす手術を行いますので、手術後に耳が乾くまで3カ月ほど時間がかかります。

その他

真珠腫は、手術後長期間経過すると一定の確率での再発(10年で約20%ほど)が報告されています。そのため、術後も定期的な診察と長期間のフォローアップが必要となります。当院でも手術後1年以上経過チェックを行った後も、半年から1年ごとに診察を行い、定期的な聴力検査やCT検査等を行って長期間経過をチェックしています。

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

分野ごとに専門的な診療を行っています

聴覚・平衡覚・嗅覚・味覚などの感覚医学、頭頸部腫瘍の診療を行っています。鼓室形成術、人工内耳埋め込み手術、めまいの検査と治療、顔面神経麻痺、内視鏡下副鼻腔手術、手術用ナビゲ-ションシステムの応用、嗅覚・味覚専門外来、幼児難聴、補聴器外来、頭頸部がんに対する集学的治療を行っています。

都築 建三(つづき けんぞう)診療部長

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