疾患概要
慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)にはいろいろな種類があり、特に近年注目されているのは「好酸球性副鼻腔炎」という副鼻腔炎です。一般の慢性副鼻腔炎は保存的治療(薬の内服や吸入などの通院治療)、もしくは手術を行うことで症状は良くなり、治癒することが多いですが、好酸球性副鼻腔炎はそれらの保存的治療や手術を行っても再発しやすいと言われています。好酸球性副鼻腔炎は2015年より特定疾患(難病)に指定されています。
原因・症状
好酸球性副鼻腔炎の原因は不明です。鼻茸(ポリープ)が鼻の中に多発することが特徴的で、主な症状として「においの低下(嗅覚障害)」「ねばねばとした鼻汁」「鼻づまり」「鼻汁がのどに流れる(後鼻漏)」「咳」などがあります。また、成人以降に発症する気管支喘息やアスピリン喘息(アスピリン不耐症)、薬剤アレルギーが合併していることも多く、内科への通院も必要になることがあります。
検査
問診の後、内視鏡を用いて鼻汁と鼻茸の性状を確認します。副鼻腔CTでは篩骨洞(しこつどう)とよばれる副鼻腔を中心に陰影が存在していることが多く、すべての副鼻腔に陰影が充満していることもあります。
血液検査では、しばしば白血球の一種である好酸球が基準値よりも高い値となります。さらに、外来での鼻茸の生検、もしくは手術で採取した鼻茸の中に基準よりも多くの好酸球を認めれば、好酸球性副鼻腔炎の診断が確定します。
治療
好酸球性副鼻腔炎は、ステロイドという薬を内服すると軽快する特徴がありますが、長期的なステロイドの内服は全身に様々な副作用を引き起こしてしまいます。そこで、治療としてはまず内視鏡を用いた手術を行い、一旦鼻茸を完全に除去します。鼻茸の再発により鼻づまりや嗅覚障害があらわれた場合は、ステロイドを染み込ませた綿を鼻の中に置いて鼻茸を縮小させます(※鼻腔局所ステロイド治療といいます)。鼻腔局所ステロイド治療は、ステロイドの内服に比べて全身への副作用が少ないという利点があります。
また、最近使用可能になった新しいタイプの薬として、炎症反応に関係している物質の働きを抑えることで鼻副鼻腔の炎症を抑える「生物学的製剤」という薬があります。当科では手術を受けた後に、鼻腔局所ステロイド治療などを行っても症状が改善しない患者さんに、この生物学的製剤を使用しています。
メッセージ
患者様の症状を少しでも和らげるために最善を尽くしております。
お困りの方はお気軽に当科までご相談ください。

分野ごとに専門的な診療を行っています
聴覚・平衡覚・嗅覚・味覚などの感覚医学、頭頸部腫瘍の診療を行っています。鼓室形成術、人工内耳埋め込み手術、めまいの検査と治療、顔面神経麻痺、内視鏡下副鼻腔手術、手術用ナビゲ-ションシステムの応用、嗅覚・味覚専門外来、幼児難聴、補聴器外来、頭頸部がんに対する集学的治療を行っています。
都築 建三(つづき けんぞう)診療部長