疾患概要
むし歯ではないのに歯がくぼんできたり、擦り減ってきたりすることはありませんか。それは「歯の擦り減り(Tooth Wear:トゥースウェア)」かもしれません。歯の擦り減りという症状は、くさび状欠損・咬耗症・摩耗症・酸蝕症が挙げられます。
くさび状欠損
むし歯を併発した磨耗症
酸蝕症(赤▲)とむし歯を併発した部位(黄色〇)
原因・症状
①くさび状欠損
主に2つの原因が考えられます。
・強い噛む力が原因となって歯茎に近い部分に力が集中し歯の表層が傷ついてしまうことです。
・歯ブラシと歯磨剤の間違った使い方によって強い力が長期間にわたって伝わることで歯の表面が徐々に擦り減ってくることです。
②咬耗症(こうもうしょう)
「歯と歯」または「歯と硬い食べ物」が過度な接触を繰り返すことで起こります。
③摩耗症(まもうしょう)
歯間ブラシを無理に通したりする使い方や、サックスなどの管楽器奏者にみられる日常的な習慣による摩耗によって生じます。
④酸蝕症(さんしょくしょう)
酸の作用によって歯の表面が溶けることで生じます。胃の中の酸が逆流することで起こる胃食道逆流症(GERD)、過度なストレスによって嘔吐を繰り返している人、炭酸飲料等の酸性の物を多飲する人、酸を取り扱う職業に従事している人に多くみられます。
⑤くさび状欠損・摩耗症・咬耗症・酸蝕症に共通してみられる症状
擦り減ってしまった部分に着色が見られることがあり、むし歯または象牙質知覚過敏(ぞうげしつちかくかびんしょう:普通の刺激を痛みとして、敏感に感じてしまう症状)を併発していることが特徴です。自然に治ることはなく、放置すると進行する恐れがあるので、症状が無くても予防のために治療を行うことが多いです。
検査
まずは問診(「歯ぎしり」や「くいしばり」の有無、食習慣、職業上の歯の使用頻度等)を行い、その後、模型上での歯の形態・噛み合わせの確認、歯周精密検査を行います。症状によってはレントゲン撮影を行います。
治療
予防方法としては、「歯が擦り減る原因となっている習慣」を治すための生活習慣指導、歯が削れるのを防止するための「口腔内装置(マウスピース)の装着」などがあります。また歯が削れてしまった部分の治療については、欠損部の小さい部分には「接着性材料である、コンポジットレジンやグラスアイオノマーセメント」を詰めて形を整え、欠損部の大きい部分には歯全体を覆う被せ物を被せます。
(上記の治療について、当院の歯科口腔外科では入院患者のみに対応しています)
かかりつけ歯科と連携し、専門的な口腔治療を行っています
口腔は、食べる、会話するなど、楽しく生きていくうえで極めて重要な機能を担っていますので、口腔に疾患を生じると非常に苦痛です。
当科では、患者さんのかかりつけ歯科と連携し、むし歯や歯周病、親知らずなどの治療(主に抜歯。一般歯科診療はかかりつけ歯科でお願いしています)と、口腔粘膜(舌や頬、歯肉など)に生じる疾患の診断と専門的治療を行っています。手術などの治療の内容によっては、入院が必要な場合もあります。口腔の面から患者さんをサポートします。
岸本 裕充(きしもと ひろみつ)診療部長