兵庫医科大学病院
歯科口腔外科

舌苔(ぜったい)

疾患概要

舌苔とは、舌の表面に付着する白い苔状(こけじょう)のもので、皮膚での垢のようなものです(図1)。舌には糸状乳頭(しじょうにゅうとう:図2)と呼ばれる凹凸があり、そこに菌や粘膜の落屑(らくせつ:口腔粘膜の表層が大小の角質片となってはげ落ちたもの)などが付着して、白く見える舌苔が形成されます。薄く舌苔があるのは生理的(正常)ですが、舌苔が厚くなると菌の温床となり、口臭や誤嚥性(ごえんせい)肺炎の誘因となる可能性があるため、舌は適度に清掃する必要があります。

原因・症状

①舌の動きの低下

通常、舌の汚れは食べたり話したりするときに「舌が動くこと(食べ物や口蓋<こうがい
:口の中の上側の部分※図3>と舌との摩擦)」で除去されます。しかし、寝たきりで経口摂取や会話ができない場合や、気管挿管中(きかんそうかんちゅう)や経鼻、経管栄養などで経口摂取ができないような場合には、舌への摩擦が少なくなり、舌苔が除去されにくい状態になります。

②唾液の分泌低下

唾液には、食渣や歯垢を洗い流す自浄作用や、口腔内の菌の増殖を抑える働きがあります。絶食、疾患、薬の副作用、脱水、ストレス、加齢などが原因で唾液自体の量が減少すると、口腔内に舌苔の原因となる因子が増え、舌苔が厚くなることがあります。

③口腔の清掃不良

口腔を清潔に保たなければ、口腔の菌や口腔粘膜の落屑が舌にたまってしまうことがあります。

検査

舌苔との鑑別が必要な口腔内に生じる白色の疾患として、口腔カンジダ症や白板症などがあります。口腔カンジダ症(図4)とは、口腔常在菌である「カンジダ」(カビの一種によって起こる感染症)が原因で生じる口内炎です。免疫力の低下やステロイドの長期使用、菌交代現象(抗生物質を長期で連用することで、投与した抗生物質に感受性のある細菌のみが死滅し、耐性菌が生き残る現象)などにより、「カンジダ」が増殖することで発症します。口腔カンジダ症は舌苔とは異なり、舌に限らず頬粘膜や口蓋にも出現することが特徴です。一方、白板症は、図5のように舌では舌の縁に生じることが多く、ガーゼなどで擦過しても除去できないのが特徴で、粘膜上皮の肥厚や粘膜の角化亢進などにより生じます。口腔潜在的悪性疾患とも呼ばれており、今後は悪性化する可能性があります。

口腔カンジダ症や白板症を否定するためには、綿棒のようなもので拭う菌検査や、舌の一部を採取して病理検査に提出する生検を実施する必要があります。下図(図4、5)を参考に、口腔カンジダ症や白板症に似たような疾患が疑われている方は歯科医院を受診し、診察を受けるようにしてください。

治療

基本的に治療は必要ありません。経口摂取が可能な方は、固形物をしっかり咀嚼しながら摂取したり、たくさん会話をしたりして「舌を動かす(舌を口蓋にこする)こと」が大切です。舌苔があるからといって、「すべて落ちきるまで、力いっぱいブラシで清掃すること」は舌に傷がつき、そこから感染、口臭へとつながることがあります。舌を清掃する場合には、指に湿らしたガーゼを巻き付けて、舌をやさしく撫でるようにケアをすることが推奨されています。舌の動きが低下している方は、このようなケアを行うことがより重要になります。毛先の軟らかい歯ブラシや舌ブラシを使用する場合にも、力は加えすぎないよう注意してください。また、口腔を清掃後、保湿ジェルなどを用いて口腔が乾燥していない状態を保つことも重要になります。

その他

参考文献

・口の中がわかる ビジュアル歯科口腔科学読本 
 監修 全国医学部附属病院 歯科口腔外科科長会議
 クインテッセンス出版株式会社

歯科口腔外科

かかりつけ歯科と連携し、専門的な口腔治療を行っています

口腔は、食べる、会話するなど、楽しく生きていくうえで極めて重要な機能を担っていますので、口腔に疾患を生じると非常に苦痛です。
当科では、患者さんのかかりつけ歯科と連携し、むし歯や歯周病、親知らずなどの治療(主に抜歯。一般歯科診療はかかりつけ歯科でお願いしています)と、口腔粘膜(舌や頬、歯肉など)に生じる疾患の診断と専門的治療を行っています。手術などの治療の内容によっては、入院が必要な場合もあります。口腔の面から患者さんをサポートします。

岸本 裕充(きしもと ひろみつ)診療部長

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