疾患概要
ネフローゼ症候群は尿からタンパク質がもれて、血液中のタンパク質であるアルブミンが少なくなることで体全体がむくむ病態の総称です。日本では10万人に5人くらいの頻度でおこるといわれています。ひとつの病気ではなく、タンパク尿〈早朝尿の試験紙法で(3+)が3日以上続く〉、低タンパク血症(血清アルブミン 2.5g/dL以下)の基準を満たしたものをネフローゼ症候群と呼びます。子どものネフローゼ症候群のおよそ90%は原因不明な特発性ネフローゼ症候群です。
原因・症状
ネフローゼ症候群は原因によって、突然発症し原因不明の特発性ネフローゼ症候群と慢性腎炎など腎臓に影響する病気や薬剤、遺伝的な要因などによって発症する続発性ネフローゼ症候群に分けられます。主症状のむくみは低タンパク血症が原因で血管の中に水分を維持することができず、血管の外に水分と塩分がもれ出てしまうためにおこります。
そのため、むくんでいても血管の中の水分は減っています。むくみのほかに尿量の低下、体重の増加、腹痛、倦怠感、尿の泡立ち、男児では陰嚢の浮腫などがおこってきます。その他、重度の合併症に腎機能低下、免疫機能低下による感染症、凝固系異常とそれに伴う深部静脈血栓症、肺梗塞、脳梗塞などの血栓症もおこることがあります。
検査
尿検査と血液検査で診断を行います。尿検査ではタンパク以外に血尿、糖、感染がないかも調べます。血液検査では血液中のタンパク質であるアルブミン以外に、細菌感染などによる炎症反応、血液の固まりにくさ、脂質、免疫、ウイルスの抗体なども調べます。
腎臓の機能障害がある場合や感染などの疑いがある場合は腎臓超音波検査もおこないます。後述の治療の効果が不十分な場合には腎臓の糸球体という組織に変化をきたしていることがあるので腎生検(腎臓に直接針を刺して腎臓の一部を採取して顕微鏡で診断を行う)をすることもあります。
治療
治療はステロイド剤による治療が中心になります。子どものネフローゼ症候群はほとんどの症例でステロイド剤の治療が効きます。治療の効果がある場合は1週間程度で尿量が増えて、むくみが改善します。通常は10~14日ぐらいでタンパク尿がなくなり、3日連続してタンパク尿が陰性であった場合を完全寛解(治療によって症状を抑え込んだ状態)と呼びます。
ステロイドの使用量は身長、体重など体格により決められており、必要量と使用期間は初発と再発で違っています。特発性ネフローゼ症候群はステロイド治療によりおよそ80%は寛解に至りますが、その80%は再発をおこし、そのうちの半数が1年に4回以上再発する頻回再発例といわれています。
こども達の健やかな成長をサポート
小児一般病床 20床、新生児室 27床(うち新生児集中治療室 15床)を有し、小児神経・筋疾患、小児腎疾患、新生児(NICU)、先天代謝異常症、小児内分泌、小児アレルギーなどの専門的な疾患の高度医療を行うとともに、感染症などの一般小児疾患の患者さんや、在宅医療が必要な患者さんにも対応し、診療を行っています。
地域のこども達の健やかな成長をサポートしていきます。
竹島 泰弘(たけしま やすひろ)主任教授