疾患概要
転移性肝がんとは肝臓以外の臓器にできたがん(原発巣)が肝臓に転移した状態のことです。さまざまながんが肝臓に転移する可能性がありますが、消化器がん(胃がん、大腸がん、膵がん、胆道がんなど)が原因として最も多く、他に肺がん、乳がん、頭頸部がん、腎がんなどのほか、神経内分泌腫瘍なども肝臓に転移することがあります。
原因・症状
ほかの臓器にできたがん(原発巣)がある程度進行することで肝臓に転移します。肝転移は大きくなるまでは症状が出ないことが多く、その場合はもともとのがんの発見時の検査(CTやエコーなど)やがんの経過観察中の検査に発見される事が多いです。また、健康診断などで偶然肝臓のできものが見つかり、検査をしてみるとほかの臓器のがんが肝臓に転移していた、ということもあります。初期には症状はほとんどありません。進行すると、もともとのがん(原発巣)による症状やがんの進行に伴うだるさ(全身倦怠感)や痛みなどの症状が出現します。転移性肝がんが大きくなると、体が黄色くなる(黄疸)や腹痛などの症状がでることがあります。
検査
転移性肝がんは、ほかの臓器からの転移ですので、偶然見つかった場合にはどの臓器から転移したのかをCTやMRI、PETーCTなどの画像検査および胃カメラや大腸カメラなどの検査をして調べます。また、肝臓に転移をしているということはそのほかの臓器(肺など)に転移している可能性もありますので、CTやPETーCTなどの検査で調べます。また、ほかの部分に痛みなどの症状がある場合にはそれに応じてCTやMRIなどの検査を行い、ほかの臓器への転移が無いかを調べます。
治療
転移性肝がんは、ほかの臓器からの転移ですので通常はがんの進行度はステージ4となります。すい臓がんや肺がんからの転移の場合は抗がん剤治療を行うことになります。ただし、大腸がんからの転移では手術によって肝転移がすべて取りきれた場合、がんが治る(治癒する)可能性がありますので、可能な限り手術を行います。また、大腸がんからの転移であっても、個数が多かったり、大きくてそのままでは手術で取りきることが出来ない場合でも、まず抗がん剤治療をおこなってから手術を行う方法もあります。
そのほか、転移性肝癌が肝臓の複数の場所に散らばっている場合、手術ですべて取りきると生命を維持するために必要な肝臓(30から40%残ることが必要とされています)が残らないことが予想されることがあります。こういった場合でも、あらかじめ肝臓に流れ込む血管の一部をカテーテルで塞いでしまう方法(門脈塞栓術)で残る肝臓を大きくしたり、肝臓の切除を2回に分けて行う方法(2期的肝切除)などを行うことで肝切除を受けることができる可能性があります。
その他
大腸がん肝転移はステージ4にあたりますが、手術によって治る可能性があります。大腸がん肝転移に対する治療は日々進歩しており以前では手術ができなかったような状態の患者さんでも手術が出来るようになってきました。このためには大腸の手術、肝臓の手術、抗がん剤治療とその副作用対策、カテーテル治療などを複数の診療科の医師や多職種でチームを組んで行うことで、個々の患者さんに合った治療を選択することが必要です。
肝臓、膵臓、胆道領域の腫瘍など高難度手術から、胆石や鼠径ヘルニアなどの鏡視下低侵襲手術まで幅広く診療しています。
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廣野 誠子(ひろの せいこ)診療部長