疾患概要
筋力が弱くなる病気
元気なこどもは1歳過ぎ頃から歩き始め、2歳頃には階段を上るようになります。ところが、このような運動の発達が遅れている、あるいは、できることができにくくなっていくことがあり、その原因のひとつに筋肉や神経の病気があります。
筋ジストロフィーは、筋細胞が徐々に壊れていくことにより、進行性の筋力低下を認める遺伝性の疾患です。また、脊髄にある神経細胞の障害で発症する脊髄性筋萎縮症という病気もあります。今まで、このような病気に対する根本的な治療法がありませんでしたが、近年、新しいお薬が開発され、その有効性が認められています。
原因・症状
筋疾患の症状
筋ジストロフィーの一つにデュシェンヌ型筋ジストロフィーがあります。出生男児3500人に1人の割合で出生する遺伝性疾患です。幼児期に走ることが遅い、ジャンプができないなどの症状で気づかれることもありますが、最近は、ほかの理由で行った血液検査で、筋肉の状態を示す値が高いことで気付かれる患者さんも増えてきています。
脊髄性筋萎縮症の重症型では、赤ちゃんの時期から、筋力が弱いことに気づかれます。お座りはできるけど、立つことができない患者さんもいます。やや軽い場合は、歩くことはできますが、運動が極端に苦手という患者さんもいます。
検査
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの診断は、以前は、筋肉の一部を採取し顕微鏡で調べて診断していました。写真は筋肉の顕微鏡写真で、緑に染まって見えるタンパク質が欠失することで診断されます。
しかし、今日では、血液検査で遺伝子を調べることにより診断が可能です。脊髄性筋萎縮症も、血液検査で遺伝子を調べることで診断が可能です。
筋力低下、運動発達の遅れを認める疾患にはさまざまなものがあります。これらの疾患に適切に対応するためには、的確な診断を行うことが重要です。当院では、遺伝子解析、筋肉の検査などによる診断、そして診断に基づく一人ひとりに合った治療を行っています。
治療
脊髄性筋萎縮症に対して、2017年以降、新たなお薬が色々と誕生しています。そして、より早期に治療を行うことが、治療効果を得るためには重要であることがわかってきました。そのため、気になる症状がある場合は、早めに受診することが大切です。兵庫県では、一部の施設で生まれた赤ちゃんにこの病気が無いか調べる検査を行っています。当院でも、有料ですがこのような検査が可能です。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対しても、2020年に新たなお薬が誕生しました。残念ながら、遺伝子の型によって治療の対象になる場合とならない場合があります。しかし、現在多くの治験が進んでおり、有望な薬剤の開発が進んでいます。当院では、このような治療の開発研究にも積極的に取り組んでいます。
こども達の健やかな成長をサポート
小児一般病床 20床、新生児室 27床(うち新生児集中治療室 15床)を有し、小児神経・筋疾患、小児腎疾患、新生児(NICU)、先天代謝異常症、小児内分泌、小児アレルギーなどの専門的な疾患の高度医療を行うとともに、感染症などの一般小児疾患の患者さんや、在宅医療が必要な患者さんにも対応し、診療を行っています。
地域のこども達の健やかな成長をサポートしていきます。
竹島 泰弘(たけしま やすひろ)主任教授