兵庫医科大学病院
循環器内科

肺高血圧症

疾患概要

心臓は全身に血液を送り出す臓器です。心臓から送り出された血液は動脈を通り身体の隅々まで行き渡った後、静脈を通って再び心臓に戻ります。これを「体循環(たいじゅんかん)」と言います。体循環で心臓に戻った血液は、続いて肺に送り出され、新鮮な酸素を取り込んでから再び心臓に戻ります。これを「肺循環(はいじゅんかん)」と言います。肺循環で心臓に返ってきた酸素をたくさん含んだ血液は、再び体循環で身体に送り出され、これを繰り返しています。
私たちが普段「高血圧」と言うときの「血圧」は、実は体循環の圧力を指しています。同様に肺循環の圧力も高くなることがあり、これを肺高血圧症と呼びます。

原因・症状

肺循環の圧は体循環の圧の6分の1程度と言われています。流れる血液の量そのものは同じなので、肺を通る血液はあまり抵抗を受けずにスルスルと流れていると言えます。ところが、肺の血管が狭まったり詰まったりすると、血液がスルスルと通れなくなり、大きな圧をかけないと血流が保てなくなります。こうして肺循環の圧が高まることで肺高血圧症が生じます。 肺の血管を狭めたり詰まらせたりする原因はたくさんあります。肺の血管そのものの病気や遺伝性の原因の他に、膠原病(自己免疫疾患)、呼吸器疾患、静脈内の血栓症、感染症、薬物の副作用などが原因となります。 肺高血圧症の主な症状は息切れと全身のむくみです。肺にスムーズに血液が送れないので、血液の流れを増やしたいとき時(体を動かした時)に、呼吸のしにくい感じが出てきます。病状が進むと、体を動かしていない状態でも呼吸困難感が出てきたり、酸素の量が下がって苦しくなったりします。喘息や肺気腫と誤って診断されたまま長年経過される方もいらっしゃいます。また、肺に高い圧をかけようとして心臓の中の圧も高まるため、静脈から心臓にも血液が戻りにくくなり、その結果として体のむくみが出てきて、脚に浮腫(むくみ)が見られたり、肝臓や消化管がむくんで食欲が落ちたり、腹部の膨満感が出たりします。さらに重症になると、心臓が肺循環の圧に負けて突然血圧が低下して失神したり、突然死に至ったりすることもあります。

検査

体循環の圧、すなわち血圧は腕で測ることができます。これは体に向かう動脈(この場合は腕の動脈)を体表から直接締め付けることで中の圧を測ることができるためです。しかし、肺循環は肋骨で囲まれた体の奥にあるので、圧を直接はかることはできません。そのため、首の付け根や肘の静脈からカテーテルという細い管をすすめ、心臓や肺の血管の圧を直接測定するカテーテル検査が必要となります。ただし、肺の血管の圧は心エコー検査である程度予測することができるため、心エコー検査と血液検査、CT検査、シンチグラム検査(RI検査)などの各種検査を組み合わせ、肺高血圧症の疑いが高い場合に「カテーテル検査で最終診断」と重症度判定を行うようにお勧めしています。

治療

肺高血圧症は、肺の血管が狭まったりして血液が流れにくくなることが大元の問題なので、治療には肺の血管を拡げる薬(肺血管拡張薬)を用います。今日ではその機序から、大きく分けて3種類の肺血管拡張薬が開発されていて、これらのうち1種類もしくは複数種類を組み合わせながら治療を行います。

また、肺の血管が血栓(血の塊)で詰まっているようなタイプの肺高血圧症(慢性血栓塞栓性肺高血圧症)の場合は、カテーテルを用いて風船で狭いところを拡げる治療を行います(バルーン肺動脈形成術)。

その他

肺高血圧症は厚生労働省の指定する難病にもなっている稀な疾患です。その上、息切れやむくみなどの主たる症状は、肺高血圧症以外の循環器疾患でもよく見られるものです。
まずは下記のチェックリストを参考に「循環器疾患かも?」「肺高血圧症かも?」と疑って検査をすることが重要です。
循環器内科では肺高血圧症の早期診断、早期治療に力を入れています。「もしかして・・」と思ったら、ぜひ一度ご相談ください。

循環器内科

経験豊富な専門医が、広範囲な心血管病の診療を行います

心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患、下肢閉塞性動脈硬化症や深部静脈血栓症などの末梢動静脈疾患、心筋症や弁膜症などの心不全、心房細動や洞不全症候群などの不整脈をはじめ、広範囲な心血管病に対して各疾患領域に経験豊富な専門家が診療にあたっています。
阪神地区の中核機関として、地域の病院・医院等の先生方と密接な協力体制を構築していますので、かかりつけ医の先生よりご紹介いただければスムーズに受診いただけます。

石原 正治(いしはら まさはる)診療部長

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